犬山紙子がいま思うこと

【犬山紙子】ストレスは友人にもできる

犬山紙子がいま思うこと

文:犬山紙子

一つ白状すると人に会わなくなり、メンタルの調子が良くなった。これまでのしんどさが100だとすると、今は5くらいだ。朝動悸とともに起きることもなければ、夕暮れに憂鬱な気持ちが襲い掛かることもない、子供とずっと一緒で罪悪感で余裕をなくすこともない。
ああ、これまでそれくらい人間が人間と接することでストレスを抱え、ストレスを与えていたんだろうと思う。収入は減っているのに……。
夫と子供との関係性が良好かどうかもあるけれど、家の中でストレスをあまり感じない今、他からかかるストレスの量をそこそこコントロールできる状況であり、とても楽だ。多分疲れ果てていた私にとって、メンタルケアという意味では皮肉なことに今は必要な期間だったんだろう。

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©KAMIKO INUYAMA

でも、このままずっとストレスのない暮らしは求めていない。きっとこのままの暮らしが続くとぬるっとした停滞にだいぶ時間が経った後に気がついて、後悔するのが目に見えてる。このぬるっとした停滞から、みずみずしく熟す日々に変えるには、仕事だけじゃなく、人と会って予想外の会話や事態に巻き込まれたり、目で、耳で、鼻で自然や文化に触れて感情が動かされること、そういったことがどう考えても必要で、すでに「個性豊かな知性らに出会いたい」「自分の解釈をぶん殴ってくる美に触れたい」と心はそわそわしている。

今は私にとって日々どの程度の摩擦が理想なのか、それを考える時なのかもしれない。

そういえば、ストレスについて忘れていたことがあった。ストレス=悪者ではなく、友人にもできるという考えだ。

健康心理学者ケリー・マクゴニガルの著書『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』に書いてあったのです。(タイトルの感じで遠のけてしまうと非常に損というか、ストレスの捉え方についてエビデンスに基づき丁寧に解説された超良書です)(内容自体はTEDでも話しているので興味があればこちらをぜひ)

アメリカで3万人の成人を8年間追跡調査した結果、前年にひどいストレスを経験した人たちは死亡するリスクが43%高くなるということ、しかしこれは「ストレスが健康に害を及ぼす」と信じていた人たちだけに言えることだということ。
ひどいストレスを経験してもストレスが無害だと思う人たちの死亡リスクは上がるどころか、ストレスが殆どなかったグループと比較しても研究参加者の中で最も低かった、とのこと。
要するに「ストレスが体に悪いと『信じていた』ことによって、死期が早まる」という結論になったそうです。
さらには「コミュニティや近所の人、友人を助けるためにどれ位時間を費やしたか」という質問結果と照らし合わせると、他の人への思いやりに時間を費やした人々には、ストレスから来る死亡の増加はなかったということもわかったと。

※これはなんでも気持ち次第で乗り越えられる!という話ではなく、ストレスにはこう付き合っていこうという話。虐待やハラスメントなど、過度なストレスは受けない方が良いに決まっています。でも、回復策は世の中にあるよ、研究されているよという。

なぜこんな大事なことをスコーンと忘れてしまっていたのか……まあ大事な時に思い出せたからよしとします。

ストレスの感じ方は人それぞれ。私はたまたま疲れ果てていたところへの休息的な展開だったけど、家族とずっと一緒にいなきゃいけないことや、1日にやらなきゃいけないことが増えてしまったこと、将来の不安でストレスをものすごく感じている人も多いはず。合言葉は「知恵とケアとサボり」でこの非日常をやり過ごせたらな、と思うのです。

ああ、美術館に行ったり、美味しいコーヒーを飲みにでかけたり、バラを心ゆくまで堪能したり、大好きな友人に会いたい。
 

犬山紙子

イラストレーター、エッセイスト。1981年、大阪府生まれ。2011年『負け美女 ルックスが仇になる』(マガジンハウス刊)にてデビュー。

日本テレビの「スッキリ」をはじめ、コメンテーターとしても活躍。2017年に1月に長女を出産。

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