Music Sketch

THE XX ライブ@代官山Unit

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THE XX(ザ・エックス・エックス)のライヴを5月14日に代官山Unitへ観に行ってきました。THE XXはロンドン出身のバンドで、昨夏に本国イギリスでデビュー・アルバム『XX』が発売になってから、季節に関係なくずっと愛聴してきた1枚です。ただ、聴く時間はいつも日常を感じさせない夜の深い時間帯でしたが・・・・・・。

0527_natsumisan_A.JPG 現在3人組のTHE XX。昨年デビューし、ユニークな音楽性が一躍注目されました。

幼なじみの4人が結成したグループで、弱冠20歳でデビュー。ただ、日本盤が出た昨秋頃にバリア(キーボード、ギター)という女性が体調を崩して脱退していて、今は3人組です。

0527_natsumisan_B.JPG グループではリーダー的存在のオリヴァー。

4歳から仲良しというオリヴァー(ヴォーカル、ベース)、ロミ(ヴォーカル、ギター)の2人が曲作りもしているのですが、その作曲法がユニーク。ぞれぞれがベッドルームで個々に書いてきた曲を持ち寄り、歌の世界観が似ているもの同士を1曲に集束していくという手法。そのため歌も、自分が書いたパートを歌っています。ラヴソングとはいえ、オリヴァーとロミは恋人同士ではなく、互いに他の相手を想って書いているわけで、でも最終的に1つの曲として見事に構築されているのです。また、最終的に楽曲を仕上げるのはDJでもあるジェイミー(ビート、サンプル)ですが、彼は歌詞の内容など全く気にしないで感覚だけで、ビートを刻み、アレンジしていくそうです。

0527_natsumisan_C.JPGオリヴァーと共に曲を作り、歌も担当するロミ。

最小限の音を重ね合わせたミニマル・ミュージック。これまでにない音楽スタイルとあって、インディーズにもかかわらずヨーロッパに続き、アメリカでも大絶賛され、2010A/WのコレクションでもGiambattista Valliなどに音楽が使われていました。叶わない想いを伝えようとする、受け入れてもらえない愛を嘆く、繊細で壊れそうな心情を描いたラヴソングばかり。想いが強いだけに、ロマンチックを超えたドラマチックな言葉がメロディに並びます。CDのアートワークも写真もヴィデオも全て自分たちで手掛けているとあって、完璧主義なのでしょう。アート界やファッション界でも人気が高いのがわかります。

0527_natsumisan_D.JPG楽曲にビートなどを加え、最終的にまとめていくプロデューサー的存在のジェイミー。

ちなみにTHE XXという名前ですが、ヴィジュアル的に「X」のインパクトが強いことはもちろん、"無限""KISS KISS""ポルノグラフィー"など、いろいろな解釈ができるため、このネーミングにしたそう。

0527_natsumisan_E.JPG 超満員の会場。ステージはシンプルな設定ながら、ライティングがさらに音楽を引き立てます。

さて、ライヴ。ベッドルーム・ミュージックだと思っていたので、実は演奏を期待しないで行ったのに、これが本当に素晴らしくて......。キーボード奏者が抜けた分、3人で交互に演奏するというスタイルは大変だったと思うのですが、そんなことを感じさせないパフォーマンスでした。

ブラック&ホワイトを基調とした色彩に、前半は赤と紫のライトを交錯させて、「ISLAND」ではベースの乾いたビートを強調するなどして、情熱的にステージを見せていきます。シンプルなステージに挿し色としてのライティングが重要なポイントとなり、「HEART SLIPPED A BEAT」ではブルーの照明で切ない想いを音楽と共に広げ、「FANTASY」では会場全体を深海を思わせるような藍緑のライトで包みます。このあたりまでは、ほぼCDの曲順と同じ。彼らの中でイメージが出来上がっているのでしょう。

0527_natsumisan_F.JPG アグレッシヴなパフォーマンスで、ファンを魅了したオリヴァー。

私の大好きな曲の1つである「SHELTER」からの後半は、さらに言葉にならないくらい素晴らしく。歌の情感の高まりに合わせて演奏も昂揚し、ベースが思い切りメロディに不協和音をぶつけてくるなど、CDで感じさせていた静寂を破壊していきます。「BASIC SPACE」もCDで聴いていた時よりも立体感が増し、メロディが淡々としている曲だけに、演奏の躍動感とのコントラストが象徴的に。しかもジェイミーの卓の横からスモークが焚かれ、それが赤い照明と絡み合って炎のように映り、ドラマチックに魅せます。「NIGHTIME」にいたっては、ビートに合わせて「X」のライトが点滅して。「INFINIY」ではステージ前にあるシンバルをオリバーが叩き出すなど、実にエネルギッシュ。アンコールの「STARS」では、ジェイミーやロミがキーボードも担当するなどして、それぞれの想いが曲に交錯していく様子を、目の当たりに捉えることができます。

0527_natsumisan_G.JPGライヴ終了後に、翌日も観たいと思ってしまったほどの素晴らしい内容でした。

誰にも見せたくない心の奥底を、ステージ上で公開しているよう。超プライヴェートな音楽空間でありながら、実はみんなで共感し共存する場になっているTHE XXのライヴだと感じました。そしてやっぱりそこには、"美しく儚い恋愛感情"が終始漂っていました。

0527_natsumisan_H.JPG『メンズノンノ』誌で取材した時に、撮らせてもらいました。左から、オリヴァー、ロミ、ジェイミー。

取材時に感じたのは、ロミは、エヴリシング・バット・ザ・ガール(EBTG)のとレーシー・ソーンの若かりし頃の面影があること。聞くと、以前は今の音楽スタイルと真逆のハードコア系が好きだったそうで、元パンク少女だったトレイシーと、やはり似ていると感じてしまいました。オリヴァーは、あまりにステキ過ぎて困りました(笑)。ジェイミーは、音楽にしか興味がないといった感じ。フジロック'10で再来日するというので、自然の中で体感するとどのような感じになるのか、とても楽しみです。ただ、やっぱりTHE XXの音楽はUnitのような地下空間が似合うような気もします。

0527_natsumisan_I.JPGデビューアルバム『XX』。

MySpaceはhttp://www.myspace.com/thexx

LIVE Photo: 古渓一道


*to be continued

伊藤なつみ

音楽&映画ジャーナリスト/編集者
これまで『フィガロジャポン』やモード誌などで取材、対談、原稿執筆、書籍の編集を担当。CD解説原稿や、選曲・番組構成、イベントや音楽プロデュースなども。また、デヴィッド・ボウイ、マドンナ、ビョーク、レディオヘッドはじめ、国内外のアーティストに多数取材。日本ポピュラー音楽学会会員。
ブログ:MUSIC DIARY 24/7
連載:Music Sketch
Twitter:@natsumiitoh

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