天から遣わされた男・三浦春馬が演じる五代友厚という『天外者』。
編集KIMのシネマに片想い
12月11日より公開される映画『天外者』、これは「てんがらもん」と読みます。鹿児島弁で、「凄まじい才能の持ち主」を指す言葉で、三浦春馬さん演じる実在の人物・五代友厚は、薩摩藩の武家に生まれながら明治政府の官僚となり、後に実業家として現代のビジネスの街・大阪商人たちの基礎をつくりました。
三浦春馬の殺陣は本当に素敵です。姿・立ち居振る舞いの美しさがここでも発揮されます。手にした刀は刃を隠しています。人を殺めず、武士が人を斬ることへの強い反発を持った新しい時代の平和主義への五代の想いがこもった小道具です。三浦翔平さんは五代友厚とともに改革を目指す盟友・坂本龍馬役。
たった2時間弱の尺では、五代の人生はとても追い切れず、駆け足にしか辿れません。どんな人の人生を描こうが情報やエピソードは多すぎて簡単に表現できるものではないと思いますが、五代友厚のように、旧い時代の名家に生まれながら未来を見据えて時代の寵児となり、世界全体がそして日本が違う時代へ向かう際に、パイオニアとして英国留学まで果たした好奇心の塊のような人物の人生なんて到底描ききれるワケないのです。
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船の上から新しい時代に対して意気込みを語り合う五代と龍馬。
三菱財閥を築く岩崎弥太郎を演じたのは西川貴教。
本作での三浦春馬の五代友厚は、「真の強さ」を抱いて演じられていると感じました。
和装から洋装へ向かった時分、五代友厚はダンディズムのあるイメージもあったのかもしれません。いまで言うところの時代を読む力に長けていた人物であり、トレンドや流行を取り入れることも巧みだったはず。でも本作の五代は、しなやかで美しい三浦春馬が演じても雄々しく、ひとつ手に入れるごとに何かを失い、そのことに激しく傷つきながらも前を向いて進み続ける男の中の男でした。
何事にも単に打たれ強く上手にかわすだけでへこたれない無神経な強さには、奥行きがありません。
「真の強さ」と表現したいのは、ひとつひとつのことに真摯に向き合い、予定調和で決着をつけるのではなく、嫌われ者になる痛みを感じながらも、自らの信じる未来に向けて挑戦し続ける繊細な強さを宿した「五代友厚」を、三浦春馬は演じ切ったと思うからです。
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妻・豊子に書画を教わるシーンは、やわらかく、かつ思想に満ちています。
映画の中で、カメラは何度も男たちの足元を映します。靴を履くその足元は、新しい時代へ歩みを進める人間たちの基礎である、というメッセージと受け取りました。
そして、この作品がユニークな歩みを辿っているのは、市民有志が立ち上げた「五代友厚プロジェクト」が軸になって作られた点です。ふつうであれば、コピーライトを示す表記は映画のタイトル+製作員会、となります、たとえば©「天外者」製作委員会というように。でも本作は ©2020「五代友厚」製作員会 という表記になっています。大阪、そして九州という土地への熱い想いが実った形で作られた作品となっています。
土地土地への強い気持ちが込められて作られた作品であるということが、三浦春馬さんがされてきたさまざまな活動を考えると、いまは、個人的にただただ尊く切なく感じてしまう私がいます。
五代友厚は文明の力であるさまざまな道具に対しても知識が豊富な人物として描かれています。壊れた機器を直したり、使い方を直感的に察知したり。文武両道であり、優れた発明家の面もあったそう
天外者とは凄まじい才能を持った人物という意味だと冒頭に書きましたが、天が外の世界に遣わしてくれた使徒の物語を観るような気持で本作を観ました。
天が30年間だけ外の世界に遣わしてくれた人、三浦春馬の演技をじっくり堪能してください。
『天外者』
●監督/田中光敏
●脚本/小松江里子
●出演/三浦春馬、三浦翔平、西川貴教、森永悠希、森川葵、蓮佛美沙子ほか
●2020年、日本映画
●103分
●配給/ギグリーボックス
●12月11日より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開
https://tengaramon-movie.com
約束編:https://youtu.be/zFO62cP_dmM
決意編:https://youtu.be/Who5KZlKKn0
友情編:https://youtu.be/Qonn32ENUeg
©2020「五代友厚」製作委員会
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