Music Sketch

2020年の傑作!デュア・リパ『フューチャー・ノスタルジア』

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2020年にいちばん聴いたアルバムは、ダントツでデュア・リパの『フューチャー・ノスタルジア』だ。アルバムタイトルが象徴しているように、70年代のソウル・ミュージックやファンク・ミュージックを根底にしつつ、ノスタルジアの基本は80年代のエレクトロ・ポップや90年代のクラブ・ミュージック。そしてそこに、最先端を行くエレクトロなテイストを加味したノリノリの楽曲を満載している。

その絶妙なセンスには、プロデューサー陣に、マドンナやペット・ショップ・ボーイズ、カイリー・ミノーグなどの楽曲で有名なスチュワート・プライスが参加していることも起因している。ほかにもアルバム中の曲「ブレイク・マイ・ハート」にインエクセスの「ニード・ユー・トゥナイト」の有名なベースラインが使われているなど、隠し味もあちこちに。どこか懐かしさを覚えつつも、斬新な感性で気持ちをアゲてくれる一枚で、今年2月のリリースとあって、ステイホームの最中、このアルバムで踊りまくり、運動不足解消にも欠かせない一枚にもなっていた。

ステイホーム中の気持ちをアゲてくれる音楽が満載。

なかでもいちばんのお気に入りは、「ハルシネイト」。わかりやすいベタなナンバーで、お立ち台があった時代だったら、羽根扇子を振りながら踊っても似合いそうなナンバーだ(私はやらないけど)。3分半の短い曲ながら、ウィットに富んだベースラインとエレクトロなサウンドとともに、徐々に気持ちをアゲていくアッパー・チューン。サビ前のタメも効いているし、口ずさみやすいサビもノセてくれる。さらに途中でブレイクを入れつつ、再度アゲていくところは、みんなで踊ったら絶対に楽しそう。その後発表されたミュージックビデオのも世界観も曲のテンションにピッタリで、何人もの女友達にLINEでこの動画のリンクを送ったほど。一度聴き始めると、繰り返し20回は聴いていたと思う。

とはいえ、2020年のデュア・リパの大ヒット曲といえば「ドント・スタート・ナウ」。ミュージックビデオでは彼女の魅力全開で、楽曲でのベースラインやその音使いをはじめ、ひとつひとつのサウンドの凝りようもおもしろみたっぷり。

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星野源も参加、ノンストップで踊れる『クラブ・フューチャー・ノスタルジア』

このアルバム『フューチャー・ノスタルジア』は全曲シングルカットしてもおかしくない名曲揃いのアルバムで、デュア・リパはこのコロナ禍の間に、次々とリミックス曲と合わせてシングルカット。しまいに8月には『クラブ・フューチャー・ノスタルジア』というリミックス・アルバムを配信でリリースした。こちらにはマドンナ、ミッシー・エリオット、グウェン・ステファニーやブラックピンクという豪華な顔ぶれが集い、マーク・ロンソンや星野源もリミックスで参加している。

『クラブ・フューチャー・ノスタルジア』は、過去の名曲のおいしいどころ取りもあり、「グッド・イン・ベッド(ザック・ウィットネス&ゲン・ホシノ・リミックス)」にはネナ・チェリーの大ヒット曲「バッファロー・スタンス」が、マドンナ・テイスト満載の「ブレイク・マイ・ハート」にはディミトリ・フロム・パリのリミックスによるジャミロクワイの「コズミック・ガール」が投入されるという贅沢さ。シカゴのハウスミュージックの先駆者である御大ミスター・フィンガーズまで参加していて、彼のリミックス「ハルシネイト」は、バーバラ・メイソンの「アナザー・マン」をベースに、グウェン・ステファニーの「ホラバック・ガール」をサンプリングしている。

この11月末についに『クラブ・フューチャー・ノスタルジア』は、2枚組として発売されたCD『フューチャー・ノスタルジア (ボーナス・エディション)』に収録されたので、ブックレットに掲載されたクレジットを見ながらサンプリングの答え合わせをしていた。個人的にはカウベルが鳴るたびにシャノンの1984年のヒット曲「レット・ザ・ミュージック・プレイ」も思い浮かべていたのだけど、このアルバムには使われていない様子。このようにこのリミックス・アルバムを聴いているだけで、自分の好きな音楽へとインスパイアされ、ついつい以前聴き込んだ曲をあらためて聴き直したりしてしまう。それくらい楽しみの多い傑作アルバムになっている。

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第63回グラミー賞に6部門ノミネート!

デュア・リパは、先日発表された第63回グラミー賞のノミネートで、「ドント・スタート・ナウ」が最優秀レコード賞と最優秀楽曲賞、最優秀ポップ・ソロ・パフォーマンス賞、『フューチャー・ノスタルジア』が最優秀アルバム賞、最優秀ポップ・ボーカル・アルバム賞に選ばれるなど、主要3部門を含む全6部門で名前があがった。第61回グラミー賞では最優秀新人賞 など2部門を受賞しているが、今回2作目となる『フューチャー・ノスタルジア』で大躍進となり、いくつ受賞するか楽しみだ。というのも、彼女はイギリス出身ながら、このアルバムはアメリカでの評価もとても高いからである。

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コソボ出身の両親の下、1995年8月22日にロンドンで誕生したデュア・リパ。12歳の時に両親と一緒に故郷へ帰ったものの、15歳で単身ロンドンへ戻り、父親がロック・シンガーだったという影響から、デビューへ向けて音楽の勉強に勤しむようになる。シンガー・ソングライターの道を進みながら、モデルも務め、2017年6月にデビュー・アルバム『デュア・リパ』を発表。そして「ニュー・ルールズ」で大ブレイクした。好感度の高いピュアでチャーミングな性格に加え、正義感の強い発言からも幅広い人気を集めている、いまやミレニアル世代を代表するポップ・アイコンのひとりだ。デビュー時から大好きで応援してきたが、早くコロナが収束して、また日本でもライブを見せてほしいと願っている。

201214-dua_album.jpg『フューチャー・ノスタルジア (ボーナス・エディション)』ワーナーミュージック ¥3,190。『フューチャー・ノスタルジア』にリミックス・アルバム『クラブ・フューチャー・ノスタルジア』が加わった2枚組。

*To Be Continued

伊藤なつみ

音楽&映画ジャーナリスト/編集者
これまで『フィガロジャポン』やモード誌などで取材、対談、原稿執筆、書籍の編集を担当。CD解説原稿や、選曲・番組構成、イベントや音楽プロデュースなども。また、デヴィッド・ボウイ、マドンナ、ビョーク、レディオヘッドはじめ、国内外のアーティストに多数取材。日本ポピュラー音楽学会会員。
ブログ:MUSIC DIARY 24/7
連載:Music Sketch
Twitter:@natsumiitoh

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