うつわディクショナリー#13 アートのような八木麻子さんのガラスプレート

インテリアとしても楽しいガラスプレート

八木麻子さんが生み出すアートのようなガラス器は、料理との色合わせはもちろん、インテリアとしても楽しめると、いくつも手に入れて愛用する人が続出。そんな人気のうつわが生まれる工房に八木さんを訪ねました。
 
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—八木さんのガラスプレートの静かな色使いにとてもひかれます。モチーフ違いでいくつも並べて使いたくなります。
八木:私は“ガラスだから表現できる色”というものをとても大切にしているので、色について気に入ってもらえるのは嬉しいですね。美大に入って初めてガラス制作に触れた時から、私はガラスの色にとらわれていました。もとになるのは透明なガラスなんですが、そこに色をのせることでよりやさしく見えたり、反対に強い印象になったり。光によってもさまざまな表情が生まれる、それが他の素材と違う面白いところだと感じています。
 
—伝えたいのは、ガラスによって表現できる世界の広がりなんですね。
八木:そうなんです。吹きガラスの技法は食器を通してみなさんよく知っていると思うんですが、ガラスには、キルンワークという技法もあります。これは、ガラスのパーツを組み合わせて炉の中にいれ融着させるというもの。一瞬で形が決まっていく吹きガラスと違って、キルンワークは、自分のペースでパーツの色や形を選びデザインを構築していくことができるため、表現の幅が広く楽しいんです。その楽しさを知ってもらえたらと。キルンワークにもいろいろあり、私は、フュージングという技法を使うことが多いですね。
 
—フュージングとは、どういう作業なんですか?
八木:フュージングというのは、透明なガラスの板に色の粉をかけて炉の中にいれ、色を定着させることをいいます。私は、落ち着いたブルーやグリーン、白を使うことが多いですね。そうしてできた数種類の色ガラスの板を、四角や三角、花型にカットしてパーツを作り、組み合わせてプレートの形にするんです。そのまま炉の中にいれ熱を加えてパーツを融着させます。
 
まるでお菓子作りのようで楽しいですね。でも作業工程が多くひとつひとつに手間がかかることにびっくりしました。
八木:この時点で全行程の半分くらいでしょうか。このあと、プレートのふちを削って形を整えたり、サンドブラストといって表面をガラスの粉で磨いてさらに表情を出したり、まだまだ工程があります。 最後にファイヤーポリッシュといって、もう一度、炉の中にいれ、炎の力で表面を磨いて仕上げていきます。すべてひとりでやっているので時間はかかりますが、コツコツと積み重ねていくことで、成果が見えていく地道な作業が意外と好きなんですよね(笑)。
 
—立体的なものは、どうやって作るんですか?
八木:カーブのあるものは難しいですが、平らなパーツを組み合わせてできるものなら作れるんです。花器やオブジェ、アクセサリーも作っていますよ。プレートや花器は、食材やお花の色のことを考えて落ち着いた色味にしていますが、オブジェやアクセサリーには、赤や黄色などポップな色味を使うこともあります。どちらもできるのが、楽しいんです。
 
—どんなものを作りたいと思っていますか?
八木:こういう食器やオブジェは、生活の必需品というわけではないですよね。だからこそ、ひとつあることで、生活を豊かにすることができるものでありたいと思っています。うつわを作るなら、カーブのある盛りやすいものも作るべきかなと思ったこともあるんですが、私が豊かだと思うのは、ガラスの色の奥行きなので、それを一番に見せる平面での表現にフォーカスすることにしました。食材や花を見たときに「あのうつわを使いたい!」とワクワクするような瞬間を楽しんでもらえるものであればいいな、と思います。
 
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今日のうつわ用語【キルンワーク】
ガラスの技法のひとつで、文字通りキルン(=窯)で作る方法。粉状のガラスを型に詰めて焼くパート・ド・ヴェール、板ガラスなどを並べ溶着させるフュージングなどいくつかの種類があり、こだわりの色や形を表現しやすい方法でもあるそう。

みんなが大好きなストライプを落ち着いた雰囲気の大人なブルーで表現しプレートに。センス抜群の色合わせ。¥8,800/ドワネル

まるでモザイクタイルのような佇まいだがこれもガラス。インテリアとして壁に飾っても素敵。¥8,800/ドワネル

八木さんが美大に在学中から取り組んでいる花のモチーフをプレートの中に閉じ込めた人気の作品。ブーケプレート¥16,800/ドワネル

モチーフが豊富なスクエアプレートは、柄違いでいくつも並べたくなる。¥8,800/ドワネル

壁掛けの花器は、お花を挿さないときでも、インテリアとして十分に美しい。ウォールガーデン¥8,500/ドワネル

インテリアパネルのような花器。何を生けて壁面にどんな景色を描こうかと想像が膨らむ。ウォールガーデン¥8,500/ドワネル

【PROFILE】
八木麻子/ASAKO YAGI
工房:東京都台東区
素材:ガラス
経歴:武蔵野美術大学造形研究科デザイン専攻工芸工業デザインコースに在学中から、やさしい色合わせのガラス表現で注目をあつめ、本格的に制作を開始。今年、古くからのものづくりの町でもある台東区に工房を構えたのをきっかけに、ワークショップなども行っていく予定。 http://yagiasako.com

ドワネル
東京都港区北青山3-2-9
Tel.03-3470-5007
営業時間:12時〜20時
休日:水
http://doinel.net
✳基本的に展示会時の販売に限ります。次回の展示販売は2017年12月頃の予定です
✳商品の在庫状況は事前に問い合わせを

photos:TORU KOMETANI realisation:SAIKO ENA

うつわライター/編集者

フィガロ編集部を経て独立。子育てをきっかけに家族の食卓に欠かせないうつわにはまり、作り手を取材する日々。うつわを中心に工芸、インテリア、雑貨など暮らし関連の記事を執筆。著書に『うつわディクショナリー』(CCCメディアハウス)。Instagram:@enasaiko

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