Music Sketch

女性によるインスト・ファンク・バンドBimBamBoomの構築力と突破力

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女性だけのインストのファンク・バンドというと、美しい音色を奏でるファッショナブルなイメージを持たれそうだが、BimBamBoomは想像を遥かに超える異分子たちの集合体だ。ギターとベースはロック出身、サックスはゴスペルとファンク、キーボードはソウル・ミュージックやR&B出身で、それぞれ対する音楽はほとんど聴いてこなかったという間柄。バンドを結成したリーダーであるドラムは、百戦錬磨のキャリアを誇り、ファンクもブラック・ミュージックもロックもこよなく愛する山口美代子。その強靭なプレイが起爆剤となり、5人が互いの刺激に共鳴しながら、構築力と突破力が共存した、かつてない音楽を生み出している。

昨年発表したデビューアルバムでの取材に続き、
https://madamefigaro.jp/culture/series/music-sketch/-5bimbamboom.html今回は2枚目のアルバム『Shinzo BakuBaku』の発表時に5人全員に取材した。

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(写真左から)山口美代子(Dr),岡愛子(Gt),前田サラ(Sax),田中歩(Key),Maryne(Ba)。

■合宿やライヴを経た曲を、熟した状態でレコーディング

今回はアルバム制作に向けて合宿を行い、ライヴで全曲演奏してからレコーディングしたそうですね。ライヴ感満載でカッコイイ曲ばかりです。

山口美代子(以下YM):ありがとうございます。最初は曲作り合宿の予定だったんですけど、既に曲が結構あったのでアレンジ用の合宿になり、そこで自分たちのサウンドをまとめていけたのが大きかったですね。

最初にまとまった曲は?

YM:「Shinzo BakuBaku Ochokochoi」。去年の今頃からライヴでやってたのでブラッシュアップして。

今回はどの楽器の音もいいですよね。スネアドラムの硬さも好きです。

YM:みんな音にもこだわっているし、特にギターは一番時間が掛かりましたね。ドラムは曲によって叩き方がちょっと変わるくらいで、ドラムセットはほぼ変えていない。今は「これがBimBamBoomの山口美代子の音です」って代名詞になるといいかなと。

「Shinzo BakuBaku Ochokochoi」

「Batan-Q」は聴きごたえがあるけど、難しい曲ですね。

岡愛子(以下OA):難しいです。でも作曲して下さったGYOさん(多田暁)が、私たちがライヴを始めたばかりの時に見に来て、その時に「ファンクというより、愛子ちゃんらしくやってほしい」みたいなことを言って下さったのをきかっけに、自分らしく音を歪ませたりして出来上がった気がします。

カッティングで入るタイミングとかすごく難しそう。

OA:難しいんですよ〜。

普通に聞いているとバランスが良くて楽しいけど、きちんと聴くとアンサンブルに凝っていて、ギターが相当難しい。タイミングもあるし、音の変化もあるし。

YM:アレンジにも一番時間がかかった曲ですね。

鍵盤はオルガンがメインですが、「Keeping It Hustle」では生ピアノを弾いていますね。

田中歩(以下TA):そうですね、前のアルバムと同様に1曲だけ変えています。

ユニゾンもいろんな楽器の組み合わせで展開されるし、どの曲でも各楽器のソロの応酬があって、インストバンドならではの楽しさに溢れていますよね。ただ、短い曲の中で各ソロを繋げていくのは悩みませんか?

TA:自分どうこうより、結構周りの演奏を聴いて、そこに合うフレーズを考えています。例えば「JankenGoo」はソロがギターとキーボードとサックスと、連続であるんです。なので音の使い方とか雰囲気を合わせてしまうと全体がゆったりなソロになりがちなので、そこは変えようと出だしのフレーズとか考えたりしました。

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リーダーの山口美代子は、現在はPUFFYをはじめ、多くのサポートを請け負っている。photo: 木村泰之 

その「JankenGoo」は合宿から生まれたオリジナル曲ですよね。マリーヌさんの名前が作曲クレジットにありますが。

Maryne(以下M):曲作りのためにセッションを繰り返していた時に、美代ちゃんに「こういうリズムがいいな」というイメージがあって、サラちゃんが印象的なフレーズを吹いたりしていたんですね。そこから、それぞれセッションした曲をみんなが持ち帰ってまとめるようにした時に、たまたまこの曲の担当が私だったんです。これまでは提供してもらった曲がほとんどでしたが、今回は提供していただいた曲も自分たちで何とかしようとみんなで曲に向き合えた合宿だったので成果がありましたね。

全体の流れもいいですよね。あと今回もカバーのメドレーがあります。

YM:バンドを結成して最初にミーターズをカバーしたんですけど、このバーケイズのメドレーもその次の次の次くらいにはやってました。今回のアルバムがロック色もバンドっぽさも強くなったので、バーケイズは浮くかなと思ったんですけど、でもルーツ的な意味も込めて今入れておかないと、と思って。

■毎月開催の自主企画イベントでパフォーマンスに磨きが

今年は5月から下北沢にあるライヴハウスSHELTERで、自主企画「Tokyo Special Sauce」を毎月やってきたので、パフォーマーとしてのポテンシャルがどんどん引き出されていますね。

YM:そう言ってもらえたら嬉しいです。レコーディングは3月に全部終わったので、ライヴでさらに曲をブラッシュアップしているところですね。一番変わったのはテンポ感かな。

OA:SHELTERの企画を通すことで、バンド感が増しました。毎月自分たちの企画があることで、より“自分たちのバンドだなぁ”という気持ちが深まって、それが演奏にも出てきたのではないかと思います。自分的には前のバンド(BAND A)の時から馴染みのあるライヴハウスなので、白と黒のチェックの床を見るだけでテンションが上がる(笑)。

前田サラ(以下MS):毎月あると、次の課題が見えてくるのもいいですね。最初の方の課題は、インストでライヴをやると(時間制限のない)Xタイムがあって自分でソロの流れを決められるけど、BimBamBoomはソロの小節がかっちり決まってて、それがバンドらしいと思うんだけど、“その中でストーリー感をどう出していくか”というのが課題。今は回数を重ねるごとにソロとは違った楽しさが増している感覚がありますね。

「Pikaichi」

M:イベントに自分たちの冠をつけている以上、ステージ上でもステージを降りても“ズバ抜けてないと”という意識が強くなりました。今までやってきたライヴは自分たちのワンマンにゲストを呼ぶスタイルが主だったから、この企画で毎月対バンとして他のバンドを迎えることで、メンバーのステージに対する意気込みも違うし、自分もそれに負けたくない、毎回何かを残したいという気持ちが強くなっています。

YM:SHELTERという会場の空気もあるんでしょうが、よりアグレッシヴにロックモードが強くなった。決められた短い時間内でバンドとしてのインパクトをつける力が上がったのも成果ですね。

■個性の強い演奏のぶつかり合いが、互いの魅力を引き出す

その中でもギターは特に我が道を行く感じですよね。自分でリミットは決めてるの?

OA:それは課題です(笑)。決まってないです。決めるつもりもないけど。

パンク色を一番放っているし。

OA:それはあるけど、ファンク色とかブラック・ミュージックのノリが完全に自分の体に入っていなくて、メンバーと同じレベルに達していないので、ファンクのノリとかも両方身に付けていきたいですね。

ファンクのどの辺りが面白くなってきました?

OA:このバンドを始めて、いろんなファンク・バンドがあるということを学び、意外にギタリストによってカッティングのやり方が違うとか、(メインの演奏の)後ろで地味にヘンなことをしていることが結構あるんですよ。なので、ファンクのギターは個性があって面白いと気づいた。

「Lowrider」

歩さんはロックと縁がなかったので、愛子さんのプレイに驚くことも多いのでは?

TA:全然自分と違うので、ギターだからっていうか、正直いつも愛子ちゃんだからカッコイイと思っています。それが何かと言うと、例えば(その時のライヴ時間の)50分を突破していく力というか、ただ上手い人とは違う、ただ上手い人が集まっても面白いサウンドは生まれないと思うんです。こう混じってやっているからこそ、そこにしか生まれないサウンドがあるんだと思う。聞いてても演奏しててもすごい楽しいです。

逆にロック系の人から感じることは?

OA:リズム感はいつも皆さんに学ばせていただいて、“なんでその音選びになるんだ”、“綺麗すぎない泥臭い音がなんで一発で出るんだ”というのが美代さんにもMaryneにもある。グルーヴも細かく言えば1人1人にあるんですけど、例えばサラちゃんは8小節の演奏が毎回スタジオでは違って“なんでその音符とそのリズムが出てくるんだ”っていう。ドラムでも思いますし。みんなすごくて“いいな”って思います。

Maryneさんは、最初は“歌のない音楽”をやるのに慣れていなかったと話してましたよね。

M:もうずっと刺激ばっかりで。歩さんとサラちゃんは“ヤバイ20代だな”と思って見ていますね。ファンクはそこそこスキルがないと人前でできないし、ずっと体に入ってないとダメとすごく思うのに、2人はやってきたことを吸収している上に自分自身を(音楽に)出している、歩さんに関してはとても先輩のキーボード奏者に“なんでそういう音のポケット、空間を出せるの?”って言われたりしているし。他のサックスや鍵盤奏者でもこの2人ほどグッとこないというか、何でも相談できる、信頼もしてますね。

■インストながら、ユニークな言葉の掛け声も楽しんで

ライヴで演奏していて、思わずギアチェンジしてしまうお気に入りのフレーズがあれば教えてください。

OA:「Keeping It Hustle」のサックスや鍵盤のソロの前の、ギターのカッティングの時にギアチェンジ入ります。“ツッターツター、ツッターツター”ってやるんですけど、あの瞬間に“ギタリストしてる!”って自分がハッとするんです(笑)。

TA:ライヴの時だけカウベルを叩いているんですけど、「Lowrider」の最初の1拍がいつも結構ドキドキしてる。

MS:「Tiger Roll」の最後のソロの出だしのフレーズは、なんかスイッチが入ります。

「Tiger Roll」

M:「Lowrider」のソロ。美代ちゃんがぶっ放した後に愛子が出したフレーズに微妙にサラちゃんが絡んで、その後でワァ〜!!!って、すごいテンションが上がる。

「Lowrider」はメロディをサックスではなくシンセで出している抑え感もいいと思っていて。あれがサックスで入っていたら強いので後半の盛り上がりに行きづらいけど、このギャップからのダイナミズムが痛快で。

TA:あそこだけ平坦ですよね。自分のところですが。

YM:一番入るのは「Shinzo BakuBaku Ochokochoi」のイントロ。ライヴだとカウントから入るけど、あの時の体重の乗せ方とか自分でも異常になっているというか。

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メンバー5人に考えてもらったBimBamBoomのキャッチフレーズ

最新アルバムの中で、特に気に入っている曲はどれですか?

OI:「Shinzo BakuBaku Ochokochoi」。歌ってる言葉ですかね。

TA:「Batan-Q」。言ってる言葉が。

MS:「Lowrider」。カバーながらバンドらしさが出せたから良かったなと。聴いていてカッコイイとも思えるし。

M:「JankenGoo」か「Lowrider」。どっちとも自分たちでメチャこねくり回したことで良くなったし、「JankenGoo」の歌詞は面白いし。

YM:アレンジで思い入れがあるのは、ライブを意識して初めてアレンジできた「Lowrider」。叩く時に、“来たーッ!!!”て思ったのは「Shinzo BakuBaku Ochokochoi」ですかね。“カッケー!!!”って思った。

私は細かい感想を言い出したらキリがないですが、ライヴでは「Keeping It Hustle」のサラちゃんのメインのフレーズが流れて来ただけでテンション上がりますね(笑)。では12月のワンマンに向けて頑張ってください。

全員:どうもありがとうございました。

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2枚目のアルバム『Shinzo BakuBaku』。オリジナル曲の他に、ファットバック・バンドやバーケイズの往年のヒット曲のアレンジもユニークだ。

10/27(金)より2nd Album Release Tourをスタート。
BimBamBoomの情報はコチラ→http://bimbamboom.tokyo/

*To Be Continued

伊藤なつみ Natsumi Itoh

音楽ジャーナリスト/編集者

『フィガロジャポン』やモード誌などで取材、対談、原稿執筆、編集を担当。CD解説原稿や、選曲・番組構成、イベントや音楽プロデュース等も。これまでデヴィッド・ボウイ、マドンナ、ビョーク、レディオヘッド等、国内外のアーティストに多数取材。2018年より日本ポピュラー音楽学会会員。
ブログ:MUSIC DIARY 24/7
Twitter:@natsumiitoh
Spotifyプレイリスト:MUSIC SKETCH

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