エトワール・ガラに初参加する大型新人ユーゴ・マルシャン。

パリとバレエとオペラ座と。

入団してまだ5年ながら、あっという間もないほどのハイスピードで、プルミエ・ダンスールまで駆け上がったユーゴ・マルシャン。今年8月に東京、名古屋、大阪の3都市で公演される「エトワール・ガラ2016」に参加する。日本初演作品を多数盛り込み、よりパワフルなプログラムで今回も日本のバレエファンを白熱させるガラとなるだろう。このプログラム実現のため、座長のバンジャマン・ペッシュが優れた若手ダンサーとして白羽の矢を立てたのがユーゴなのだ。彼は昨年の昇級コンクールの結果、今年の1月にスジェからプルミエ・ダンスールに上がったのだが、バンジャマン・ミルピエ芸術監督の期待を担う彼は、コリフェ時代からソリストとして活躍している。『くるみ割り人形』『マノン』『ラ・バヤデール』など大作の主役をスジェの時代に任されたほどで、今やパリのオペラ座ファンには知られた存在だ。エトワール・ガラで彼の踊りを見ることになる日本のバレエファンに、彼について少々予備知識を!


■ 初参加する「エトワール・ガラ」について。


「バンジャマン・ペッシュがディレクターのこのガラについては、もちろん以前から知っていましたよ! プロモーションの映像なども見ていたけれど、前回の2014年の公演時、僕はまだコール・ド・バレエ。これは自分が参加するのは不可能なグループ公演......と、思っていたんです。だから昨夏、スジェだった僕にバンジャマンから参加の打診があった時、ソリストのグループに自分も入れるというのがすごく嬉しくて即答しました。技術的に難易度の高い作品が踊れ、身体的に強い若手ダンサーをバンジャマンは今年のプログラムに必要としていたとか。それで僕を選んでくれたことに感謝しています。僕はバランシンの『シルヴィア』とマクレガーの『感覚の解剖学』をローラ・エケと、『チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ』、そしてヌレエフの『ロメオとジュリエット』からバルコーニーのパ・ド・ドゥをドロテ・ジルベールと踊ります。僕のパートナーについてもバンジャマンは配慮してくれているようですね。ドロテとは既に『マノン』で共演済みだし、3〜4月のオペラ座の『ロミオとジュリエット』でも彼女がパートナー。ローラとは昨夏に『感覚の解剖学』を一緒に踊っているし、またこれから始まる公演中、バランシンの『Duo Concertant』でも一緒なんですよ。過去に仕事をしたことのあるふたりなら稽古も進みが速く、作品の解釈を深める余裕ができます。それは、舞台で見せるもののクオリティがより高くなるという、良い結果に繋がりますからね。昨年ポスターの撮影がオペラ座であった時にグループ全員が揃ったのですが、初参加の僕はみんなと気軽に言葉が交わせるかな、って少し不安でした。でも、みんなよく笑って、すごく寛いだ楽しい雰囲気で......。こうした素晴らしいダンサーたちと、素晴らしい劇場で7公演も! きっとうまくいく、と思います。この夏、エトワール・ガラに参加することで、自分により自信を持てるようになると期待しています」


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左:ユーゴ・マルシャン。1993年、ナントに生まれる。2011年入団。photo:Michel Lidvac
右:今年3月、バランシンの『Duo Concertant 』をローラ・エケとオペラ・ガルニエで。photo:Sébastien Mathé/ Opéra national de Paris

 


■ 今年の1月にプルミエ・ダンスールに昇進して。


「何が変わっただろう......そう、ソリストになると代役の仕事がなくなる。これ、最高ですね。目下、プルミエ・ダンスール用の楽屋が空くのを待っているところです。今は『ロミオとジュリエット』そして『デュオ・コンセルトン』の2作品のリハーサル中で、その前は『ラ・バヤデール』のリハーサルと、ミルピエの創作『La nuit s'achève』が同時にあって、ずっと稽古に次ぐ稽古......。合間に昼寝ができたり、お茶を入れて一息ついたり、ひとりになれる時間を持ちたいので、とにかく楽屋が待ち遠しいですね。今のところカドリーユの時から同じ、30人くらい一緒の部屋にいます。コール・ド・バレエ時代はそれも楽しかったけれど、今のようにソリストとしての仕事が続くと、精神的にも肉体的にも騒音のない静かな場所が必要となります。休憩を取らなくては......。もちろん、こうして次々と作品に配役されるのは、すごく嬉しいことですよ。何もかもが新しいことばかりで、吸収することが豊富ですからね。特に今稽古しているロミオは、『マノン』と同様に踊りたかった作品のひとつ。ドロテと一緒に踊れるというのも、最高ですね。毎日、ロミオという人物について思いを巡らしているんです。『ラ・バヤデール』の戦士ソロル役は骨格がしっかりした僕には身体的に向いていて興味深い役だったけど、パーソナリティという面ではロミオ役には敵いません。いまロミオになりきろうとするオブセッションが強すぎて、少しそこから抜け出さないと、まずい! という感じ。ちょっとバーンアウト状態なんです(笑)。4回踊る『ロミオとジュリエット』では公演が終わるたびに、きっと大きな感動が得られるんだろうなあ......」


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上2点、下左中:今シーズン2016-17の開幕公演のバンジャマン・ミルピエ振り付け『Clear, Loud,Bright, Forward』のクリエーションに参加する。パートナーは彼同様に注目を集めるプルミエール・ダンスーズ、レオノール・ボーラック。photos:Michel Lidvac
下右:2015年のカルポー賞の授賞式にて、ミルピエ芸術監督と。photo:Michel Lidvac

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■ オペラ座の大きな期待に応える長身191cm。


「また伸びたんじゃないか? って言われるけれど、身長は変わっていません。今は気にならないけれど、コール・ド・バレエ時代は大柄であることがすごく気詰まりでした。いつも後方に並ばされて、身体に合うコスチュームがないので新たに作ることになるし......。醜いあひるの子というか、オペラ座が自分の場所だと感じられなかった。でもソリストとして踊るようになったら、コンプレックスは大いに減りましたね。パートナーとひとりで向かい合うので、他のダンサーと自分を比較することもないし、コスチュームはソリストなのでサイズがなければ新たに作られるのは当然だし......。それに大きいので、パートナーとなる女性ダンサーの幅が広い。女性たちにしてみると、僕のように力のあるダンサーに支えられることで、自分の踊りに安心して集中できることになる。小柄な相手だと、僕も自分の仕事に集中しやすいし......。女性ダンサーの中でも大柄なマリー・アニエス・ジロも、僕ならパートナーになれます。彼女は手脚の振幅が大きいので一緒に踊るのは簡単とはいえないけれど、彼女ほどすぐれたダンサーと組めるというのは素晴らしいことです。プロポーション的にはローラ・エケが合いますね。だから、「エトワール・ガラ」で彼女とまた一緒にマクレガーの『感覚の解剖学』を踊れるのは、とても良い思い出があるだけに、とてもうれしいです。これ、きれいなパ・ド・ドゥなんですよ。 マクレガーの振り付けというのは独特で、体の中にこんな筋肉があったのかというような筋肉を使うことになるので大変だけど、オペラ座の公演「若きダンサーたち」で『ジェニュス』を踊り、さらに昨年はヴァルナ国際バレエコンクール(注・銅賞獲得)でもこれを踊っていて......。昨年末に彼の新作『アレア・サンズ』の公演があって、僕は5週間の創作に参加したんですよ。でも、同時にバスチーユで公演のあった『ラ・バイヤデール』を踊ることになったので、舞台では踊らずじまいとなってしまいました。マクレガーの動きに慣れてきたところなので、これは少し残念でした」


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左:オペラ座の「若きダンサーたち」で、マクレガーの『ジェニュス』をジュリエット・イレールと。photo:Michel Lidvac
右:ガラ公演で『白鳥の湖』を踊る。photo:Michel Lidvac

 


■ 自分の時間の過ごし方。


「ひとりの時間も必要とはいえ、家族や友達と過ごす時間も大切にしていますよ。例えば、今晩は仲間とフィルハーモニーにコンサートを聴きに行くんです。劇場や展覧会にもよく行きます。でも、週末など時間があるときは、パリを抜け出すことにしています。パリは好きだけど、目まぐるしくって疲れます。だから太陽、新鮮な空気を求めてドーヴィルや、実家のあるナントの近くの海とか......。パリにいると仕事、ダンスから頭を切り離すのが難しい。精神的に解放される必要があるので、土曜の午後からしか出発できないときでも、週末はパリから離れた土地でリラックスし、バッテリーチャージするようにしています」


オペラ座のダンサーの新人を対象にしたカルポー賞と、AROP賞を2015年に受賞した彼。さらに 昨年末に踊った『ラ・バヤデール』の主役ソロル役が評価され、今年は権威あるロシアのブノワ賞にノミネートされ、国際的にも大きく羽ばたくときがきているようだ。ミルピエ監督が7月の任期終了前に男性エトワール1名を任命するのではないか、と噂されている。下馬評に名前の上がる彼ではあるが、「そうしたことは考えないようにしています。今は仕事量がとにかく多いので、それをこなすのが精一杯。先のことは考える余裕がないんです。プルミエまで上がれたのも、もちろんそうなるようにと稽古を積んだのだけど、チャンスにも恵まれたからです。良い星の下にいて、良いタイミングで良い人に出会って......」とあくまでも謙虚だ。この夏の「エトワール・ガラ」での彼の活躍が楽しみである。先輩ダンサーたちに混じって7公演を行うことで、ダンサーとしてきっとまたひと回り大きくなるに違いない。今年23歳の若きダンサーの成長を見守ろう!


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昨年オペラ座内で行われたエトワール・ガラ2016のポスター撮影で、気のあった仲間たちは久々の再会に笑いが絶えず。新メンバーのユーゴもさっそく仲間入りできる良い雰囲気の中、撮影は快調に進んだ。photo:James Bort

 

エトワール・ガラ2016
東京/2016年8月3日~7日
会場:Bunkamuraオーチャードホール
http://my.bunkamura.co.jp/ticket/ProgramDetail/index/1954

名古屋/2016年8月9日
会場:愛知県芸術劇場
http://www.aac.pref.aichi.jp/index.html

大阪/2016年8月11日
会場:大阪フェスティバル・ホール
http://www.festivalhall.jp/program_information.html?id=960

 

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こちらがエトワール・ガラ2016のオフィシャル・ポスター。プログラムは回を重ねる毎に充実し、日本のバレエファンを喜ばせ続けている。今回も見応えのある公演を期待できそうだ。photo:James Bort

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