
JET インタビュー
Music Sketch
8月19日に発売されてから、そして9月に入ってもずっとCDショップの店頭の目立つところに置かれ続けている、JETの3枚目となるニュー・アルバム『シャカ・ロック』。昨日偶然TVで見た、水嶋ヒロさんが出演しているCMで新曲「シーズ・ア・ジーニアス」が流れていて、やはりカッコイイと思ってしまいました。
私がニュー・アルバムの音を聴いたのは、長い梅雨が終わり、夏の暑さが増してきた頃。それからは元気が欲しい時、特に外出の準備をしている時は、必ずといって『シャカ・ロック』をかけていました。70年代に通じるどっしり構えた直球型のロックながら、ガラージ・ロック的な荒々しさ、もちろんキーボードや、コンピュータを駆使した新局面の作品もあり、全く飽きることがありません。ところどころに、STARZなど、昔のロック・サウンドを想起させるアンプ直結かつ爆音から生まれるディストーション・サウンドも快感です。
フジロック直後に彼らにインタヴューしたので、その時の様子を紹介しますね。7月25日(土)にフジロック・フェスティバル09出演し、翌日には韓国で行われたフェスに出演、翌27日には日本に戻ってTV出演......と超多忙だったせいか、残念ながら取材日の28日にはクリスはダウンして欠席でした。
左から、眠そうなニック、A社に勤めるM氏にそっくりなキャメロン、ボクシングをするようになってカッコよくなったマーク。クリスは欠席。
2003年にデビュー・アルバム『GET BORN』を発表した時は、"オーストラリア版オアシス"と評されたことがあったほど、ニック&クリス・セスター兄弟を中心とした4人組は世界的に注目され、アルバムも全世界で350万枚の大ヒット。翌年3月にFIGARO japonでも取材しましたが(この時は全員恋人同伴来日!)、「6歳の頃から60年代、70年代の音楽に惹かれてきたのさ」(ニック)、「ヒッピーは嫌いだし、ラヴ&ピースといった時代に憧れているんじゃない。ただハッピーでポジティヴな音楽が好きなのさ。好き好んで重苦しいロックは聴かないだろう?」(キャメロン)と話していたのが印象的でした。しかし04年にセスター兄弟の父親が亡くなったこともあって2作目『SHINE ON』(2006年)は内省的な面が強調されたためか、前作ほどは評価を得ず、2007年2月には日本武道館公演を大成功させたものの、ワールドツアーを終えた2007年末からはしばらく活動休止していました。
一時期は解散か!?という局面に達していた4人ですが、現在イタリアに住むセスター兄弟、イギリスに住むキャメロン、そしてメルボルンに住むマークが再会し、ニュー・アルバムの制作がスタート。イギー・ポップと共演した「Wild One」のレコーディングで過ごしたマイアミのムードがあまりにも良かったことから、マイアミで作業を始め、そこからブルックリン~ニューヨーク~オースティン~故郷メルボルンと転々としながら3作目『シャカ・ロック』を完成させました。そして、常に客観的な視点を持ちつつ制作した本作は、実に濃厚な内容のロック・アルバムに仕上がったわけです。
「このアルバムが、今までの作品と違うのは、4人が曲作りに貢献していること。とにかく制作は大変だったけど、このバンドは民主的に多数決で決めていくし、いいバランスで仕上がったと思うよ」(ニック)
レコード会社から提供されたアーティスト写真。4人ともそれぞれ人気があります。
チャレンジは随所に見られます。たとえばピアノから始まる「ウォーク」。
「実はあの曲は、僕とクリスがそれぞれ書いた2曲を組み合わせたんだ。リズムが行き交う感じで、うまくつながっているのかつながっていないのかわからない感じがこの曲の面白味でもあったんだけど、最終的に仕上げるのが難しかった。あとはコンピュータで再現する段階も難しくて、みんなで議論して、ミックスも5回やった。でも、バンドとしては今までない音になったので満足しているよ」(キャメロン)
この歌では、歌詞に"wherewithal"といった古語を使って、古い言い回しににしているのも興味深いです。そして、"虚栄の部分に別れを告げる"という意味で、"ハリウッド"という言葉をメタファーとして使った「グッバイ・ハリウッド」や、自分たちの今の心情を歌った「レット・ミー・アウト」、"物事の本質的なことをいつも考えがちだ"というニックが書いた「ラ・ディ・ダ」など、力強いサウンドにふさわしく、真摯な気持ちがロックにぶつけられています。
「曲によって、歌詞の辿り着き方が違う。場合によっては最初にできあがっている。もしくは一番最後にできる。ただ、大事にしているのは音と言葉がうまく合っているかを探すことなんだ。だから、音楽をよく聴いて、どんなフィーリングかな?と探るんだ」(キャメロン)
とにかく、クセになるようなグルーヴ感と言葉のノリの見事なマッチングで、1曲目から一気にグイグイ引きこまれてしまうほど。もちろん、前述のように歌詞に対するこだわりも強く、「ビート・オン・リピート」では、オーストラリア風の訛り方や話し方を取り入れて、ユーモアな作風にしたそう。そして歌詞が変わったことからサウンドも変化し、本来ストレートだったロックを、マークのベースが腰を振って踊れるような横揺れスイングのグルーヴに変え、ニックもギターのリフを加えて、みんなのアイディアでどんどん曲が膨らんでいった、と話してくれました。
「歌詞は、ものすごくバタバタした中で、苦労した挙句にやっとできることもある。朝の5時までスタジオで考えて、それでも未だ良い考えが思い付かなかくて、外にコーヒーを飲みに行ってから戻って、また続きをやったりもするからね。歌詞を書くのって、すごく変わっている体験なんだ。ただ、すごく時間と能力をかけて努力する。フレッシュにするためには、たとえば雑誌に出てくる言葉を全部切り取って、目の前に置いて、パズルみたいにその中から新しいインスピレーションを受けたりして、僕たち自身を常に刺激しようとしているんだ」(キャメロン)
アルバム・タイトルの『シャカ・ロック』の意味も説明してくれました。
「"シャカ"は戦闘好きなズールー族の初代国王の名前であり、シャカにはズールー語で"私生児"という意味がある。だから、"シャカ・ロック"とすることで、骨太いアティチュード感じさせる言葉になるし、"私生児ロック"というのもカッコイイんじゃないかと思ったんだ」(ニック)
さて、今発売中のFIGARO japonはイタリア特集ですが、ニックに、なぜイタリアに住んでいるのかを訊いてみました。
「魂を見つけられるスピリチュアルな場所を探しに行ったんだ。もう一度、自分の頭の中をまっさらにできるような場所に自分を置いて、もう1回出直したかったから。あと、美味しいワインもあるしね(笑)。今はイタリアのコモ湖の近くに住んでいるんだけど、でももし本当に魂を探したいんだったら、僕が行った道を追いかけるのではなくて、自分の行きたいところに行った方がいいよ(笑)」
早く単独ライヴを見たいと思わせてくれる、カッコ良過ぎるロック大全開のJET『シャカ・ロック』です。
そして来年になりますが、来日公演が決定しました。
1/5(火) 東京 STUDIO COAST
1/7(木) 名古屋 DIAMOND HALL
1/8(金) 大阪 NAMBA HATCH
(問)SMASH
http://smash-jpn.com/
ご興味があれば、ぜひ"シャカ・ロック"を体感しにライヴへ行ってくださいね。
*to be continued