あれこれ買って、あれこれ飾ってキッチュ&パリシック。

PARIS DECO

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Marie-Anne Bruschi/マリー=アンヌ・ブルースキ
ジャーナリスト, シティガイド re-voir Paris 創設者
www.re-voirparis.com

10年前マリー=アンヌは次女の出産直前に、大きなお腹でこの5区のアパルトマンに引越してきた。多くのパリジェンヌたちの家庭が、2人目の子どもの誕生に合わせて広い家に移る。彼女の場合も2人目の出産直前のことだったが、ちょっと違うのは以前暮らしていた3区のアパルトマンより、新しい家のほうが狭いことだ。

「部屋割の問題なの。以前住んでいたのは、大きな寝室が2つのアパルトマン。子どもたちがそれぞれ個室を持てる3ベッドルームの家が欲しくて、このアパルトマンを選んだの。それに5区というのは子どもを育てる環境として、3区よりいいのね。良い学校があり、リュクサンブール公園も植物園にも近いし、市場もある。静かだし、子どものいる家族がたくさん住んでいるので、なんとなく村のような雰囲気があって……」と、マリー=アンヌ。もっとも家の外に出ても、通りには何もないという5区はパリの中心部からひどく外れた場所のように彼女には感じられて、馴染むまでに2〜3年もかかってしまったとか。

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エントランス・スペース。旅先の買い物、ブロカントの掘り出し物など彼女のお気に入りが棚を飾っている。素焼きに彩色したカラフルな6輪の花は、叔母から譲られたという幸運の品。

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左:エントランス・スペース。ドアも飾らずにはいられない。子どもが描いた絵や広告など、マリー=アンヌの感性にひっかかったビジュアルが埋める。
右:意識してコレクションしているわけではないが、宗教グッズが好きでブロカントなどでみつけるとつい買ってしまうとか。

長女レオニー(14歳)、次女ポムリーヌ(11歳)、そしてマリー=アンヌ夫妻の合計4人が住む94平米のアパルトマンは、ダブル・リビングルーム、3ベッドルーム、マリー=アンヌの仕事部屋からなっている。5年前に大改装工事を行い、今の姿になった。花の存在が感じられるせいか、家具などの色のせいかインテリア全体にフェミニンな印象がある。

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左:白い壁に掛けられた縦長の絵画は、クレール・バスレールの作品。後方のブルーグレーの壁のは、ニナ・シルドレスの作品。
右:ダブル・リビングルームの片側の食卓スペース。壁のペンキは、ボナパルト通りに店があるLittle Greeneで選んだ色だ。ギターとレコードの棚はご主人のコーナー。クリストフ・デルクールのランプを脇においた窓際のリクライニング・ソファは読書用。

「私、花が大好きなの。夫はそれにはちょっとうんざり気味なのだけど……。リビングの入り口にかけたクレール・バスレールの縦長の作品は、30歳の誕生日に自分でプレゼントをしたものよ。壁の作品はニナ・シルドレスの作品。ポラロイド撮影をしたものをプリントして絵の具でさらに……という手法ね。一目惚れしてしまって、2人目の出産を記念して自分で購入したの。壁にかける絵画は自分が買う! って夫は言うのだけど全然行動しないから私が買うことになり……で、私が買うから、花になってしまうのよね(笑)」

リビングルームの絨毯がいまひとつ気に入らず、テルアビブで見かけた大きなバラの絨毯に変えたい!! と、新たな花ものを夢見るマリー=アンヌ。あいにくと予算もなく、また窓から差し込む日差しが強い家なので色褪せが心配ということで、これはどうやら夢のままで終わりそう。

よく旅をする一家である。工事前は中国やアフリカなどエスニック色の強いお土産品が、所狭しとリビングルームの壁を装っていたという。そうした品々は地下倉庫、あるいはリヨンの実家で保管中。現在はデザイン家具が配置され、ロマンティックな香り漂うコンテンポラリーなスペースとなっている。

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左:ダブル・リビングルームは、入って右手が家族の食卓スペース。花の絵画のかかった壁の後方に、サブ・キッチンが隠されている。
右:白い壁で囲まれた左手のスペースは、ゲストを迎え、家族がくつろぐ場所だ。暖炉の上には、子どもたちが装飾芸術美術館のアトリエで作った作品を並べている。70年代の肘掛け椅子はおばから譲られた品で、グリーンの布で張り替えて使用している。

「改装前の壁はベージュやカーキといった色だったの。引越してきた当時の流行の色ね。今回夫は白い壁がいいというので、ペンキを塗るのは1カ所だけにしたの。でも、叔母からもらった70年代のグリーンの椅子やジャン・ヌーヴェルの赤いテーブルなど色の家具が多い家なので、その1色は何色がいいのか決めるのが難しくって……インテリア雑誌の仕事をしている友人に助けてもらって、このブルーグレーを選んだの」

母親から贈られた宗教画、ギリシアのお土産、子供の工作……というように、彼女が好きで集めたさまざまなタイプの品が、モダンな家具とハーモニーをなしている。壁一面の棚を埋めるのは書籍かと思いきや、LPレコードがびっしり! 音楽ファンのご主人のコレクションだ。脇の壁にはギターが飾られている。彼は週に一度レッスンを受けていて、時々自宅のリビングルームでも演奏をするそうだ。彼が旅先や蚤の市で古いレコードを探すとき、彼女は自分好みのオブジェなどを物色。「ブロカント漁りやヴィッド・グルニエ(屋根裏総ざらえ)が大好きなの。キッチュな品や宗教グッズとか……陶器も好きなので花瓶や食器などの掘り出しものをするのが楽しい。でも、収納場所がもうないの」

ブラッセルの蚤の市で見つけて、持ち帰った品も少なくない。15年くらい前には、スカンジナビアの巨大な木製のテーブルや脚つきランプなどを、夫婦ふたりして電車でパリまで運んだこともあるとか。

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左:ソファは以前のは大きすぎるということで、改装後にスペース確保のため小型タイプを購入した。PARISと手刺繍されたピンクのクッションはアフリカの品を扱うブティックCsaoから。壁の宗教画は理想としては、NYのパラマウント・ホテルのようにベッドの上に掛けたかったのだが、うまくいかず、この場に落ち着いたそうだ。

右:窓側の壁のひとつには、ブルレック兄弟の棚「コルニッシュ」が。そこに贈り物のデンマーク製花瓶、おばからもらった貝殻、夫のために20区のアトリエで描いてもらった鏡などを飾っている。棚の上の大小2つの釣鐘状ガラスケースはブラッセルの蚤の市で買った。

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左:おばが趣味で作ったという手製の籐の丸テーブル。シシリアで買ったサンゴをガラスケースに収めたのは、子どもたちの友達の不注意から守るためだ。
右:このアパルトマンの大きな魅力は、ダブル・リビングルームに面した緑の景色だ。
photos:Mariko OMURA

≫ 建築家のアイデアで、ふたつのキッチンを使い分け。

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通りに面していない建物なので、家の中はとても静か。以前より狭くなってもこの家に越すことに決めた要因のひとつは、リビングルームの前に緑の空間が広がっていることだった。複数の建物の裏手にある中庭が隣り合わせに集まって、パリ市内ではなかなか得難い光景を呈している。

このアパルトマンで面白いのは、キッチンが2つあることだ。食卓を置いたリビングの傍に、冷たい料理用の簡単な流しと調理台のミニ・キッチン。彼女の仕事場へと通じる人目のない廊下が、本格的な料理用のキッチンとなっている。「これは改装をお願いした建築家からの提案だったのだけど、すごく気に入ったわ。リビングのキッチンはちょっと引っ込んだ場所にあるのであまり目につかず。食卓からお皿をすぐに下げられるし、洗うのも簡単。暖かい料理用のキッチンは奥にあって、ごちゃごちゃとした調理用具もゲストの目に触れずに済むし、匂いがリビングたちこめることも避けられて……」

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左:大改装をお願いした建築家フランソワ・ミュラシオールによるアイデアから、リビングルーム内に簡易キッチンが作られた。
右:エントランス・スペースとの仕切りには採光のためガラスを。このキッチンでは料理はしないので、お気に入りの陶器を調理台の上に飾っている。

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キッチュ……だけど、好きという陶器の飾り物はブロカントでみつけた。18世紀の本物は買えないので、1ユーロの品で満足!

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左:一番のお気に入りというコーヒー・カップ。
右:ロンドンのブロカント、レピュブリックのブティックで、祖母から譲られた……と、時代もタイプも異なる3点の陶製品を1カ所に集めて。
壁にかかっているソーセージは、友人によるニット作品!

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リビングルームと仕事場の間、うなぎの寝床型のキッチン。火を使った料理はこちらで作る。インド、中国、ポルトガル、アフリカなど旅先の思い出の品がキッチンに飾られている。

本キッチンの奥に、マリー=アンヌがこのアパルトマンの中で多くの時間を過ごす仕事場がある。5年前の工事は3ヶ月を要したが、自分の空間を持つという念願を叶えることができたのだ。広くはないが、白ベースに花と植物の合間に鳥が戯れるモチーフの壁紙が貼られて、とてもチャーミング。「どうしても壁紙が欲しかったので……ここは私のスペースだから何もかも自由にできるの。だから、ここが家の中で一番のお気に入りよ。私の寝室のベッドで子供が友達と遊んでも全然気にならないのだけど、この仕事場では誰かが私の椅子に座ることすら、嫌。そんなことがあると、大声でわめいてしまうくらい。雑然として見えても私なりにオーガナイズされたスペースなんだもの!」

部屋の一角は仕事の資料だけでなく、不要品の置き場となっている。これはリビングルームを常にすっきりと保つ方策。朝起きた時に余計な物が散らかっているリビングルームを見るのが耐えられないという彼女自身の精神衛生のためにも、ご主人や子どもたちがあれこれ持ち込むのを受け入れることにしているそうだ。

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左:6区のAu Fils de Couleursで見つけた壁紙。ペルー旅行中、素晴らしい帽子市を見つけたので撮影をしたかったけれど許可してもらえず。帽子を買って、やっと帽子売りのおじさんにもポーズをしてもらえた、という思い出の品。
右:ドアに留めた542のプレートはアルゼンチン旅行中の買い物だ。

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仕事場は彼女だけのスペース。思い入れのあるオブジェなどが存分に所狭しと飾られている。

夫妻の寝室と2つの子供部屋。プライベート空間についても、建築家のアイデアで夫妻の希望が実現された。たくさんの収納棚、夫妻と子どもたち用の2つのバスルーム、ほぼ同じ広さの2つの子供部屋……。次女ポムリーヌの部屋のためには、ベッドと収納を一体化した家具も彼はデザイン。子ども部屋は娘たち自身によるインテリアだが、ママさながらにカラフルで魅力的な空間となっている。長女の部屋にはハープが置かれ、次女の部屋には柔道の賞状が飾られ……さらに2人揃ってクラシック・バレエを習っている。

「娘たちは夕食後にダンスやパントマイムなどの即興で、私たち夫妻を楽しませてくれるのよ。リビングルームの籐の丸テーブルを脇によけて、そこを舞台に見立てて……私たちは2人がすることを食卓から観客となって見るの。日曜の夜は早めに食事をすませて、リビングの床に座って家族4人で一緒にゲーム……夫が選んだ曲を聴きながら。これが習慣ね」。上手に配置されたオブジェと家具の明るい色が作りあげているシックなリビングルーム、そして素敵な家族の時間!

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左:夫妻の寝室。壁の作品は、ニナ・シルドレスのポラロイド写真。
右:ロンドンのストリートで作ってもらった家族4名のシルエット。黒い額に入れて北欧風に。

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左:2つの子ども部屋とリビングルームをつなぐ通路。ちょっとしたところにもランプや鏡などを。
右:長女レオニーの部屋。ここは提灯型の丸いランプ。廊下にはプリーツ状の赤いランプ……マリー=アンヌはスペースごとに、個性的なランプを見つけてインテリアを楽しんでいる。

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ブルーを基調にした次女の部屋。収納とベッドがひとつになった家具は、狭いスペースのための素晴らしいアイデアだ。
photos:Mariko OMURA

≫ マリー=アンヌのお気に入りインテリア・ショップは?

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■ マリー=アンヌのお気に入りブティック

GraziaやMilkといった雑誌の仕事をしているマリー=アンヌ。仕事柄、パリのムーヴメントにはとても通じている。それに加えて、新しい場所だけでなく、パリの魅力を彼女なりの視点で紹介したいと、昨年、「re-voir Paris(パリを見直す)」というヴァーチャル・シティ・ガイドを始めた。そんな彼女の目下のお勧めインテリア・ショップは、12区のAilleurs(アイユール)だという。

「何よりもこのブティックの雰囲気が大好き。ここは50年間使われず終いでクローズされていた家具のアトリエだった場所で、壁や床など昔のまま。商品は古い品、新しい品、フランスあるいはよその国の……とさまざまなミックスで、そうしたインテリアと良いハーモニーをなしていると思うの。入るとすぐに食器がセッティングされた大きなテーブルが置かれていて、奥はリビングルーム風、さらにその奥に中庭があって……とまるで一軒家のような作りもいいわね」

昨年12月にオープン。オーナーは、Merciで長いことセールス・マネージャーを務めていたレジス・ゴドンだ。

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地下鉄Ledro Rollin駅からすぐの、行きやすい場所にあるブティック。50年前の古ぼけたままの味わいある外観だ。

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左:古いタイルが魅力的だ。食卓の上のランプは、パオラ・ナヴォーネの作品。
右:「安く掘り出して、安く提供!」と、オーナーがベルギーのブロカントでみつけた薬局のボトル。下の棚にはポルトガルの食器類。

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左:中庭に面したリビング風スペース。天井から下がるランプが店で最も高価な商品とか。
右:思わず手にとりたくなる日本のブランドMIMATAの美しいグラス。一脚49ユーロ。この他にも日本のブランドを幾つか取り扱っている。

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左:アルチザナルな仕事は民芸調ではなく現代的な品を揃えるようにしている。
右:中庭にも商品をセッティング。
photos:Mariko OMURA

Ailleurs(アイユール)
17, rue Saint  Nicolas
75012Paris
Tel  09 53 81 83 14
営)11:00(月 14:00)〜19:00
休)日
www.ailleurs-paris.com
大村真理子 Mariko Omura
madameFIGARO.jpコントリビューティングエディター
東京の出版社で女性誌の編集に携わった後、1990年に渡仏。フリーエディターとして活動した後、「フィガロジャポン」パリ支局長を務める。主な著書は「とっておきパリ左岸ガイド」(玉村豊男氏と共著/中央公論社)、「パリ・オペラ座バレエ物語」(CCCメディアハウス)。

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