新世代の音楽シーンを牽引するハイエイタス・カイヨーテに直撃取材!(後編)
Music Sketch
引き続き、4人のインタビューを掲載します。
■音楽とは、現実と創造力を結ぶものだよね。
― 先ほどネイが話したようにライヴが“癒しのセレモニー”のようなものなら、ハイエイタス・カイヨーテの音楽は現実世界と何とを結ぶものだと思いますか?
ネイ・パーム(以下、N):「例えばの話だけど、トールは北欧神話に登場する雷神で、似たような神様がヨルバのヴードゥー教のシャンゴであり、ギリシャ神話のゼウス。文化は正反対なのに、不思議なことに同じ世界観の神が存在するのよ。だって、神話の世界では“斧を手にした男”が稲妻をコントロールしているなんてクレイジーでしょ? 昔からずっと科学と事実との間、自然界や神話を理解するために、そういう対照的なものがあったんだと思うわ。複雑な状況を理解するためにそういったストーリーがあるから。一見完全に馬鹿げた話に思えるとしても、それって実は、真実を語る何か象徴的なものだったりするの。例えば雷という不思議な現象や、神話に登場する人魚もそう。水中に住む半分人間の身体をした生き物は、現在の科学の進歩を考えると例えば潜水艦とかスキューバダイビング用のギアかもしれない。同じものじゃなくても、本質的には同じ。はっきりと劇的に物事を切り離すこと自体が間違っているのよ」
― そうですよね。
N:「それよりも“何が似ているか”に目を向けることがポイントだと思う。それができれば、より多くのものを結ぶことができると思うから。私たちが考える“音楽ジャンル”もそう。全く正反対に思えるような音楽に共通点を見つけることができるでしょう。例えば“現実vsイマジネーション(想像)”に関しては、イマジネーションは“現実”という形だったりもするから。だって、夢を見るとき、どこまでが現実でどこまでが非現実か定義はできないでしょ?私はこの2つ(現実vs想像)に多くの差異があるとは思わない。むしろ、同じものに何次元もの見方があるってことだと私は思っているの。知覚を選ぶという行動は自分自身を制限する。つまり、より広い知覚を持つことで、それは自分にとっての現実になるの。面白いわ、いい質問ね」
写真:古渓一道
サイモン・マーヴィン(以下、S):「音楽とは、現実とクリエイティヴィティ(創造力)を結ぶものだよね。どんな音楽でも創ることができるから。音楽は無限なものでオープンだし、クリエイティヴィティに向けてもオープンだ。僕にとっての音楽とはコミュニケーション。なかでも自分が集中していることは、一緒に音楽を制作することや、ステージで一緒に演奏するプレイヤーとの繋がり、リスナー(オーディエンス)との繋がり。創造力の素晴らしさ、特に自然発生的な創造力の素晴らしさが大切だね。そして音楽は自分にとって演奏することも聴くことも同じレベルで、とてもストロングなことなんだ」
■楽曲の各部分のエネルギーに相応しいサウンドを追求している。
― ペリンはトラックメイカーからドラマーに転向したそうですね。シンバル系の上物の乾いた軽い感触の音など、演奏を含め非常にユニークなスタイルだと思います。敢えて意識して叩いているところはあるのでしょうか?
ペリン・モス(以下、Pe):「いろいろなことを考えている時もあれば、何も考えずに叩くこともある。でも、自分の心を無にして演奏するところまで到達するには……(少し考えて)、自分の場合、とにかく練習するのが好きだね。特に自分はドラムを始めたのが比較的遅かったから、他のドラマーの2倍は頑張らなきゃいけない。このバンドでツアーに出るようになってからは、自分が表現したいことを自由にやるのではなく、ステージ上で起きていることによく耳を傾けながら演奏するようになった。とにかくよく“聴く”ことが大事。しっかり(他のメンバーの演奏を)聴かないと、一体何が起きているのかを把握できないからね」
― 他にはありますか?
Pe:「演奏中に音楽から得るエネルギーのことを考えることもあるね。例えば、友人がプレイした楽曲だったり、初めて聴いたフラメンコ音楽のレコードだったり、僕が子供だった頃に両親が連れて行ってくれたパーティで出会った素晴らしいミュージシャンたちが、お互いの演奏に反応して面白いセッションを見た時のことだったり。長年にわたって聴いてきた様々な音楽が突然浮かび上がり、そういうものを感じながら自分も演奏していたりするんだよね」
N:「うちのバンドのメンバーたちは“こんなに楽器を上手く弾けるんだぜ”みたいな自慢するタイプの演奏家はいないわ。3人全員が“この楽曲のここの部分のエネルギーに相応しいサウンドはどんなものだろう?”ということを大切にしているのが最高よね。自分自身を良く見せることより“どんな音が必要か?”ということの方が重要なの」
Pe:「楽器は自分達の“声”だからね。各自の担当楽器を使って自分の声を届けているんだ」
― ライヴ演奏中は、毎回インプロヴァイゼイションを楽しんでいるんですか?
ポール・ベンダー(以下、Pa):「しょっちゅうジャズミュージシャンのようにセッションしているように見られるけれど、実はちゃんと考えてアレンジして演奏しているんだ」
S:「ライヴで演奏している95パーセントは決めた通りだよ」
Pa:「若干足したり引いたりはその場であるかもしれないけど、自由に楽しんでいるように見えるのは有り難いね」
S:「でも、例えば『ナカマラ』は自分にとってはジャズ・スタンダードのようなもの。だから似たようなアイディアが浮かんだら、毎回変えて演奏してみるし、『アタリ』もそう。だからフレキシブルな感じは曲に依るんだ」
写真:古渓一道
■ ツアーをしながら世界中で宝探しをしているような気分ね。
― 次のアルバムはどんな感じになりそうですか?
N:「楽曲はでき上がっているけど、これから形にしていく感じね。でも、私たちはいわゆる“コンセプト・アルバム”を制作するようなバンドではないし、突然“じゃぁ、昔のロックをやってみよう”なんてなることもない(笑)。それぞれの楽曲が異なるからね。レコーディングする度に“何が上手くいき、何がダメか”というような、自分達の音楽に対する理解が深まっていくのよ」
Pa:「サウンドの可能性は更に広がっていく予定だ。サウンドの探求というか。より幅広いアイディアがたくさん出てくると思う」
N:「新しい船にこれまで捉えたことのないサウンドが搭載されている感じかしらね。ずいぶん前に4人で書いたけど、当時発表するにはタイミングや内容が合わず、温めていた楽曲も収録する予定よ。ベスト・タイミングの出産日を決めるというか(笑)」
写真:古渓一道
― 最後になってしまいましたが、ネイのファッションのインスピレーションの源を教えてください。
N:「あちこちからね。両親はマーケットカルチャーで育ったし、父は宝石デザイナー、母はヴィンテージショップで働いていたこともあって、私は世界中を旅しながらいつも面白いものを探すことに取り憑かれているの。ツアーをしながら世界中で宝探しをしているような気分ね。カルチャー&トレジャーが大好きなの!」
*To be continued