稲垣吾郎の存在感に圧倒される。
編集KIMのシネマに片想い
こんにちは、編集KIMです。
今回、変化球でまず舞台の話から始めたいと思います。
先日、稲垣吾郎さんが出演する舞台『No.9』を赤坂ACTシアターで観てきました。もちろん大盛況、大混雑。さすがの人気です!
私もこの看板を撮りましたが、同様に撮影しているファンの方々が多数いらっしゃいました。
『No.9』、ベートーヴェンの第9のことです。
稲垣さんはベートーヴェンを演じています。第9という交響曲ができるにいたった過程を描いている部分もあるのですが、多くは、音楽家ベートーヴェンの激情、コンプレックス、創作への欲望、報われない想い……などを描いています。
映画においてもそうですが、実話モノ、歴史上の人物を描いた作品は注目度が高くヒットする、という定説があります。当然ですよね、もうすでに有名人逸話の下地があるのだから。
ただし、そのぶん描かれた人物のファンもいるワケで、「こういう部分が本当の姿とは違うんじゃないか」とか「イメージが合っていない」とか言われてしまうのです。
稲垣さんの舞台での存在感は、そんなこと言わせないぞ!という迫力でした。観るものを、同じ舞台にいる人物の気持ちにさせてしまう、という観客を巻き込む底力がものすごかったのです。
インターミッションはもちろん、終演後、私は「ベートーヴェン」という人物に関してスマホで調べまくりました。この舞台で稲垣さん演じるベートーヴェンと、彼の周りにいる人物たちに関して、本当にベートーヴェンの実人生に大きな影響を与えたのかどうか、など気になって仕方なかった。
調べてみると、ベートーヴェンは酒飲みで暴力的な父に怯え、その父から兄弟を守り、当時のヨーロッパ文化において華々しい都ウィーンで自身のアイデンティティを模索し苦しんでいたとあります。この舞台のとおりです。モーツァルトやゲーテ、ナポレオンの名前まで劇中では出てきて、歴史に残る著名な人物たちの間で、ベートーヴェンの心はジェットコースターのようにアップダウンを繰り返していたのでしょう。
『No.9』では、通説にたくさん書かれているベートーヴェンが愛した女性たちのなかで、ナネッテという実在のピアノ製作者と、ヨゼフィーネという貴族の女性が登場します。そしてナネッテの「耳の優れた」妹マリアという架空の人物を立てています。
ナネッテはベートーヴェンの音楽創作の女神、ヨゼフィーネは芸術家だった彼が憧れる貴族階級の美女。才能ある野心的な男として、彼は、女を安住の存在にはできず、恋する女たちに対し心揺れ動きながら生きていきます。実際のベートーヴェンも、一生結婚しなかったそうです。
当時の世界は戦いの時代。ナポレオンがウィーンに攻め込み、その時に「歓喜の歌」の元となる歌を酒場でフランス軍兵に歌わせたことが第九の始まり、とこの舞台では描かれています。そのシーンは……ただただ泣けます。永遠に残る芸術作品誕生の瞬間です。
ちなみに、この舞台の演出を手掛けた白井晃さんは、KIMも大学時代から観ていて大ファンだった遊●機械/全自動シアター主宰者。どこかユーモラス、人生の切なさをくすっと笑えるものに変えてくれる、そんなストーリーや演出に惹かれました。
ベートーヴェンや、彼が生きた時代を眺めることは、ヨーロッパが好きな人にとって、素晴らしいギフトになるはずです。
この舞台、今週末の12月2日までなので、こちらで紹介しても、観られる方は少ないかもしれません‥‥。立見席、当日券があるとよいのですが。
ちなみに稲垣さんは、2019年1月20日発売のフィガロジャポン3月号に登場します。映画『半世界』にまつわるインタビューでしたが、インタビュー時に、「ものづくりにまつわる役柄をいただくことが多い」というお話をされていました。ベートーヴェンを演じる、この『No.9』についてもコメントされていました。
稲垣さんがベートーヴェンを演じることによって、蒔かれた種の先に、すごく知的な花開く世界が広がっている、ということに気づいてくれた方々に観ていただきたい、当時のウィーンや、同時代に活躍した才能が登場する映画を最後にご紹介。
今年の米国アカデミー主演男優賞をウィンストン・チャーチル役でとった名優ゲイリー・オールドマンがベートーヴェンを演じます。実在の人物を演じるのもお手のものか!
『不滅の恋/ベートーヴェン』
●監督・脚本/バーナード・ローズ
●出演/ゲイリー・オールドマン、イザベラ・ロッセリーニ
●1994年、アメリカ映画
●本編122分
●Blu-ray \4,104 DVD\3,024 販売元:ハピネット
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ベートーヴェンはモーツァルトにそうとう憧れていました、宮廷で愛される音楽家としての彼に! モーツァルトがいかに、ピュアで、おかしくて、華やかで、そして悲しい人生であったか、彼に嫉妬するマジメな音楽家サリエリの視点で語られる名作です。
『アマデウス』
●監督/ミロシュ・フォアマン
●出演/F・マーレイ・エイブラハム、トム・ハルス
●1984年、アメリカ映画
●本編160分
●Blu-ray¥2,571 DVD ¥1,543 発売・販売:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
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ベートーヴェンはゲーテの著作を愛していた、とされています。実際に会うこともあったとされています。この映画では、ゲーテのいちばん有名といってもいい『若きウェルテルの悩み』の元になった恋について描かれています。
『ゲーテの恋~君に捧ぐ「若きウェルテルの悩み」』
●監督・共同脚本/フィリップ・シュテルツェル
●出演/アレクサンダー・フェーリング、ミリアム・シュタイン
●2010年、ドイツ映画
●本編105分
●DVD\4,104 発売:ギャガ 販売:ハピネット
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クリムトが生きた時代はベートーヴェンよりも後ですが、ウィーンという街を稲垣さんのベートーヴェンをきっかけに訪れたいと感じた方は、クリムトという人物を知っておくと役立ちます。街の美しさに貢献したクリムトのセセッションの建築や、『NO.9』のセリフでも出てきたシェーンブルン宮殿(現在は中に美術館あり)にクリムトの絵が飾られているのでぜひ訪れてみて下さい。こちらも名優ジョン・マルコヴィッチがクリムトを演じています。
『クリムト』
●監督・脚本/ラウル・ルイス
●出演/ジョン・マルコヴィッチ、ヴェロニカ・フェレ、サフラン・バロウズ
●2006年、オーストリア・フランス・ドイツ・イギリス映画
●本編97分
●デラックス版DVD \5,076 発売・販売:NBCユニバーサル・エンターテイメント