Music Sketch

THE GOASTTのシャーロット・ケンプ・ミュールにインタビュー

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モデルや女優として第一線にいながら、写真家、そして音楽活動も行なっているシャーロット・ケンプ・ミュール。恋人のショーン・レノンともザ・ゴースト・オブ・ア・セイバー・トゥ・タイガー(以下、THE GOASTT)というユニットを結成し、活躍中だ。サイケデリック色の強い最新アルバム『MIDNIGHT SUN』について話を訊いた。

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(写真左)シャーロットは1987年8月生まれ。12歳の時に大手モデルクラブEliteのコンテストで優勝し、以後ヴィダルサスーンやメイベリンなど、トップモデルとして活躍中。

■ シュルレアリズムやサイケデリック色を音楽で表現

―THE GOASTTとして4年ぶりのアルバムになりますが、サイケデリックなアルバムになったのはどういう気分からですか?

シャーロット・ケンプ・ミュール(以下、C):「まず全ての曲はアコースティック・ギターかピアノで書いたの。そしてスタジオに行って、私はベースを弾いて、ショーンはドラムを叩いて、ジャムセッションをしながらテープ・マシンに録音。その上にいろんな楽器やアイデアを重ねていったわ。全ての曲にプランがあったわけではなく、いろんなアイデアを試してみてエディットして......と、繰り返す感じ。ここ一年ぐらいで60年代のサイケデリック音楽をたくさん聴き始めたから、サイケデリック色が強くなってきた。プリティ・シングス、ピンク・フロイド、ホワイト・ノイズ、ザ・キンクスとか、そういうサウンドに凄くインスパイアされたの」

―曲「MIDNIGHT SUN」が、そのままアルバムタイトルになりましたが、アルバム通してのトータル・イメージは?

C:「シュルレアリズムやサイケデリックというのが頭にあったわ。"Midnight Sun(真夜中の太陽)"というのは不可能なことを表しているから」

「Too Deep」 アルバム『MIDNIGHT SUN』の1曲目。アルバムの最初にシンプルにエネルギーを放出し、その後に複雑な曲で展開していく感じにしたかったそう。

―「ANIMALS」では、右のスピーカーから聴こえる金属音のようなサウンドが効果的ですね。これは何の楽器? どういう思いつきから入れたの?

C:「その音に気がついてくれて嬉しいわ。それは私のアイデアよ。サーカス用のオルガンという1800年代のもので、金属のパイプがついている。オルガンだから鍵盤を弾くようになっているけど、私たちは鍵盤を弾くかわりにパイプをスティックで叩いて打楽器のように使った。本当はそういう使い方はしないんだけど、チューブラー・ベルみたいなクールな音がすると思ったので叩いたの。マニー・マークから何でも楽器に変身させることができるということを教わったわ(笑)。彼はRhodesの天板をあけて中の金属の音叉を指ではじいたりしていた。彼は楽器をいろんな方法で演奏するということに関し、とてもクリエイティヴ。サーカス・オルガンはスタジオにあって、ピッタリくる音を探すために私たちはいろんなものをスティックで叩いていたの。そうやってあの音を見つけたのよ」

「Animals」 アルバムの中で一番ポップでシングル的な役割だそう。

―ピンク・フロイドを想起させる音作りの曲もありますが、「MOTH TO A FLAME」はコーラスの重ね方など独自にとても凝っていますよね。どういった世界を描きたかったの?

C:「ダークさやシュルレアリズム、ロマンチズムね。始まりは教会の聖歌隊みたいな感じで、その後サイケデリックな曲調に発展していく。夢のように永遠に続いていくかのような感じ。私があの曲の中で一番好きなのはショーンのラップ・スチール・ギターの演奏。彼はこの曲でエレクトリック・スライド・ギターみたいなラップ・スチールを弾いているんだけど、ワンテイクで録れて、魔法のようで神秘的だった。あの曲のオリジナル・バージョンは20分もあるの。だからあれは(マジック)マッシュルームでもとりながら聴いてほしい曲だわ(笑)」

―(笑)。歌詞で特に気に入っているフレーズがあれば教えて。

C:「歌詞はショーンと一緒に書いているの。でも私が書いた"lipstick anarchist(口紅のアナーキスト)"(『Xanadu』)というフレーズは、みんな好きみたいね。私はショーンが書いた『Animals』の歌詞で"Do you believe in what you read in the tea leaves? Messages from Jesus in the grease upon the grilled cheese. Do you agree with the man on TV? Evidence that aliens brought Elvis to the Pleiades."(紅茶の葉っぱ占いの結果を信じているのかい/溶けたチーズの脂の上にはジーザスからのメッセージ/テレビの男が言うことを真に受けているのかい/エイリアンがエルヴィスをプレアデスにさらっていったって)という歌詞が好き。とてもサイケデリックなイメージ。この歌の3番の歌詞は私が書いたわ」

「Moth To A Flame」 「ポップな『Animals』に対し、この曲は壮大で実験的なので、脳の両方の部分を刺激してくれる」と、説明。


■ アルバムのアートワークも二人で手掛けた

―曲作り、もしくはレコーディングで一番チャレンジだった曲は?

C:「『Last Call』だと思う。『Johannesburg』と『Last Call』がアルバムの中で一番古い歌。『Last Call』は幾つものバージョンがあって、それを継ぎ接ぎしたものなの。CORNELIUSバンドのギタリスト、清水ひろたかさんがこの曲のイントロのスライド・ギターを弾いてくれた。彼のギターは生演奏を録音して、曲のいろんな部分はレコーディングし直したけど、彼の演奏は残したの。完成するまでに長い時間がかかったわ。たくさんの異なるセクションで成り立っていたから。すごく細かくカットアップされた曲。一番エディットされた曲だわ」

―アルバムのアートワークもあなたが手掛けたの?

C:「二人で手掛けたわ。私は内側の白黒のコラージュを担当して、ショーンがアルバムカバーのドローイングを手掛け、私がそれに色をつけた。特定の意味はなくて、凄くサイケデリックでシュール。私たちはサルバドール・ダリやマックス・エルンストやルネ・マグリットのようなシュルレアリズムが好きで、ダリの絵みたいな曲を作りたかったの。ヴィジュアル面も同じね。でも面白いのは、アルバムカバーを深読みして、変なUFOや、私の手の上の変な形の物体やショーンの額の"第三の目"を見て、私たちがイルミナティ(秘密結社の一つ)だと思っている人たちがたくさんいるということ(笑)」

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■ 子供の頃は古風で、浮世離れしていたわ

―ここからあなた自身の話を訊きたいのですが、音楽体験として最初に夢中になったミュージシャンは誰ですか?

C:「最初はクラシック音楽ね。10〜12歳の頃は『禿山の一夜』を書いた作曲家のムソルグスキーに夢中だった。私はロックを聴き始める前はクラシック音楽を聴いて育ったの。そしてその次にシド・バレット。16、7歳の頃は彼のソロ作品に熱中していた。そして今はT-Rex! 完全にグラムロックにハマっているわ」

―シド・バレットの曲は、今回カヴァーしていますよね。では、今の自分を形成するにあたって、音楽的、文学的に影響を受けた人、もしくは尊敬しているアーティストや作家は?

C:「最近パティ・スミスの自伝『ジャスト・キッズ』を読んだけど、素晴らしかった。彼女の文章は美しいと思うわ。彼女の音楽よりも好きだわ(笑)。もっと若い時に影響を受けたのはポール・サイモン。彼の歌詞や初期の作曲は大好きだった。サイモン&ガーファンクルの『Dangling Conversation(夢の中の世界)』という歌や『オールド・フレンズ』も美しいし、あとは『アメリカ』や『ボクサー』。『ボクサー』を聴くと涙が出てくる。でも今のポール・サイモンは少し陳腐になってしまったわね(笑)。文学ではギリシャ神話がすごく好き。ホメロスとか。あとはシェークスピアなどの凄く古い文学。子供の頃はシェークスピアが大好きだったの。すべての戯曲を読んだ。私はとても古風で、浮世離れしていたわ(笑)」

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ショーンからは、「大人でいること、礼儀正しくすることや、清潔でいること、部屋を片付けることなど学んだ」と話す。

―ファッションスタイルにこだわりはあります?

C:「いつも変化している。この1ヶ月はツアーしていて、白と黒のストライプのパンツが気に入って、ツアー期間中は毎日履いていたくらい(笑)。そのパンツは60年代の音楽映画『ロックンロール・サーカス』(ローリング・ストーンズの伝説的映画)みたいな感じ。その中でミック・ジャガーがストライプのパンツを履いていたの。ジミ・ヘンドリックスのファッションスタイルも好き。彼のミリタリー・ジャケットは最高ね」

―好きなデザイナー、好きなコーディネートなどあれば教えてください。

C:「好きなデザイナーはアレキサンダー・マックイーン。彼はとても独創的で大胆で。彼が死んでしまったのはとても悲しい。彼の美学は本当に素晴らしかったわ。とても想像力に富んでいて子供のようだった。でも陰鬱でダークでもあって。コーディネートでいうと今はパンツ・スタイルが好き。以前はドレスやスカートにハイヒールを毎日履いていたけど、今はブーツとパンツ。男性になりつつあるわ(笑)」

―ショーンは最近の写真を見ると、キメラ・ミュージックを立ち上げた頃に比べてとても髪が伸び、この最新アルバムと関係があるのかわかりませんが、風貌が変わりました。シャーロットも今やっている音楽とも関係して変わってきた部分はありますか?

C:「面白いことに、彼はもっと女性的になってきていて私はもっと男性的になってきているの。彼の髪は伸び、私は男の子みたいな格好をしている。私たちはあまりに長い時間一緒に過ごしているのでお互いに似てきているんだと思うの」

「Xanadu」バンドとして、今年はフレーミング・リップスやテーム・インパラ、ベックなどとツアーした。

■ いつも何かに挑戦している状況にいるのが好き

―モデル、シンガー・ソングライター、フォトグラファー等、多岐にわたって活躍していますが、自分の才能を伸ばすために意識していることは?

C:「そうね、いつも何かに挑戦している状況が好き。次はテープのエディットの仕方を勉強したいわ」

―素敵な女性であり続けるために、何か気をつけていることがあれば教えて。

C:「夜はローズウォーターで洗顔するのが好き。いい匂いだし気持ちがいい。あと果物をよく食べるわ。これは凄くいいと思う。あとはメイベリンのアイライナーとマスカラを使っているわ」

―最後に憧れの女性がいたら、どんな点に惹かれているか教えて下さい。

C:「そうね、霊長類学者のジェーン・グドール。チンパンジーの研究をしていた人だけど、とても美しくて頭の良い人だったの。それと女性飛行士のアメリア・イアハート。1900年代初頭に活躍していた人で、女性で初めて単独世界一周飛行に成功した人だと思う(訳注:正しくは女性初の大西洋横断飛行)。彼女もとても美しかった。キャサリン・ヘップバーンみたいな感じ。飛行機が墜落して亡くなったと思う。あとショーンのお母さん(オノ ヨーコ)もとても尊敬している。凄い人だと思う。あとは、チボマットの本田ゆかさん。彼女は私の英雄だわ」


追記:来日公演決定!

ザ・ゴースト featuring ショーン・レノン&シャーロット・ケンプ・ミュール

2014年10月30日(木) 名古屋ブルーノート
ミュージックチャージ:¥7,800(税込)
詳しい情報はこちら≫

2014年10月31日(金)~11月2日(日) ブルーノート東京
ミュージックチャージ:¥7,800(税込)
詳しい情報はこちら≫

*To Be Continued

伊藤なつみ

音楽&映画ジャーナリスト/編集者
これまで『フィガロジャポン』やモード誌などで取材、対談、原稿執筆、書籍の編集を担当。CD解説原稿や、選曲・番組構成、イベントや音楽プロデュースなども。また、デヴィッド・ボウイ、マドンナ、ビョーク、レディオヘッドはじめ、国内外のアーティストに多数取材。日本ポピュラー音楽学会会員。
ブログ:MUSIC DIARY 24/7
連載:Music Sketch
Twitter:@natsumiitoh

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