【虹の刻 第7章】村上虹郎×山田智和×エリイ。
虹の刻
フィガロ本誌3月号より始まった新連載「虹の刻」は、俳優の村上虹郎と映像作家の山田智和、そして各回ごとに変わる文筆家と音楽家を招き、”とある瞬間”を表現する連載企画。
第7回目の文筆家には、Chim↑Pomのエリイが登場。音楽は、OKAMOTO'Sでボーカルを務めるオカモトショウが書き下ろした。
かつての機能を失った廃墟に残る、混沌とした気配。4人の表現者が抱く想いに耳を傾けて。
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「視」 エリイ
宇宙中のどんな絢爛な宝石達を集めて固めてもその5億倍は美しい効力を発揮する球があった。水面に自身を映して分身を創り出していたがいつからかその二つは融合して球と棒の形をした光になる。
端のほうから歓喜の叫びをあげながら走って来る人間がいた。命が踊る。あらかじめ持っていた熱が爆発して膨張、触れたエネルギーを連鎖爆破させ続けながら踏みしめて行く。初めは見ていた人達も巻き込まれるように絡め取られていき横も縦も増幅して群集になる。同じ方向に一斉に。
広漠な中南米コスタリカの遠浅の浜辺、夕陽が海に浸かりそうな数分前に私は薄い波の中の砂の上に座っていた。身体を前に前に進め走り続ける全員が更に其処に加わる人たちが生命の歓びを生きている前向きな振動を噴出させながら叫びながら共有しながら一つになりながら近づいてくる。
私は赤い光を体の細部まで浴びながらその畝りをしっかりと見ていた。命が跳ねる。身体が動く。横を駆け抜けていった更にその先で随分と多勢になった塊は強固にした渾身の一発の叫びをあげてから散ってばらばらになる。そのすぐに後、光の球は向こう側に行って、その代わりに光の粒達が満遍なく輝いた。
Tomokazu Yamada
1987年生まれ、東京都出身。Caviar所属。アーティストへの敬意、作品や精神性への共感と愛。光や闇、水などの自然を巧みに取り入れた作品群は、普遍性を持ちつつ私的な感情を描き出す。2018年、米津玄師「Lemon」のMVでMTV VMAJ 2018 最優秀ビデオ賞受賞、19年、スペースシャワーミュージックアワードでBEST VIDEO DIRECTOR受賞。
Nijiro Murakami
1997年生まれ、東京都出身。2014年カンヌ映画祭出品作『2つ目の窓』で主演を務め、俳優デビュー。作品の持つ時代性や自身の内的な記憶と真摯に向き合い、繊細な感情を映し出す演技派。9/13公開予定のオダギリジョー監督作品、映画『ある船頭の話』に村人の源三役として出演。他の公開待機作に、映画『楽園』、『“隠れビッチ”やってました。』。
Ellie
アートコレクティブ Chim↑Pomのメンバー 。都市問題、広島、原発事故、移民などのテーマを扱いながら、時代の「リアリティ」に反応し、現代社会に介入したメッセージ性の強い作品を発表。イギリスで開催中の「Manchester International Festival」に参加。2019年、その活動と作品の集大成『We Don’t Know God』(ユナイテッドヴァガボンズ刊)が発刊。
Sho Okamoto(OKAMOTO'S)
1990年生まれ、ニューヨーク出身。2009年、中学校時代の友人であるオカモトコウキ(Gt)、ハマ・オカモト(Ba)、オカモトレイジ(Dr)とともにOKAMOTO'Sを結成。自身はボーカルを務める。19年4月より、10周年を記念した全国ツアー「OKAMOTO'S 10th ANNIVERSARY LIVE TOUR 2019 "BOY"」を開催し、初の日本武道館公演は完売、大盛況にて終えた。同年10月、新木場STUDIO COASTにて「オカモトショウ生誕祭 オールナイトイベント」を開催予定。
réalisation : TOMOKAZU YAMADA, direction de la photographie et montage : YUKI SHIRATORI, musique : SHO OKAMOTO(OKAMOTO'S), acteur : NIJIRO MURAKAMI, texte : ELLIE(Chim↑Pom), stylisme : SHOTARO YAMAGUCHI(eight peace), coiffure et maquillage : TAKUYA BABA(SEPT)