描かれたリトアニアの花、動物、人々。
LT Shopでルータさんの陶器に出会う。

リトアニアのクラフトやファッションを扱う「LT Shop」(外苑前)での「Story Teller's Pottery by Rūta Indrašiūtė/"物語る陶器" ルータ・インドラシュウテ」展。リトアニア南東部ズーキヤ地方の陶芸作家ルータ・インドラシューテさんの作品が、4月26日まで販売されています。

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Photo: suimok

デザイン・ジャーナルにすでに登場いただいている LT Shopの松田沙織さん(デザインスタジオ suimok)。これまで育んできたリトアニアとの温かい関係が、ルータさんとの出会いとなりました。

「友人がルータさんの弟ジュガスさんと"はとこ"で仲がよく、一緒にご自宅にうかがったんです。初めてお会いしたにもかかわらず、突然、泊まっていくことになって! 私も親戚になったような気分になりました」

その後何度も、森に包まれたルータさんの自宅兼工房へ......。その際に撮られた写真から選んでいただいたものを、皆さんにご紹介しましょう。

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作品も多数置かれたルータさんの家。Photo: suimok

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森と暮らす生活があってこその陶芸作品であることを教えてくれるすてきな写真ばかり。「お家を訪ねるといつも、お母様のエルヴィラさんとごちそうを用意してくれるんです」と松田さん。写真は白身魚とジャガイモのスープ。Photo: suimok

現在の展示で紹介されているのは、こうした訪問を重ねながら大切に集めてられてきた作品で、ピッチャー、ワインカップ、スープ皿、ボウル、マグカップ......。

描かれている世界に魅了されてしまいます。ライラック、リンデン、矢車草などの花々やシラカバの樹、ブルーベリー。リトアニアの国鳥ガンドラス(口ばしの赤いコウノトリ)や白鳥、馬やビーバー、いのししも。カメやヘビ、なまずのような魚も目にできます。ベリーをとる人、馬をひくおじさんなど、働く人々の姿も。

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Story Teller's Pottery by Rūta Indrašiūtė/"物語る陶器" ルータ・インドラシュウテ」展より。Photo: suimok

「陶芸家ファミリーで、お母様のエルヴィラさんもリトアニアで有名な陶芸家。ルータさんも陶芸作家として活躍されていますが、私は、彼女はすばらしい画家だと思っているんです」と松田さん。

「モチーフはご自身が暮らす地域の植物や動物、鳥や魚、昔の農村の人々の暮らしで、リトアニアを知る手がかりになるものです。一見可愛らしく牧歌的な作風ですが、生き物の表情や描かれた光景には自然の摂理や自然の狂気のようなところも感じられて、そこがまた魅力です」

「お客さまからも『可愛いだけではなく、どこか毒のようなものも感じる表現』との感想をいただくのですが、まさにその通りで......。童話の世界に怖さや陰がどこか潜んでいるように、ルータさんが描く世界からもひと筋縄ではいかない死生観を感じます。一方で、描かれた表情は愉快で、生き生きとしていて楽しくて。奥の深い表現です」

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工房での制作風景から。Photo: suimok

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愛用されているパレット。「独自に配合した色を使われています」Photo: suimok

陶器のかたちや土はリトアニアならではのもの。そのうえで、うつわの立体的なかたちを活かした絵の構成にも特色があります。たとえば松田さんが見せてくれたピッチャーのひとつは、川と森がつながるように描かれていて、川の生きもの、森の生きものが、大胆ともいえる360度の構成で描写されています。

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陶器に広がるのは、幻想的で様々な物語を想像させてくれる世界......。Photo: suimok

「時間軸と紋様が交錯して、描かれた小宇宙を複雑なものにしています。ここまで描き込まれた絵はリトアニアの伝統的な陶器では目にできません......絵付け以外の制作には弟のジュガスさんが関わっていて、そのことでもルータさんのクリエイションはまさに絵画の領域に属するのですが、陶芸一家に生まれ育った彼女にとって、こうした陶芸こそが、自由に表現できるキャンバスなのだと思います」

ルータさんのうつわやピッチャーを手にとり、描かれた風景をしばらく眺めていました。
リトアニアの森や川を包む空気、そして時の流れが、静かに伝わってきます。

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ルータさんの家から見える夕焼け。Photo: suimok

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ルータさんと松田沙織さん。Photo: Agnė

「"物語る陶器"ルータ・インドラシューテ」4月26日(火)まで
LT shop
渋谷区神宮前 3-38-11 原宿ニューロイヤルマンション2F 212号室
営)15:00~20:00/12:00~19:00(日・祝) 
休)毎水曜日
Tel. 03-3401-0302、http://www.ltshop.net

5月にはリトアニアのカゴの紹介とリネンウェアブランド「muku」のオーダー会、
5月末は「メリーゴーランド京都」でもmukuの紹介が予定されています。
6月には新宿伊勢丹での北欧展やイベントにも参加。

Noriko Kawakami
ジャーナリスト

デザイン誌「AXIS」編集部を経て独立。デザイン、アートを中心に取材、執筆を行うほか、デザイン展覧会の企画、キュレーションも手がける。21_21 DESIGN SIGHTアソシエイトディレクターとして同館の展覧会企画も。

http://norikokawakami.jp
instagram: @noriko_kawakami

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