映画『ハナレイ・ベイ』で、美しい海に導かれた男たち。

インタビュー

佐野玲於、村上虹郎、佐藤魁。いまのエンタメ界でひと際輝く人気者たちは、映画『ハナレイ・ベイ』で初共演を果たし、意気投合したという。今回のインタビューで相手へのリスペクトを口にし、3ショットの撮影中は昔からの親友のようにじゃれ合う姿を見ると、この作品で築いた絆の深さを感じることができた。そして、それこそが映画の魅力に繋がっている。

100917-hanalebay-03.jpg左から、サーファー高橋役の村上虹郎、サーファー三宅役の佐藤魁、サチの息子タカシ役の佐野玲於。

ひとりの女性が対峙する、生と死を際立たせた役作り

舞台はハワイのカウアイ島にある美しい湾ハナレイ・ベイ。ひとり息子のタカシをサーフィン中の事故で亡くしたサチ(吉田羊)は、毎年命日の時期になるとこの地を訪れ、海辺で静かな時間を過ごす。そして10年目の年に、ふたりの若い日本人サーファー高橋と三宅に出会い、彼らから「片脚の日本人サーファー」の話を聞く。それをきっかけに、自分にはもう感じることができなくなってしまった息子の存在と、生きている実感だけが残る自分の人生に向き合っていく──。

心地よい日差しと人々を包み込む豊かな自然の中、生きることに向き合ったことで、3人の関係は波のように溶け合っていった。佐野は、サチの息子タカシを、村上と佐藤は、サチが出会う日本人サーファーの高橋と三宅をみずみずしく演じている。演技しているとは思えないくらいのナチュラルな表情をし、息をしている3人の男たちは、どのようにタカシ、高橋、三宅となったのか。

100917-hanalebay-04.jpg撮影中、すぐに肩を組んでは仲良さそうに会話を始める3人。

村上 原作は村上春樹さんの短編(『東京奇譚集』所収)。村上春樹さんの作品をたくさん読んでいるわけではないけれど、そのなかでも一風変わった作品なのかなと。僕の中で、村上春樹さんの作品は官能的な匂いがある物語をイメージしているけど、『ハナレイ・ベイ』は人生観や死生観をダイレクトに描いていて、もう少し人の本質に直結していると思っていて。だから演じる僕たちは、映像表現とカウアイ島の自然に負けずに伝えなきゃいけない、と踏ん張ってたね。

佐野 そうだね。ハナレイ・ベイの画力は強かった。そのなかで僕は、タカシをそんなに特別扱いすることなく演じてた。タカシが出てくるのはサチの回想シーンで、素のままに生きている姿が描かれる。サチ自身がその回想を通して10年間止めていた時間を動かし始めるから、親子の関係性や距離感を表現するうえで、タカシはあくまで自然体でいるべきだと考えていて。あと、彼の空気感は普段の僕に近いところもあったので、無理せずフラットにできたのもあるかな。三宅は魁そのままだったよね。

村上 僕らが演じた高橋と三宅は映画のオリジナルの役。

佐藤 うん。監督(松永大司)が自由にやってごらんと言ってくださったのもあったし、虹郎に役作りについて聞いたら「三宅を知ること」って教えてくれた。だから、役と一体になって等身大のままやろうと思った。普段サーフィンをやっていて自然の循環を考えることがあって。今回、人の生死や思いが循環するハナレイ・ベイを見たら、自分が出演する意味も見出せた。

佐野 なにげなく三宅を見ているとただの魁なんだけど(笑)、スクリーンの中では成立していて、彼にしかできない役にちゃんとなっている。虹郎のお芝居は別の意味で自然で、見ていて気持ちいい。すごく刺激を受けたな。

佐藤 最後に監督に、僕を起用したのは博打だったと言われたけど……(笑)。

100917-hanalebay-05.jpg凛々しい容姿とは裏腹に、気さくでオープンマインドな佐野。役者としての真摯な姿勢が、言葉の節々から感じ取れる。

村上 もちろん、いい意味でね(笑)。玲於が演じるタカシは、母親のサチにいつも冷たいように見えるんだけどだけど、劇中に出てくる「さいなら」という言葉ひとつを取っても愛情を感じる。そこが切ないけど、いい。

佐野 ここでの飾らない「さいなら」は究極の愛情表現だと思ったんだ。親子ってそういうもの。僕もいまとなっては母親とたくさん話す方ではないけど、そこにはたしかに愛情があって、だからこういう日常の切り取り方がいちばんぐっとくる。これを描く監督ってすごいなって思った。この作品は、サチという女性の人生を紐解いていく物語だけど、そこに僕らがどう関わっていけるか、楽しみながら臨めた。

村上 そうだよね。サチを演じる吉田羊さんが、生きることの本質を体現していて、表情や立ち姿からでも観る方には感じるものが多いと思う。見応えは十分。

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穏やかな自然とスタッフだから作れた作品の空気感

いわばタカシはサチの人生における分岐点であり、高橋と三宅は彼女の生きるための道標。彼ら3人の芝居が、作品の軸である吉田羊演じるサチの物語に奥行きを与えている。それぞれの魅力的なキャラクターは彼らが醸成した絆のほかに、ハナレイ・ベイ現地で経験した新しい環境によっても形作られたようだ。

100917-hanalebay-06.jpg役者として長い経歴を持ちながらも、みなにフラットな姿勢で接する村上。撮影時はいたずらっ子のような表情を見せ、シャイな佐藤を巻き込んで場を盛り上げた。

村上 『ハナレイ・ベイ』の現場は、撮影システムが完全にハリウッドスタイルだったんです。製作チームが「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズや『ジュマンジ』、『ジュラシック・パーク』と同じで、ヘアメイクさんも映画でジョニー・デップをメイクしていた方だったそう。

佐藤 え、そうだったの! あれが映画界最高峰のスタッフというものだったのか……。

佐野 そうだよ(笑)。労働時間も決められていて、お昼の休憩を12時と決めたら、時間通りしっかり取る。ちゃんと21時には寝られるようなスケジュール。アメリカ特有のスタイルで、じっくり時間をかけたからこそ描ける部分があったし、僕らも作品に合ったいい空気感が出せたと思う。

村上 役作りをちゃんとやったうえで、魁と遊ぶ時間もドラクエで遊ぶ時間もあったくらい(笑)。玲於ちゃんと同じシーンはなかったけど、現地で会って食事もしてたから空気感の共有はできていた。ふたりとはこの映画で初めて会って、いろいろなものが未知数だったけど、いったいどんな化学反応を示すが楽しみだったんだよね。魁はガチガチに緊張してたけど。

100917-hanalebay-07.jpg役者としての取材に少々緊張気味の表情を見せながらも、発する言葉には迷いがない佐藤。自然体な彼の魅力は本作の役柄にも生かされている。

佐藤 僕は演技も映画も初めてで、虹郎に助けてもらってばかり。撮影中はほとんど一緒にいたから、ずっと虹郎を見てた。バーのシーンで緊張しすぎちゃって、僕ひとりだけいかり肩みたいに肩がぐいっと上がっちゃってて。

佐野・村上 あははは。

佐藤 横のいる虹郎を見たら、肩がストーンって落ちててさ。

村上 そりゃそうだよ(笑)。魁に役作りとお芝居について聞かれたから、逆に「魁にとってサーフィンとは?」って聞いたよね? なんて答えたんだっけ?

佐藤 サーフィンとは、波と一体になること。

村上 そうだよね。その姿勢ってまさに魁の役作りと一緒で、素直でかっこいいなって思った。

佐野 最初は佐藤魁って聞いて、プロサーファーで、テレビ番組の「テラスハウス」出身で、どんなチャラいやつが来るんだと思った。実際会ったら、むしろ俺たちの中でいちばん純真で無垢。

村上 でも僕はそんな魁の純粋で自然な部分に、作品作りや役作りにおいて助けられてたと思う。

佐野 うん、そう思う。

佐藤 ……。

村上 恥ずかしがりすぎて、また肩上がっちゃってる(笑)。

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 『ハナレイ・ベイ』
●脚本・監督・編集/松永大司
●2018年
●97分
●配給/HIGH BROW CINEMA
●公開日/10月19日(金)
©2018「ハナレイ・ベイ」製作委員会
hanaleibay-movie.jp

3人のオフショットを限定公開!

photos : YUSUKE ABE (yard), texte : HISAMOTO CHIKARAISHI

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