ニコール・キッドマンが語る、母親を演じるということ。

インタビュー

今年のオスカーに作品部門を含む6部門で候補入りした『LION/ライオン〜25年目のただいま〜』は、実話にもとづく感動作。インド西部の小さな村に住む5歳の少年サルーが、停まっている電車に入り込んで居眠りをしていたところ、電車が動き出してしまう。2日後、電車はカルカッタにたどり着くが、彼はその土地の言語も話せない。周りの大人たちは、親を探してあげようにも、できることは限られ、彼を保護した施設は、オーストラリアに住む白人夫婦と彼の養子縁組をする。育ての親の愛をたっぷりと受けて育つサルー。だが、大人になった時、彼は、自分の生みの母、そして自分のルーツについて、思いをめぐらせるようになる。

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『LION/ライオン〜25年目のただいま〜』 © 2016 Long Way Home Holdings Pty Ltd and Screen Australia

サルーの育ての母スーを演じるのは、ニコール・キッドマン。出演シーンは多くないが、映画の最も重要なシーンで心を揺さぶる演技を見せ、助演女優部門にノミネートされた。原作の自伝本『25年目の「ただいま」 5歳で迷子になった僕と家族の物語』(サルー・ブライアリー著 舩山むつみ訳 静山社刊)については知らなかったが、脚本を読んですぐ、今作に出たいと感じたという。この物語そのものに強く心を惹かれた上、母国オーストラリアで撮影できることも、魅力だったようだ。

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ニコール・キッドマン
Photo by Dan MacMedan/WireImage/Getty Images

——出演は、どのような形で決まったのですか?

ニコール・キッドマン(以下、N):「脚本を読んで、ものすごく心を惹かれたのよ。それでガース・デイヴィス監督に、ぜひスーを演じたいと言ったの。ほかの人たちも同じように次々に集まってきて、今作はとてもスムーズに進んでいった。原作は、脚本の後に読んだわ。これは希望に満ちた、とても美しいストーリー。母というものについて語るものだとも思う」

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『LION/ライオン〜25年目のただいま〜』 © 2016 Long Way Home Holdings Pty Ltd and Screen Australia

>>自身も養子を育てたこと、故郷オーストラリアでの撮影について。

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——スーは、子どもを産むことができるのに、インドから養子を取るという選択をしました。あなた自身も養子を育てられましたが、彼女の決断をどう思いましたか?

N:「素敵だと思ったわ。彼女の言うことは、全部、本当だとも感じた。そこが、スーという人の素晴らしいところなの。インドの文化は、運命というものを信じる。でも、スーもそうなのよ。それは彼女の運命だったの。サルーが、彼女の運命だったのよ。私も、運命を信じる。とてつもなく広いこの世界で、私たちは、なぜか、ある人々に出会う。そこには何か大きな力が作用していると、私は思うの。私は、それが何であれ、偉大なるユニバースが私にもたらしてくれるものを、両手を広げて受け入れたいわ」

——撮影前には、スーやサルー本人たちとバーベキューパーティで親交を深めたのだとか?

N:「そうなの。ガースが計画してくれたのよ。だけど、その前にも、リハーサルで家族には会っていた。ガースはすごくおっとりした、優しい人。それもあって、とてもよい形で撮影のスタートが切れたんだと思う。彼は現場でも自由をくれるし、楽しい雰囲気を作ってくれる。こういう映画で、そういうムードはとくにありがたいのよ。だけど、彼は奥でしっかり自分の求めるものを知っていて、それを確実に手にしてもいる。子どもたちの演技が証明しているわ。あの子たちは素人なのよ。それなのにあんなすごい演技を引き出してみせたの。驚きじゃない?」

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『LION/ライオン〜25年目のただいま〜』 © 2016 Long Way Home Holdings Pty Ltd and Screen Australia

——オーストラリアに戻って撮影するのは、楽しかったですか?

N:「ええ、あそこに戻っていくのは、いつだってうれしい。母が住んでいるし、私がこのキャリアをスタートされた場所だもの。クルーにも知り合いがたくさんいるわ。今作のクルーにも、私が14歳の時から知っている人たちがいたのよ。オーストラリアは、永遠に私の故郷なの」

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『LION/ライオン〜25年目のただいま〜』 © 2016 Long Way Home Holdings Pty Ltd and Screen Australia

『LION/ライオン〜25年目のただいま〜』
●監督/ガース・デイヴィス
●脚本/ルーク・デイヴィス
●2016年、オーストラリア映画 
●119分
●配給/ギャガ
●2017年4月7日(金)より、TOHOシネマズ みゆき座ほか全国にて公開。
http://gaga.ne.jp/lion/

texte : YUKI SARUWATARI

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