パリ・オペラ座とアメリカの振付け家たちの70年。

パリとバレエとオペラ座と。

2014年秋に芸術監督に就任したバンジャマン・ミルピエは、2016年7月31日に任務を終了するまでの間、この7月に終わったシーズン2015~16、そして9月から始まる新シーズン2016~17のプログラムを作った(8月1日に芸術監督に就任したオーレリー・デュポンによるプログラムは、シーズン2017〜18より)。彼の前任のブリジット・ルフェーヴル芸術監督時代に比べ、アメリカで活躍する振付け家の作品が倍増したのが特徴である。ニューヨーク・シティ・バレエ (NYCB)出身者だけあって、ミルピエ元監督はジョージ・バランシン(NYCB創設者)やジェローム・ロビンス(NYCBの元バレエ・マスター)については、過去に踊られていなかった作品をオペラ座のレパートリーに加え、さらに彼らに影響を受けた現存の振付け家の作品も積極的にプログラムに入れたり、創作のチャンスを与えたり......。

彼のこの嗜好を反映したプログラムと並行し、目下オペラ・ガルニエ宮内の図書館・ミュージアムにて「パリ・オペラ座のアメリカの振付け家 バランシンからフォーサイスまで」展が9月25日まで開催中である。この展覧会の期間中、7月はガルニエでフォーサイスのトリプル・ビルがありバスチーユでは『ペック/バランシン』があり、9月の新シーズン開幕(9月26日より)には、フォーサイスの創作の再演とペックの作品の再演が用意されていて、なんだかオペラ座アメリカ祭といった感じが続くのだ。ちなみにフォーサイスのトリプル・ビルのうちのひとつ『Blake Works 1』は1999年以来という、オペラ座での彼の久々の創作作品。レオノール・ボーラック、ユーゴ・マルシャン、ジェルマン・ルーヴェ、フランソワ・アリュといったオペラ座の未来を嘱望されるダンサーたちが参加し、カドリーユからエトワールまで合計21名が踊るパワフルな作品が誕生した。タイトルは音楽にジェームズ・ブレイクが使われているゆえだ。

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7月に公演のあったフォーサイスのオペラ座における17年ぶりの創作『Blake Works 1』より。photos:Ann Ray/ Opéra national de Paris

 

このトリプル・ビルと同時期にバスチーユで公演のあったバランシンの『ブラームス・ショーンベルグ・カルテット』(1966年創作)は、今回オペラ座のレパートリーに加わった作品。従ってオペラ座には衣装がないので、コスチューム・デザインがカール・ラガーフェルドに任されるというファッション界を巻き込む話題があった。ウィーン分離派にインスピレーションを受けたというコスチュームは、ダンサーたちにも好評だった。なお、このバランシン作品とペアで公演のあったジャスティン・ペックの創作『entre chien et loup』の衣装デザインは、ロンドンで活躍するギリシャ人デザイナーのマリー・カトランズによるもの。女性ダンサーの動きに合わせて黒いドレスからカラフルなプリーツが現れるという、カラフルな舞台装置ともマッチする美しいコスチュームだった。

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カール・ラガーフェルドが衣装と背景を手がけた『ブラームス・ショーンベルグ・カルテット』。上段左から、ドロテ・ジルベールとマチュー・ガニオによる第一楽章、アマンディーヌ・アルビッソンとステファン・ブュリヨンによる第二章、ミリアム・ウルド=ブラムとマチアス・エイマンによる第三楽章、そして、ローラ・エケとカール・パケットによる第四楽章。photos:Francette Levieux/Opéra national de Paris

 

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ジャスティン・ペックによる創作『entre chien et loup』より。衣装はメアリー・カトランズ。photos:Francette Levieux/ Opéra national de Paris

 

展覧会はアメリカで活動するコレオグラファーとオペラ座の、1947年から2016年にかけての関係が対象で、時代順の4部構成。第一部は「最初の交換(1947〜1972)/アメリカの(ネオ)クラシック・バレエ」、第二部は「実験の時代(1973〜1980)/アメリカのコンテンポラリー・ダンス」、第三部は「折衷と多様(1980〜1989)/若いアメリカのダンスから確立した振付け家まで」、そして第四部は「生きているレパートリー(1990〜2016)/再演と創作のバランス」という内容だ。

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オペラ・ガルニエ内の図書館・博物館が展覧会場。

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第一部が1947年から始まるのは、これがジョージ・バランシンがオペラ座バレエ団のために『シンフォニー・イン・C(水晶宮)』を振りつけた年だからだ。フランス派のクラシック・バレエとアメリカのモダン・バレエの出会いとなったこの作品は最近もオペラ座で踊られていて(注:こちらの衣装はクリスチャン・ラクロワによる)、少しも古さを感じさせない。1947年といったら、クリスチャン・ディオールがニュールックを発表した年である。『水晶宮』は、バレエ界のニュールック!?

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左:1947年のバランシンの『水晶宮』のためのレオノール・フィニによる衣装画。©ADAGP 2016。右:バランシンの『セレナード』のための舞台装置デッサン、衣装などの展示。

 

第二部はアメリカのコンテンポラリー作品がオペラ座のレパートリーに入り始める1970年代についてである。カロリーヌ・カールソンがオペラ座における芸術的リサーチグループのディレクターを務めたり、マーサ・カニンガムがジョン・ケージの音楽、ジャスパー・ジョーンズの衣装で『Un jour ou deux』をオペラ座バレエ団の為に創作したり......といった時代だった。

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左:ロビンスの『アン・ソル』の衣装はエルテがデザイン。会場では映像で作品の一部を楽しめる。右:展示されているエルテのデッサン。©ADAGP 2016

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ロビンスの『ゴールドベルグ・ヴァリエーション』は1977年の作品だが、オペラ座で上演されたのは今年が初めて。衣装デザインはJoeEulaに任された。左:ドレスの色のグラデーション見本が展示されている。中:『ゴールドベルグ・ヴァリエーション』photo:Benoîte Fanton/Opéra national de Paris 右:ガルニエ宮内での衣装展示。

 

第三部は、ルドルフ・ヌレエフが芸術監督を務めた80年代。クラシック作品だけでなく、コンテンポラリー作品も交互に上演するようになった。この時代、アメリカのモダンダンスの振付け家たちを大勢オペラ座に招くことができたのはヌレエフの名声によるそうで、例えば、アルヴィン・エイリー、ルシンダ・チャイルド、トワイラ・サープ......そして、ウィリアム・フォーサイス。彼がオペラ座のために最初に創作したのは1983年の『フランス/ダンス』である。

最後の第四部は1990年から現在に至るまで。パトリック・デュポン以降、歴代の芸術監督たちは、 クラシック作品の保全と創作とのバランスのとれたプログラム作りを実践し、年々とネオクラシック作品の占める位置が大きくなっているのが特徴だ。また、 この時期、アメリカの振り付け家で国際的に活躍するアニエス・ミル、トリシャ・ブラウン、マーサ・グラハム等の作品もオペラ座で上演され、レパートリーがより豊かなものに。

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会場内、時代ごとにさまざまなビデオを見ることができる。オーレリー・デュポン、ニコラ・ル・リッシュ、シルヴィー・ギエム、パトリック・デュポンなど、すでに引退したダンサーたちの踊り、最近上演されていないアメリカの振付け家の作品に触れられる機会でもある。

 

展覧会は写真、デッサン、ビデオ、衣装など展示内容が幅広いので、訪問者それぞれの楽しみ方が見つけられるはずだ。とりわけコスチュームの展示が豊富。展覧会はオペラ座図書館・博物館内で開催されていて、料金はオペラ・ガルニエの訪問チケットに含まれている。劇場内でも『テーマとヴァリアション』や『シーニュ』などの衣装が展示されているので、見逃さないように。

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観客席からはわからないコスチュームのディテールをじっくりと眺められる。ダンスの衣装とはいえ、まさにクチュールピースなみの精巧さ。左:展覧会場内に展示のロビンスの『イン・ザ・ナイト』。中:ガルニエ宮内展示の、バランシンの『カプリチオ』はカリンスカがデザイン。右:ガルニエ宮内に展示の『イン・ザ・ナイト』のコスチューム。

 

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ガルニエ宮内の展示より。左:マリ・アニエス・ジロが着たカールソンの『シーニュ』の衣装。デザインはオリヴィエ・ドゥブレ。 右:来春のオペラ座日本ツアーで公演予定のバランシンの『テーマとヴァリエーション』の衣装。

「パリ・オペラ座におけるアメリカの振付け家 バランシンからフォーサイスまで」展
会期:~2016年9月25日
Chorégraphes américains à l'Opéra de Paris
Bibliothèque -Musée de l'Opéra , Palais Garnier
Place de l'Opéra
75009 Paris
料金:11ユーロ(オペラ・ガルニエ訪問料金に含まれる)

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