画期的なダンス公演についてM・ルグリにインタビュー。

インタビュー

伝説のエトワールであるマニュエル・ルグリが再び舞台に立ち、かつオルガ・スミルノワ、セミョーン・チュージン、そしてシルヴィア・アッツォーニという、彼が信頼を寄せる3名のダンサーとともに繰り広げる『Stars in Blue』。バイオリニストの三浦文彰、ピアニストの田村響という素晴らしい音楽家がバレエ作品を演奏するだけでなく、独演、共演も行うという極上のダンスコンサートである。

休憩を含め約2時間の公演のプログラムは、新作も含めたとても意欲的なものだ。3月8日(金)から始まるこのバレエと音楽の饗宴を前に、ウィーン国立バレエ団の芸術監督として多忙なマニュエルがこの公演について語ってくれた。

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マニュエル・ルグリ © Ashley-Taylor

世界初演、“接触しないパ・ド・ドゥ”とは。

——すべてが興味深いプログラムですが、パトリック・ド・バナがあなたとオルガ・スミルノワのために創作する新作『OCHIBA〜When leaves are falling』がとても気になります。世代も文化的背景も異なるふたりのダンサーの初共演ですね。アレッサンドロ・バリッコが書き、映画化もされた小説『絹』がパ・ド・ドゥの発想源だと聞きました*

パトリックが贈ってくれて、僕はこの本を知りました。今回の『Stars in Blue』のプロジェクトを立ち上げた時、この作品はオルガと僕のふたりのためのクリエイションにとても理想的な物語だ、という思いがパトリックの頭に浮かんだのです。

このパ・ド・ドゥの振付について、僕からパトリックに何か希望を出すということはしていません。というのも、僕は自分の立場、つまり踊り手であることに徹していたいので。もちろん彼とは意見を交換したり、話し合ったりということはしますよ。でも最終的な決定はすべてパトリックによるものです。動きについて確かに言えるのは、これは20代のダンサーのための作品ではないので、すごいテクニックを見せるというものにはなりません。僕がダンサーとしての成熟を快適に感じながら踊ることのできる作品となるはずです。

*物語の舞台は19世紀。美しい絹を紡ぐための蚕の卵を母国に持ち帰るために、ひとりのフランス人が日本に到着する。出会った武将の膝下に横たわる若い女性に、彼は恋をしてしまう。彼は何度も旅を繰り返すものの、ふたりは言葉を交わすこともなく、触れあうこともなく、感情の交換もなく……。

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リハーサル中のマニュエル・ルグリ。© Ashley Taylor

——この物語に描かれる“沈黙の愛”の衝動的なエモーション。パトリックは、そこからふたりのダンサーが接触しないパ・ド・ドゥの創作を思いついたそうですね。

身体的にまったく接触がない、というのはこの本の中心となっているアイデアです。それが、この小説において素晴らしい点なのです! でも、まだ創作をスタートしたばかりの段階なので、具体的にどんなものとなるかはこれからです。

音楽の選曲もパトリックに任せています。僕は彼に100パーセントの信頼を置いていますから。このパ・ド・ドゥでは、フィリップ・グラスの音楽が使われます。彼の音楽には同じ旋律の繰り返しがあって、それは虜になった女性に会うために何度も旅を繰り返す主人公にこれ以上ないほどふさわしいものですね。

——この作品のパートナーであるオルガ・スミルノワとはどのように出会ったのでしょうか。

僕はずっと彼女のキャリアを、興味を持って追っていました。彼女は並外れたダンサーで、世界のバレエファンの関心を引き、そして大成功に価するダンサーです。この2年間、ウィーン国立バレエ団に定期的に招待しているのですが、バレエ団のレパートリーの大作を光輝くように踊り、コレオグラファーたちを魅了しています。今回の『OCHIBA〜』では、ほかの場合もそうですが、観る人の心に刻み込まれるような瞬間を彼女と経験し、真の感動を彼女と分かち合いたいと願っています。

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マニュエル・ルグリ(左)とオルガ・スミルノワ(右)。今回の公演が世界初共演となることにも注目が集まる。© Ashley Taylor

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いつも音楽にインスパイアされ続けてきた。

——音楽は私の生命力、と語っていらっしゃいます。音楽との関係をお話しください。

キャリアにおいて常に僕をインスパイアし続けたのが、音楽なのです。そして、僕にダンサーとして表現させてくれたのも音楽です。小さな頃からいつも音楽を聴いていて、どんなジャンルの音楽にも合わせて踊っていました。オーケストラが奏でる力強さにも、また楽器そのものの音色にも僕は感動を覚えます。

舞台上での音楽との思い出ですか? それは語りきれないほどありますね。チェロだけの演奏に合わせて踊るジェローム・ロビンスの『A Suite of Dances』や、ピアノだけの演奏の『アザー・ダンシーズ』『ダンシーズ・アット・ザ・ギャザリング』を踊るのが、とても好きでした。ステージの上で楽器と共演し、親密な時間を過ごすのはとても素晴らしく、ときには観客がいることを忘れてしまうほどなんですよ。僕がとりわけ好む楽器はピアノです。毎朝、クラスレッスンで日常的に僕のお供をしてくれるのもピアノですし、リハーサルで1日中僕をフォローしているのもこの楽器です。

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リハーサルの空間には常にピアノが存在している。© Ashley Taylor

——公演に参加するダンサーはどのように選ばれたのですか。

温かみを感じられる公演にしたい、という希望がプロデュサーからありました。プログラムに組む可能性のありそうな演目、そして僕が参加してほしいと思うダンサーについて相談をして……ダンサーは速やかに決定しましたね。セミョーンはクラシック作品においてパーフェクトなダンサーです。さらにコンテンポラリー作品においても卓越しているという彼のクオリティを、僕は高く評価しています。彼のダンスから放たれるエレガンスも好きですね。彼を含め、ダンサーたちはみなダンスという芸術に対して、すごい情熱と多大なるリスペクトを共有しています。

——若いダンサーと舞台をともにすることに、どんな意味がありますか

パリ・オペラ座は42歳が定年です。その後、何をするかは自由ですし、何もかも可能なのです。各自のチョイス、各自の望み……僕はカンパニーのディレクターというのが自分の居場所である、といま感じています。ウィーン国立バレエ団のための『海賊』『シルヴィア』の振付は、楽しめる仕事でした。ダンサーとしてステージで踊るとき、僕は可能なかぎり舞台を満喫しました。だからある時、何の問題もなく終えられる、と思っています。いまだに舞台で踊ることができ、そしてこの公演を自分とは異なる世代のダンサーとともにできる。これは素晴らしい贈り物ですね。

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『Stars in Blue』でも上演される『Moment』より。今回はウィーン国立バレエ団専属ピアニストである滝澤志野が演奏予定だ。© Hidemi Seto

——『Stars in Blue』はどのような舞台になりそうでしょうか。

僕は音楽は生演奏を常に最優先しています。でも会場の作りや、そのほかの理由で生の音楽を使えずに録音の音源を使わざるを得ないこともあります。今回はコンサートホールが会場で、ふたりの奏者がいるので、美しい舞台になるに違いありません。公演のプログラム内容は、ピアノとバイオリンによる伴奏ということから導かれたチョイスです。

ダンスコンサートと謳うこの公演では、ダンサーと楽器奏者がそれぞれ腕前を披露し、そして両者のハーモニーをお見せします。こうした形態の公演は観客層を広げる役割もあるでしょう。音楽を聴きに来る人はダンスを見出し、ダンスを観に来る人は音楽を……というように。ダンスと音楽だけで構成され、うわべだけの華やかさを排除した公演を披露するということは、とても興味深い経験となります。ダンスと音楽の魂というエッセンシャルなことに集中せざるを得ませんから、そこにはとてもピュアな何かが生まれるはずです。

Manuel Legris
ウィーン国立バレエ団芸術監督/元パリ・オペラ座エトワール。パリで生まれ、パリ・オペラ座のバレエ学校で学んだ後、1980年にパリ・オペラ座バレエに入団。86年にエトワールに任命される。世界有数のバレエ団にもゲスト出演し、また自身のプロデュースによる公演も開催。2009年5月にパリ・オペラ座バレエを退団。10年9月より現職。芸術文化勲章(93年シュヴァリエ、98年オフィシエ)、国家勲章(02年)、レジオンドヌール勲章(06年)、芸術文化勲章コマンドゥール(09年)など受賞歴多数。
『Stars in Blue』
〈東京公演〉
日時:3月8日(金)19 :00開演、9日(土)14:00開演
会場:東京芸術劇場コンサートホール
東京都豊島区西池袋1-8-1
料金:SS席¥13,000、S席¥11,000、A席¥8,000、B席¥6,000、C席¥4,000、D席¥3,000
● 問い合わせ先:東京芸術劇場ボックスオフィス
Tel. 0570-010-296
http://danceconcert.jp
http://geigeki.jp/


〈大阪公演〉
日時:3月11日(月)19 :00開演
会場:
ザ・シンフォニーホール
大阪府大阪市北区大淀南2-3-3
料金:SS席¥16,000、S席¥12,000、A席¥8,000
● 問い合わせ先:キョードーインフォメーション
Tel. 0570-200-888

www.symphonyhall.jp


宮崎公演
日時:3月14日(木)19 :00開演
会場:
メディキット県民文化センター(宮崎県立芸術劇場)演劇ホール
宮崎県
宮崎市船塚3-210
料金:S席¥8,000、A席¥6,000、B席¥4,000
● 問い合わせ先:メディキット県民文化センターチケットセンター
Tel. 0985-28-7766
www.miyazaki-ac.jp


愛知公演
日時:3月17日(日)15 :00開演
会場:
愛知県芸術劇場コンサートホール
愛知県名古屋市東区東桜1-13-2

料金:プレミアムシート¥14,000、S席¥11,000、A席¥8,000、B席¥6,000、C席¥4,000
● 問い合わせ先:愛知県芸術劇場
Tel. 052-971-5609
www.aac.pref.aichi.jp

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réalisation:MARIKO OMURA

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