給水所にワイン? スウェーデンの不思議なマラソン大会。

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春の来訪とともに多々見かける光景がなんらかのトレーニングをしている人たちだ。新年の誓いのひとつでもある「ビーチでのナイスバディ」を目指し、どこの国でも動き回っているのかもしれないが、マラソン好きのスウェーデンでは、毎月のように大会が各地で催されている。

なかでも一風変わった内容のマラソンが、Winter Wine Run(ウィンターワインラン)だ。今年の1月にスウェーデン南部西海岸沿いにあるKullahalvön (キューラ半島)で開催されたワインヤードを走りきるマラソンだ。

10kmに渡るワインヤードを走るこのワインラン。ぶどうの木が育つテロワールを感じながら普通のマラソンとは違い土壌まみれになるのも醍醐味のひとつだ。

途中、4カ所に設けられたストップ場所ではワインの試飲が可能。そのなかのひとつKullabergs Vingård (キューラベリィ ワイナリー)は、2026年ノーベル賞の晩餐会でメインコースのワインとして「Immelen(イメルン)」をサーブしたことでも知られている。また、もうひとつのArlid (アーリード)ワイナリーは、ホテルもそうだがグランピング施設も有する広大な規模で展開している。

4カ所にわたる水分補給ならぬアルコール補給……。
最後まで完走できるのかどうかは疑問だが、楽しくおいしければ問題なし!と言ったところか。

こちらとは別だが同じような「ワインラン」が、ヨーテボリにあるワイン醸造所Winemechanics (ワインメカニックス)で今年の4月に行われた。11kmを走る中で4つのワインバーを巡りながら、水分補給として共にワインテイスティングをするのだ。


次に紹介するのは、Backyard Bun Run (バックヤード バン ラン)。ストックホルムのセーデルマルム地区にある大人気のベーカリー、Svedjan(スヴェーディヤン)が独自で主催しているランニングイベントだ。セーデルマルム内10kmを走るのだが、2kmごとに彼らのおいしいバンズ(シナモンバンなど)が提供される。2025年の10月に行われたのは、800メートルの1ラップを20分内にできるだけ走るというもの。毎ラップ(800メートル)ごとにバンズを一個というご褒美(?)つきだった。

スヴェーディヤンのスタッフは走るのが好き、そしてバンズも好き、それだったら好きなふたつを組み合わせようじゃないか!で始まったこの催しだが、現在では参加募集がすぐに満員御礼になるほどの人気ぶりだ。


これらふたつのマラソンとは別に、世界でも唯一無二の体験ができるのがLuleå Sea Ice Marathon (ルレオ シーアイス マラソン)だ。凍ったボスニア湾の氷上を走るもので、42km、21km、10kmを選べる。

氷点下で氷上を走るため、シューズから帽子、手袋にいたるまでの装備は入念。やる気にみちているのが十二分に感じられる。

自然に凍ったコースの上を走るたびに、氷の軋む音と冷たい空気が肺の中に入り込む感覚はこのアイスマラソンならでは。

大会とはいえ、はじけた感じも雰囲気作りに最高だ。参加者のなかには裸足で走る強者もいる。

スウェーデン人は走るのが好きな国民だ。私が住んでいる北部では真冬のこんな極寒にわざわざ……と思うほどランニングをしている人をよく見かけるし、ストックホルムなどのいわゆる「シティ」ではオシャレなパパ・ママたちがベビーカーを押しながら、子守との一石二鳥なランニングを楽しんでいる。数ある大会でも一番人気のストックホルムマラソンは毎年参加者数が増加し、今年5月に行われる2026年大会は25000人に達して参加者数記録が過去最高だ。(参照:My New Desk

ほろ酔い気分になったりお腹パンパンになりながらも完走するか、それとも唯一無二の体験をしながら完走するか。私自身はランニングが苦手でワークアウトに組み込んでいないのと、ワインもバンズも氷上体験もそれぞれだけで楽しみたいのでとりあえず参加予定はいまの所ない……(笑)。

神 咲子

ライター

在スウェーデンライター。コーディネート業も行うが、本業はレストラン業だった。そして50歳を過ぎてから、鉄道の電車の運転手に。スウェーデン中間部、東海岸のスンズヴァル市から西に一直線、ノルウェーとの国境のストールリーエン市を運転する日々を送る。

  • text: Sakiko Jin