今パリで、900点を集めた『バウハウスの精神』展。

PARIS DECO

装飾芸術美術館で10月19日に始まった『L’Esprit de Bauhaus(バウハウスの精神)』展は、フランス人にはなかなか発音しにくい名前ながら、すでに話題の展覧会だ。約900点の展示作品は、家具、写真、テキスタイル、食器、グラフィック・デザインなどさまざまな分野に及ぶ。

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左:1923年、ワイマールの学校で開催された『バウハウス』展の絵葉書。photo©Centre Pompidou, MNAM-CCI, Dist. RMN-Grand Palais/DR
右:会場では床にも注目を。左の椅子はマルセル・ブロイヤー作、1929年。photo:Mariko OMURA

 

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オスカー・シュレンマーによるマスクをつけ、リズ・ベイヤーによる服を着て、マルセル・ブロイヤーによる椅子に座った女性。1926年の撮影。photo©Bauhausu-Archiv Berlin

 

建築の家という意味を持つバウハウスというのは、学校の名前。20世紀のアートの歴史における重要性と、その知名度の大きさのわりに、存続したのは1919年から1933年までとたった14年間だ。短期間とはいえワイマールで開校し、ついでデッサウへと移転し、最後はベルリンにてナチスにより閉校される、とその歴史はなかなか波乱に富んでいる。

建築家のウォルター・グロピウス(ギュスターブ・マーラーの未亡人との結婚でも知られる)が開校したバウハウス。あらゆる芸術は職人仕事に戻るべきであると彼は提唱し、学校には陶芸、テキスタイル、木工……など、さまざまなアトリエがあり、各アトリエに技術指導者と造形指導者が配されていた。やがて大量生産のためのデザインの追求が、行われるようになった。芸術と技術の新しい融合。これが学校の新しいモットーである。芸術家による日常使いのための機能的で美しい品々が生み出され……モダニズムの基礎がこの学校で築かれていったのだ。1923年にはバウハウス展が開催され、来場者は種々の分野における革新的、前衛的な作品を見ることができた。

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左:ワシリー・カンディンスキーによる『色彩研究のサークルの9要素』(1922-1933)。photo:Centre Pompidou, MNAM-CCI, Dist. RMN-Grand Palais / Philippe Migeat
右:バウハウスで彫刻のアトリエを担当していたオスカー・シュレンマー。彼による創作バレエ『トリアディック』のために、立方体、円錐、球体を使った舞台衣装をデザインした。なお、メッツのポンピドゥー・センターでは1月16日まで『オスカー・シュレンマー 踊る男』展を開催中だ。photo:Mariko OMURA

 

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左:ラズロ・モホリ=ナギの作品などを展示した、写真のアトリエのコーナー。
右:会場出入り口。
photos:Mariko OMURA

 

この学校では、画家のパウル・クレーやカンディンスキー、写真家のラズロ・モホリ=ナギーが教鞭をとっていたこと、ミース・ヴァン・デル・ローエが学長を務めたことでも有名だ。デッサウ時代に開始された出版活動により教授陣の書作が出版され、また閉校後に生徒や教授たちはアメリカやイギリスなど海外に移ってバウハウスの教育理念を広め……こうしてバウハウスの精神は広く受け継がれていったのだ。この遺産の伝承ゆえ、バウハウスの名前が今も広く知られる所以だろう。展示の最後は、バウハウスの精神がみられる現代作家49名の作品のスペースとなっている。

会場では、展示構成も床の模様も半サークル。これはグロピウスがバウハウスの教育構造のシェーマとして描いたものにインスパイアされてのものである。くるくる会場を巡り、え、この人もバウハウスの先生だったのか、え、これバウハウスの工房から生まれたのか……という発見の楽しみもあるし、予備知識がなくても、展示作品それぞれが魅力にあふれているので面白い。マルセル・ブロイヤーによる金属パイプの椅子「ワシリー・チェア」も展示されているが、とりわけ人気なのは、エルメスとのコラボレーションでもおなじみのヨゼフ・アルバース(Josef Albersの名前の呼び方は、ドイツ語読み、英語読みなどさまざまあり)の作品のようだ。バウハウスで学び、卒業後、教師となった彼の作品の展示の前は常に人だかりである。なお、会場入ってすぐにウィリアム・モリスの壁紙、中世の彫刻、日本の陶器やらが展示されているのは、バウハウス開校に際するグロピウスの教育理念のインスピレーション源を見せるためだ。

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ガラスなどを使ったヨゼフ・アルバースの4作品。色彩が引きつけるのか、この前にはカメラを構えた人が後を絶たない。©The Josef and Anni Albers Foundation.VG Bild- Kunst, Bonnphoto:Mariko OMURA

 

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左:ヨゼフ・アルバースによる入れ子式テーブル。1927年。©The Josef and Anni Albers Foundation.VG Bild- Kunst, Bonn
右:ヨゼル・アルバースによるティーカップ、受け皿、かき混ぜ棒。1925年。©The Josef and Anni Albers Foundation.VG Bild- Kunst, Bonn

 

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現代作家の作品も100点近く展示されている。photos:Mariko OMURA

 

なお装飾芸術美術館では、フランスのデザイナー、ロジェ・タロン(1929~2011)の回顧展『Roger Tallon』も目下開催中だ。彼の作品で日本でも有名なのは、Sentouがリプロダクションしているモデュール式の螺旋階段だろうか。フランスの国鉄SNCFの仕事もたくさんしていて、列車コライユ、TGVも彼なら、モンマルトルのケーブルカーも!  テレビ、オートバイ、椅子、食器、文具、時計などもデザインしている。今と異なり、デザイナーの名前はブランドの裏に隠れていた時代時代なので、この回顧展は彼の幅広い分野での活躍ぶりを知る良い機会だ。なお、1970年に開催された大阪万博で、彼はフランス館に参加するグループを取りまとめるADを務めた。

 

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『ロジェ•タロン』展より。螺旋階段、ムースの椅子、列車……。

 

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左:奥の折りたたみ式の椅子は、彼の名前を知らなくてもみたことがある人も多いだろう。
右:大阪万博では、ジョニー・アリディやシルヴィー・ヴァルタンの石膏の巨大な顔に彼らが歌う姿をプロジェクションした。
photos:Mariko OMURA

L’Esprit du Bauhaus展 会期:2017年2月26日まで
Roger Tallon展 会期:2017年1月8日まで
会場:Musées des Arts décoratifs
107, rue de Rovoli
75001 Paris
tel:01 44 55 57 50
開館 11:00~18:00(木曜〜21:00)
休)月
入場料:各11ユーロ、セットチケット15ユーロ
大村真理子 Mariko Omura madame FIGARO japon
パリ支局長 東京の出版社で女性誌の編集に携わった後、1990年に渡仏する。フリーエディターとして活動し、2006年より現職。主な著書は「とっておきパリ左岸ガイド」(玉村豊男氏と共著/中央公論社)、「パリ・オペラ座バレエ物語」(CCCメディアハウス)。

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