Music Sketch

ジョヴァンカのニュー・アルバム

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先日オランダからジョヴァンカが来日していたので、会ってきました。ジョヴァンカについては2年前の秋に『フィガロジャポン』本誌で取り上げていますので、記憶に残っている読者がいるかもしれません。この新作は、最新号の音楽ページでご紹介しています。

10代からヨーロッパを代表するトップモデルとして活躍し、オランダでは女優としても活動。時には大好きなファッションデザインも担当し、一方、大学では科学を専攻してきた才女です。科学といっても、教育科学の授業の一環でガンを患っている子供たちの前でライヴをやるなど、学生時代から人前で歌を披露する機会が多かったそうです。


0621music_1.JPGトップモデルとして活躍してきただけあって、長身でスタイル抜群。
親しみやすいキャラクターです。


一番なりたかった職業はシンガーで、学生時代にバッキング・ヴォーカルとして出場したコンテストで注目され、人気プロデューサー、ベニー・シングスと知り合い、ウーター・ヘメルのアルバム『Hemel』に参加するようになります。そして31歳にして、アルバム『サブウェイ・サイレンス』で念願のデビューを果たしました。

デビュー・アルバムは、憧れのミニー・リパートンばりのハイトーン・ヴォイスを魅力的に活かしたヴォーカルで、ポップスとジャズの間を軽やかにステップするような音楽を披露。母国オランダではもちろんのこと、ヨーロッパや日本でも話題になりました。約2年ぶりのアルバム『ホワイル・アイム・アウェイク』では、前作に続き作詞を手掛け、また作曲も積極的に行なっています。

0621music_2_new.JPG2年前にリリースされたデビュー・アルバム『サブウェイ・サイレンス』。


リードトラックで、ラジオからも頻繁に流れている「ドロップ・イット」は、一瞬にしてジョヴァンカの歌だとわかる軽快なナンバー。恋愛の歌ながら、"Drop The Gun"と繰り返されるフレーズが印象的です。

「アクション映画を見ていると、必ずといっていいほど銃を構えている人の後方から別の人が出てきて"銃をおろせ!(Drop the gun!)"っていう場面が出てくるじゃない? それって、誰か他の人がタオルを投げ入れて"もう諦めろ!おしまいだ!"って言ってるようなものだから、すごく面白い瞬間だっていつも私は思っていたの(笑)。この曲の歌詞を書いていた時に、例えばそれが仕事であれ、恋愛関係であれ、戦争している関係の国々であれ・・・・・・二者が向かい合って戦っている時って、その争いの理由や目的よりも、"戦いをすること自体"がメインになっていることがあるのよね。特に人間関係だと、無意味なことについて争ってる場合が多いじゃない? だからこの曲は、"常に戦っている必要はない"ということの比喩で、"Drop the gun"にしたの。どんな戦いでも、誰かが背後から近づいていって"もう終わりにしなさい"って言ってあげるべき瞬間があるのよ。"そこまで。もう諦めなさい"ってね」

恋愛模様を歌った楽曲がメインになっているものの、そこには必ずジョヴァンカの本音が記されています。たとえば「キャン・サムバディ・テル・ミー」では、両親の出身地であるカリブ海に浮かぶキュラソー島の言語も使いながら、問い掛けます。この曲は夜中に1人でTVを見ていた時、地震や環境問題、経済問題といった世界で起こっている悪いニュースばかりが絶え間なく映っていたため、そこからインスパイアされたそう。

「まず、"Can somebody tell me what we're heading for?(私たちがどこに向かっているか誰か教えて)"というフレーズを書いたの。そして私たちが"自分の人生において、望んでいるものって一体何なんだろう?"って考えたら、私たちはみな明るい未来を望んでいて、そこに向かって前進して行きたいと思っているはずだって思った。パピアメント語で書いたのは、自分の感情を一番深く、そして一番的確に表現できるから。一番シンプルな形でね。この部分は、"地上にいる私たちには、自分たちがどこに向かっているかがわからないけれど、天上にいる人ならそれをわかるかしら?どうすればそこに到達するか教えて"って歌っているのよ」


0621music_3_new.JPG最新アルバム『ホワイル・アイム・アウェイク』。


曲はジョヴァンカがラフに組み立てた後に、プロデューサーのベニー・シングスと構成を考え、最後に、気心の知れたバンドメンバーとセッションしながら、曲に一番似合う演奏スタイルを構築していきます。また他のミュージシャンと共作したものもあり、前作の陽光を感じさせるポップ・ナンバーだけでなく、30代の女性が悩むような結婚観や死生観まで語ったナンバーまであり、『フィガロジャポン』読者には友人の声を聞き、一緒に考えるようなリアルな歌になっていると思います。

特にジョヴァンカにとって非常にパーソナルな恋愛心理という、好きな相手に愛されない気持ちを歌った「シー・ジャスト・ウィンツ・トゥ・ノウ」は、実際に歌詞を女友達などに送って読んでもらい、"同じ気持ちを味わったことがある?"って訊いて、確認しながら発表するに至ったもの。とても丁寧に自分の心を吐き出しながら制作したアルバムであることが伝わってきます。

『ホワイル・アイム・アウェイク』というアルバムタイトルや深夜を想起させるような写真から想像できるように、ここに収められた曲は不眠症になって眠れなくなった深夜に書き綴った曲ばかりだそう。でも決して心が重くなるようなナンバーではなく、ジョヴァンカらしいウィットと知性と誠実さに溢れた楽曲ばかりです。まずは、周囲の空気をグッと澄んだものに変えてしまうような、軽やかなジョヴァンカの歌声に耳を傾けてみてください。


なお、ビルボードライブ大阪で8月13日(金)、14日(土)、ビルボードライブ東京で16日(月)、17日(火)にコンサートを行ないます。

*to be continued

伊藤なつみ Natsumi Itoh

音楽ジャーナリスト/編集者

『フィガロジャポン』やモード誌などで取材、対談、原稿執筆、編集を担当。CD解説原稿や、選曲・番組構成、イベントや音楽プロデュース等も。これまでデヴィッド・ボウイ、マドンナ、ビョーク、レディオヘッド等、国内外のアーティストに多数取材。2018年より日本ポピュラー音楽学会会員。
ブログ:MUSIC DIARY 24/7
Twitter:@natsumiitoh
Spotifyプレイリスト:MUSIC SKETCH

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