
おおはた雄一 『ストレンジ・フルーツ』を語る ③
Music Sketch
前回は、こちら。
現在「ストレンジ・フルーツ」ツアーとして、全国をまわっているおおはた雄一。続いて、演奏に加え、その軽妙なトークも人気の要因となっているコンサートの様子についても話を伺った。
以前に比べ、ステージ上でよく喋り、観客を笑わせるようになった。10月16日、世田谷パブリックシアターでのライヴ。PHOTO:石阪大輔(hatos inc.)
----レコーディングでもライヴ同様に、本当に空気感を意識してライヴをやっているんですね。ライヴの話に映ると、8月23日のパルコ劇場での弾き語りも、10月16日に世田谷シパブリックシアターでこの3人で行ったライヴも、とにかくおおはたさんのトークが冴えていて、前ってこんなに喋りましたっけ? お客さんのノセ方が芸人並みにうまいですよね?(笑)
「地方を回っていたり、回数をやっていたらどんどんとそうなっていって(笑)。昔はミュージシャンがペラペラ喋ったらカッコ悪いと思っていたんです。ジョアン・ジルベルトを観に行っても、ダニエル・ラノワを観に行っても、ほとんど喋らず演奏だけ。だから、今もそれが一番いいと思っているけど、なぜかあそこ(ステージ)にいると喋っちゃうんですよ」
----お客さんから反応があると安心する、コミュニケーションの取りやすさがあるのではないですか?
「そうですね。全体で楽しんでもらいたい。歌もそうだし、来て良かったと思われたい。喋らない方がカッコイイとは思うけど、自分のコンサートは喋りもあったり、歌もあったり、歌っているのか喋っているのかわからない、そういう方が好きだなと思うようになってきましたね」
----それは、いつ頃から意識し始めました?
「"こういうことをやりたい"という気持ちが強かった時期から、"共有したい"という気持ちが強くなった。ハナレグミとツアーを回ったのがデカかったかもしれないですね。あとは、永積タカシ君(ハナレグミ)と2人でキチムで、"なに&なすか"というトーク中心のイベントやギターナイトをやった時に、タカシ君から"ヘンなことばかり言うから、もうちょっとそこを出した方がいいよ。いつも真面目に思われているんじゃない?"って言われてかな」
sunuiによるステージセット。床は段ボールで柄を作り、ガムテープで文字を描いている。今にもお芝居が始まりそうな雰囲気も素敵。PHOTO:石阪大輔(hatos inc.)
「今回のジャケットもアートワークもやってもらっているsunuiスヌイという女の子の4人組にステージの装飾などやってもらっていて。素のものの素材を縫う、sunuiから名前が来ているようですね。素人といったら素人で、舞台装置をメインにしている人たちではないし、ステージのプロではないので、長年の舞台のプロとぶつかったりしているけど、とてもこっちの気持ちをくんでくれて、とにかく演奏しやすいようにやりやすいように考えてくれる。そこの波長が合うんですよね。ハナレグミのツアーグッズなど手掛けているんです」
----そうなんですね。
「絨毯みたいに見えるステージも段ボールを敷いているだけ。床に描いているわけではなくて、小さなテープを貼付けているだけ。アイディアマンだよね。全部解体して、すぐになくなってしまう。他にも古いトランクとかたくさん持ってて、アトリエから持ってくるんだと思います」
気心の知れた仲間ならではの演奏が、心地よく展開されていく。左から、伊賀航(B)、おおはた雄一(Vo&G)、芳垣安洋(D)。PHOTO:石阪大輔(hatos inc.)
さて、そのステージセットの雰囲気は写真から察していただくとして、10月16日に行われたライヴはというと、おおはた雄一がボブ・ディランの曲「Don't Think Twice, It's All Right」に自ら日本語訳をつけたカヴァー曲「くよくよするなよ」からスタート。おおはたは「勝手に弾き語りするように歌いたい僕に、ついて来てくれる2人です」と、メンバーを紹介するが、ドラムスの芳垣安洋はROVOやOrquesta Libreを中心に、ベースの伊賀航は細野晴臣、曽我部恵一、星野源などのサポートを中心に、それぞれ多彩に活躍しているミュージシャンとあって、おおはたがアコースティック・ギターやエレクトリック・ギターを持ち替えるように、芳垣はスティックをブラシやマレットに、伊賀もエレクトリック・ベースからウッド・ベースへと、おおはたの選曲や気分に合わせて職人技を次々と披露していく。
前半は人気曲「決別の旗」「おだやかな暮らし」などを織り交ぜつつ、最新作『ストレンジ・フルーツ』のナンバーを中心に展開。糸井重里が作詞した「ろば」では、歌詞をもらった時に"あきるまでリピート"と指定してあったからと、観客と一緒に「らんらんらら らんらん」を繰り返して会場を和ませると、そのまま「親指ボムの最後の夢」「いつもあなたは奪ってゆく」、そして芳垣がさまざまな音を使って中国の雑踏を表現した「我們是朋友(ウォーメンスーポンヨウ)」へと、曲の説明をユーモア込めて話しながら一気に進んで行く。
エレクトリック・ギターを弾きまくる、おおはた雄一さん。その艶やかな音色といい、アグレッシヴさといい、非常にカッコ良かった。PHOTO:石阪大輔(hatos inc.)
現在、おおはた雄一は全国ツアー中(姫路、山口、京都、岡山、島根、名古屋、大阪、福岡ほか)。みなさんの街ではどのようなステージを気ままに楽しくカッコ良く披露しているか、ぜひ一緒に体感して、素敵な時間を共有していただければ、と思う。
おおはた雄一のツアー・スケジュール→
http://www.yuichiohata.com/schedule.html
*To Be Continued