Music Sketch

勝井祐二インタビュー ROVOの最新作『RAVO』について《前編》

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FIGAROjaponの最新号の音楽ページでもご紹介している、ROVOという日本人の6人組グループの最新アルバム『RAVO』が、私の最近のお気に入りです。コズミック・ダンス・ミュージックと称されることの多い彼らの音楽は、もちろん身体もたっぷりと踊らせてくれるものなのですが、その演奏にはジャズやエスニックやサイケデリック、ハウス、プログレッシヴロック・・・・・・といったあらゆる音楽を包含した奥行きの深さがあり、聴くほどに音の粒子が飛び交う様は、まるで脳内ミュージックと呼ぶにふさわしいアート性の強い音空間になっています。聴くほどに、惹き付けられてしまう、不思議な魔力も持っています。
ROVOの中心人物である、エレクトリック・バイオリン担当の勝井祐二さんに話を伺いました。


1119music_1.JPGROVOでの活動の他に、ソロやユニットなど、数多くの場で活動している勝井祐二さん。

――今回のアルバム『RAVO』は、どのような意図から制作したのですか?

「僕らの曲作りは、まず誰かが"こういう曲を作ろう"というアイディアを出して、そこからバンド全員で作っていく感じなんです。ライヴの時もいつもそうなんですけど、演奏するフレーズはメンバー各自が決める。だから必然的に曲のメロディというのは僕が弾いているので、他の人の表記になっている曲でも、メロディは僕が作っていたり、それと同じようにリズムはリズム担当である人が作っていて。"こういうのをやりたい"と言い出した人が、その曲の作曲者だという認識です。その人がイニシアティヴをとって、みんなでアイディアを出して、肉付けをしていく時にリードしていく」

――ただ、こういうインストゥルメンタル・ナンバーだと、"こういう風にやりたい"とイメージを伝えるのが難しそうですね。

「山本(精一)さんが持ってきた『Baal』という曲を作り上げていく途中に、2日目くらいかな、突然"この曲には元々考えていたメロディがある"って言って(笑)、そこで彼がギターを弾き出したフレーズが、それまでやっていた流れと拍子もキーもかなり違うように感じられたので、ビックリした。それで山本さんが新たに提案したコード(C)と元々のギターのカッティングが進行していくコード(A)が入れ子になっていくことで、それが曲の中の歌サビの展開になっていくきっかけになったというか」

――AもCもメジャー感のあるコードですね。

「そう、山本さん確か、マイナーコード嫌いなんだよね」


1119music_2.jpg今年5月に日比谷野外音楽堂で行われた《MDTフェスティヴァル》のステージから。メンバーは勝井祐二(Vio)、山本精一(G)、芳垣安洋(Dr,Per)、岡部洋一(Per,Dr)、原田仁(B)、益子樹(Syn)。

――かなり時間をかけて、今回収録されている5曲を構築していったんですか?

「ROVOの曲は先に構成や骨格を作って演奏するというより、イメージなんですよ。益子(樹)くんが持ってきた曲『Eclipse』は、最初はそんなにリズムの変化しない、ひたすら踊っていられるハウス・ミュージックのリズムの感じみたいな曲作りをしていたんですね。でも、やっていくうちにどんどん変わっていって、リズムが完全にアフロビートになっていて、"ハウスになっていないけど、それでいいの?"って聞いたら、"いいです"って本人が言って。"じゃぁ、いいんじゃない?"と、構造が変わっていくような自由さもあるんです」

――「Eclipse」ではバイオリンがまるで歌っているように、気持ちよく奏でられていますよね。

「僕がやっている楽器の特性上、歌っぽいというか、歌に近いんだと思いますね。僕はヴォーカルの人と一緒に演奏するのが好きなんです。そういう時に歌を一緒に歌うというか、そう感じているんです。コーラスみたいな存在でもありたいし、背景になるようなこともしたい。たまにはリード楽器というか、器楽的に全体を引っ張るというみたいなこともするけど、一緒に歌を歌うように弾くことが好きですね。そういう意味で『Eclipse』とかは、完全に歌ですね」


1119music_3.jpg甘美にも、情熱的にもメロディを奏でる、圧倒的存在感を放つ、勝井さんのエレクトリック・バイオリン。

――これまでは5分ほどの曲から20分を越す大作まで曲の長さがさまざまでしたが、この『RAVO』はどれも12~13分にまとまっています。体感的にそのタイムが慣れてきたのか演奏しやすいのかわからないのですが、曲としても非常にうまくまとまっていると思います。ダンス・ミュージックというのは万人のもので、基本みんなで踊るものだから、そういう意味では今回の曲はドラムのアンサンブルは複雑だけど、ポップ感やメロディも際立っていて、きれいに耳に入ってきます。

「嬉しいですね。ただ、今回のリズム・アンサンブルや曲構成は難易度が高いんですよ。今でもライヴで演奏する時に結構難しいなと思うんですけど、曲自体はそう聴こえないようにできているというか。12分くらいにまとまっているというのは、僕らにとってある種の大きな1歩で(笑)。僕らの曲はライヴをやるとだいたい15分なんです。ひとつの曲の中で"出来事があって、盛り上がって、着地する・・・・・・という流れが15分で鉄板。野外フェスでも"時間を守れるバンド"として、評判にはなってはいないと思いますけど(笑)、しっかり守っています(笑)」


1119music_album.jpgROVOの最新アルバムして最高傑作『RAVO』。


次に続きます。

なお、今週末の11月21日(日)には、東京・恵比寿リキッドルームにてROVOのライヴがありますので、興味のある方は、ぜひこの音楽マジカル空間を体感してみてください。


* LIVE PHOTO: Wataru Umeda
* To Be Continued

伊藤なつみ

音楽&映画ジャーナリスト/編集者
これまで『フィガロジャポン』やモード誌などで取材、対談、原稿執筆、書籍の編集を担当。CD解説原稿や、選曲・番組構成、イベントや音楽プロデュースなども。また、デヴィッド・ボウイ、マドンナ、ビョーク、レディオヘッドはじめ、国内外のアーティストに多数取材。日本ポピュラー音楽学会会員。
ブログ:MUSIC DIARY 24/7
連載:Music Sketch
Twitter:@natsumiitoh

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