シガー・ロスのヨンシーが音楽を担当した映画『幸せへのキセキ』後編
Music Sketch
当初撮影現場では、キャメロン・クロウ監督のいつものやりかたで、雰囲気作りの意味も含めて、さまざまな役やシーンに合う楽曲を流していたそうです。今回はU2、パール・ジャム、メタリカ、トム・ペティー、ライアン・アダムス、クルト・ワイルなどで、たとえばエル・ファニングがリリー役を演じる重要なシーンではキャット・スティーヴンスの「ドント・ビー・シャイ」を彼女のテーマ曲のように流し、そしてそのまま実際に映画に使われている曲もあります。
「この映画を通じて伝えたかった要素を持っていたのがヨンシーなんだ。彼の音楽には感情的なフィーリングがあるから、それを映画に持たせたかった。ベンジャミンがキャサリンとの思い出を探しているシーンで彼の『シンキング・フレンドシップス』を流してみたら、それを聴いたマット・デイモンが、俳優のマットとして心を強く揺り動かされて、"この曲にグッと来るから、このシーンの終わりの方でもう1度この曲を流してくれないか"と言ってきた。それで実際に流したところ、彼はあの曲を聴いて泣きはじめたんだ。彼はますますヨンシー(シガー・ロス)中毒になって、このシーンで"『ゴー・ドゥ』をかけてほしい"とリクエストしながら、演技のスイッチを入れていった。それを見て、僕はすぐにヨンシーに連絡を取ったんだ」
「ギャザリング・ストーリーズ」を共作したクロウは、ヨンシーについて次のように話していました。
「ヨンシーは登場人物たちについてよく理解してくれて、曲で彼らをサポートしてくれた。役柄に合った曲で登場人物たちを迎えてくれているし、作品にとてもいい魅力を加えてくれている。まるで、こう語りかけているようだ。"こっちへ来てごらん、今から話してあげるよ。困難を背負いながらも、動物園を見つけることで救われる人たちの話だよ"ってね」
「この映画を作りたかったのは、"喜びの種"を蒔きたいと思ったからだ。本作は、幸せな気持ちになれるところがいい。生きる意味を感じ、喪失感が意欲やエネルギーに変わることの素晴らしさを教えてくれる」と、クロウ監督は話していましたが、ヨンシーの音楽がスクリーンに流れることで、この『幸せへのキセキ』という映画作品から"喜び"という感情や、"希望"という光を体感しやすくなったと言っても過言ではありません。ぜひ、この素晴らしい映画を映画館の大きなスクリーンから堪能し、音楽を浴びてきて下さいね。
注1)昨年12月13日にNYのユニオンスクエアにあるBarnes & Noble で行われたトークショウの時の発言。
*To be continued
前述のようにクロウ監督はシガー・ロス、そしてソロとしても活躍しているヨンシーの音楽も重要視していたのですが、ヨンシーにオリジナルスコアを依頼することになった決定的な瞬間はマット・デイモンの演技からでした。
「この映画を通じて伝えたかった要素を持っていたのがヨンシーなんだ。彼の音楽には感情的なフィーリングがあるから、それを映画に持たせたかった。ベンジャミンがキャサリンとの思い出を探しているシーンで彼の『シンキング・フレンドシップス』を流してみたら、それを聴いたマット・デイモンが、俳優のマットとして心を強く揺り動かされて、"この曲にグッと来るから、このシーンの終わりの方でもう1度この曲を流してくれないか"と言ってきた。それで実際に流したところ、彼はあの曲を聴いて泣きはじめたんだ。彼はますますヨンシー(シガー・ロス)中毒になって、このシーンで"『ゴー・ドゥ』をかけてほしい"とリクエストしながら、演技のスイッチを入れていった。それを見て、僕はすぐにヨンシーに連絡を取ったんだ」
ヨンシーは、ちょうどシガー・ロスの活動がお休みの時期だったため、脚本を読み終わると同時に多くのアイディアを書き溜め、すぐにロサンゼルスに飛んできたそう。そのアイディアもユニークで、たとえば、ベンジャミンの最初の職業がジャーナリストだったため、ピアノをベースに曲を作りながらも、テープレコーダーやトイ・サンプラーなど使ってローファイな雰囲気のある実験的な音作りを提案していったそう。残念ながら、「ボーイ・リリコイ」をテープに録ったものは劇中で使われなかったようですが。
シガー・ロスのファンから見れば、またヨンシーのソロ作品『GO』や、この映画で共同プロデュースをしているアンソニー・ソマーズとの作品『ライスボーイ・スリープス』と比較しても、ここでのヨンシーの明るい音色は予想外かもしれません。2010年に『GO』のツアーで来日した時、ヨンシーは次のように話していました。 「シガー・ロスでの曲作りは、メンバー4人とも"無"の状態でリハーサル・スタジオに入り、ジャム・セッションをしながら曲を構築するけれど、ソロ作品は自分のために書いている。だから感情を出しやすいんだよね。ただ、シガー・ロスよりソロ曲の方があたたかみがあると、よく言われるけれど、それは作風のせいか、自分が変わってきたからかどうかはわからないんだ」
また、「音楽に比例して、自分の興味のある分野としてミュージック・ヴィデオも含めたヴィジュアル・アートワークにこだわっている」とも話していて、映像/舞台のディレクター&デザイナーであるレオ・ワーナーと、歌詞の内容や伝えたいメッセージ、登場させたい動物について話し合ってツアーを完成させたように、今回は映画で動物がメインのシーンに感情をコネクトさせながら制作できたことも楽しかったのかもしれません。作業は自由で実験的なチームワークで行われたようで、クロウ監督が"魔法""癒し""喜び"といったテーマを彼に与えて、そこから作曲。完成したものを、今度は監督らが映像に当てはめながら長さなど調節していったので、同じシーンでも違うヴァージョンの曲がたくさん完成し、クロウ監督曰く、「続編を作れるほど音楽が多彩に余っている(笑)」とのこと。ヨンシーもアメリカのインタビューで、「アレックスと、オマケっぽい笑える曲も作ったんだ」(注1)と話していたので、今回の経験から作風も広がってきたのだと思います。
「ギャザリング・ストーリーズ」を共作したクロウは、ヨンシーについて次のように話していました。
「ヨンシーは登場人物たちについてよく理解してくれて、曲で彼らをサポートしてくれた。役柄に合った曲で登場人物たちを迎えてくれているし、作品にとてもいい魅力を加えてくれている。まるで、こう語りかけているようだ。"こっちへ来てごらん、今から話してあげるよ。困難を背負いながらも、動物園を見つけることで救われる人たちの話だよ"ってね」
最終的にニコ・ミューリー(ヨンシー、ビョークやアントニー・アンド・ザ・ジョンソンズ等との仕事、映画『愛を読むひと』の音楽担当で知られる天才肌の作曲家)がストリングスやブラスといったオーケストラのアレンジを手がけ、オリジナルスコアが完成しています。
「この映画を作りたかったのは、"喜びの種"を蒔きたいと思ったからだ。本作は、幸せな気持ちになれるところがいい。生きる意味を感じ、喪失感が意欲やエネルギーに変わることの素晴らしさを教えてくれる」と、クロウ監督は話していましたが、ヨンシーの音楽がスクリーンに流れることで、この『幸せへのキセキ』という映画作品から"喜び"という感情や、"希望"という光を体感しやすくなったと言っても過言ではありません。ぜひ、この素晴らしい映画を映画館の大きなスクリーンから堪能し、音楽を浴びてきて下さいね。
注1)昨年12月13日にNYのユニオンスクエアにあるBarnes & Noble で行われたトークショウの時の発言。
*To be continued