注目の新人、アフィ
Music Sketch
5月20日発売の『フィガロジャポン』7月号でご紹介したアフィ。デビュー・アルバム『セックス・ドリームス&デニム・ジーンズ』の発売が当初の予定よりも遅れて6月23日に延びてしまい、先日ようやく発売されたので、ここでちょっとフォローしておきますね。
4月初旬に来日し、3日深夜にはル・バロン@青山でライヴ・パフォーマンスを行いました。ステージがないのでフロアでそのまま歌いだし、目前の観客と接しながら歌っていたので、物凄く熱いライヴになっていました。フランスはもちろん、ワールド・ツアーでもいつもこの調子でやっていて、この方がエキサイトして楽しいんだそう。時差ボケも手伝って、物凄いハイテンションでした。
マイアミ生まれの22歳。4歳から香港で生活し、時には船上生活も経験し、フィリピン海峡を航海中には嵐に遭遇して九死に一生を得たこともあり......と、明かされる話には驚かされることばかり。15歳からパリで暮らすようになってからも、波乱万丈の人生は加速。2006年からアルバム制作を開始したものの、当時の恋人と別れ、新たな恋に落ちて妊娠し、一時レコーディングを中断。とはいえ、完成時にはシングル・マザーになっていたり......と、目まぐるしい日々。子供の父親はというと以前『フィガロジャポン』で連載していたことのあるグラフィティ・アーティストのアンドレ・サレヴァで、意外なつながりにもこれまたビックリ。でも現在は、新たな恋人と幸せそうです。
パリで暮らすようになったのは、ファッション関係の仕事をしていた父親が住んでいたので、15歳の時に遊びに行ったところ、街の雰囲気をすぐに気に入ってしまったため。当時はファッション・ビジネスの仕事に就くことを何となく考えていたものの、DJフィーズに勧められたことから歌をはじめ、「自分が歌うのなら自分の言いたいことを歌いたい」と、作詞もはじめました。
パリの魅力については、次のように語ります。
「パリの文化が好きだわ。朝、カフェに行って、新聞を片手にクロワッサンとカフェオレを楽しむあのペースが素敵なの。いい生活のペースだと思うわ。誰もが食べ物をじっくりと味わい、人生の楽しみ方を知っている。最高なライフ・スタイルだと思うのよ。だから、しばらくは引っ越すつもりはないわ。NYで生活したいって気持もあるの。だけど、今はパリがいいわ」
パリに来る前に故郷フロリダに戻り、その頃はヒップホップにハマッていたそうですが、自分ではアメリカにいた期間が短いので、アメリカ人という意識が少ないとのこと。
「私が、自分がフランス人ぽいと感じるのは、黒の服を身に付けている時かな(笑)。自分はあまりアメリカ人ぽいとは思わないの。だってそれほど長い事アメリカに住んだ事がないから。同時にフランス人ぽくもないわ(笑)。つまりどっちでもないのよ」
そして、もし3カ月どこかで生活するとしたら、オーストラリアに行きたいと話してくれました。
「ツアーで3~4回行ったことがあるんだけど、あそこもとってもリラックスした国。他の国から独立して存在しているような気がするし、だからこそあの国特有のペースがあるの。オーストラリアで働いている友達はみんな午後サーフィンするためにビーチでのんびりしているし、人はみんな親切。とっても奇麗な町だからぜひ生活してみたいわ」
余談ながら、私も将来はオーストラリアに住みたいと考えています。
アフィのフットワークの軽やかさは、そのまま型にはまらない自由な音楽にも表れています。耳の早いファンの間では、同じエド・バンガー・レコーズ仲間のジャスティスの楽曲「Tthhee Ppaarrttyy」での客演で注目されていましたが、他にもMr.オワゾやクリスタル・キャッスルズの作品にも参加し、早くから知られていました。そしてアフィの待望のデビュー・アルバムには、DJフィーズやMr.オワゾ、マドンナの作品で一躍有名になったミルウェイズといったDJ/プロデューサーを中心に、彼女が大ファンというファレル・ウィリアムス(ネプチューンズ/N.E.R.D.)や友人であるマティ・セイファー(元ザ・ラプチャー)なども加わっています。また、リミックスはビースティ・ボーイズのマイクDやアーマンド・ヴァン・ヘルデンといったアーティストが手掛けていて、その人気の広さにも驚かされます。アフィ、こんなにチャーミングですからね。
そんなアフィはというと、エレクトロ・ポップやロックといったジャンルに関係なく、多彩なトラックに"私だって、自分の責任ってものがある。自分以外の人間の面倒までみていられない"(「ギヴ・イット・アウェイ」)といった、人生の波に打たれながら生きていく、自身の思いを率直にぶつけています。そんな潔さも人気の秘訣なのでしょう。
今年のサマーソニック2010では、初めてバンドを率いてパフォーマンスをするそう。さらにエキサイティングなショウになりそうで、とっても楽しみです。
*to be continued