心に響く、映画体験。

フランス通なら知っておきたい、ロマン・ガリの人生を映す『母との約束、250通の手紙』

心に響く、映画体験。

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ロマン・ガリ役のピエール・ニネ(『イヴ・サンローラン』)と、自らの出自から母役を作り込んだシャルロット・ゲンズブール。

家でも外出先でも映画が観られる時代になったけれど、照明が落ち、予告編に続いて本編が始まる劇場での映画体験って特別なもの! 2020年創刊30周年を迎えるフィガロジャポンは、松竹マルチプレックスシアターズが運営する新宿ピカデリーや全国のMOVIXなどを主な上映劇場とし、世界各国から選りすぐりのミニシアター系作品の公開に力を入れるピカデリー プライム レーベルとタッグを組み、「人生の一本」となるような劇場での映画体験を応援します。7作目は永遠のパリジェンヌ、シャルロット・ゲンズブールが強き母親役を演じる『母との約束、250通の手紙』(2017年)です。母と息子という、どの時代も、どんな国の人でも、「自分ごと」として考えうるテーマ。憧れのパリジェンヌだったシャルロットが、髪振り乱しながら息子の成功に執着する母を演じ、それを熱く受け止めながら冷静に分析する息子役を、『イヴ・サンローラン』(14年)で注目されたパリジャン、ピエール・ニネが演じます。原作者の数奇な人生を軸にしながら、戦時のヨーロッパを逞しく生きた人々の物語をお楽しみに。

天才ヨーロッパ人、ロマン・ガリの人生。

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ロシアから流れ着いたユダヤ系親子は街の人々に蔑まれながらも互いの存在を支えに懸命に生きる。そして、母は息子に英才教育を施すため、詐欺まがいの高級服飾店を開くが……。

フランス人3人に「ロマン・ガリってどういう人? どんなイメージ?」と聞くと、3人揃って「天才」という言葉を返してきた。生涯一度しか受賞できない、フランスで最も権威のあるゴンクール賞をなんと別名を用いて史上唯一、2度受賞。第二次世界大戦中にはレジスタンス部隊の自由フランス軍に身を投じ、戦後は外交官として腕を振るった。また、彼の小説の映画化としては、名匠サミュエル・フラー監督作『ホワイト・ドッグ』(1981年)が名高いが、衝撃の物語は元妻ジーン・セバーグの身に起こった事件から着想を得ており、そのセバーグを主演に彼自身、『殺し』(71年)など、映画監督としても活躍した。マルチな才能を誇りながら、66歳で自らその命を絶ったロマン・ガリ。ロシア帝国領ヴィリナ生まれのロマン・カツェフをフランスの文豪ロマン・ガリに成らしめたもの、それは母と息子の海よりも深い愛だった。本作『母との約束、250通の手紙』は、彼の小説『夜明けの約束』を基に、激動の時代と母と子の狂おしい想いを描き出す。

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無償の愛を注いだ、絶対的存在の母の面影。

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第二次世界大戦中に空軍入りした息子には「小説を書き続けなさい」と叱咤激励する母からの手紙がたびたび届く。

映画は、ピクサーアニメ『リメンバー・ミー』(2017年)でも描かれたメキシコの「死者の日」に、ガリが母の生きた証を蘇らせんと『夜明けの約束』を書き上げる場面から始まる。そこから月日はさかのぼり、舞台はユダヤ系ロシア人の母子が流れ着いた雪降るポーランドへ。息子ロマンは将来、ノーベル賞作家となり、外交官になり、空軍の士官にもなると、母ニーナ・カツェフは絶叫する。どんな嘲笑を受けようと、ニーナは大切な一人息子のために雪を踏みしめ金策に回る。そんな猛母の苦難と献身を見つめるロマンもまた、彼女の期待にこたえることを誓う。
映画好きの母に手を引かれて映画館通いするなど、この幼年時代には後に開花するロマンの才能を育んだエピソードがさまざまに描かれる。「男が戦う理由は3つ。女と名誉とフランスだ!」と母は教え込み、射撃の手ほどきを受けさせる場面では、後に妻のジーン・セバーグとの仲を疑いクリント・イーストウッドに決闘を申し込んだ逸話が蘇り、ニヤリとさせられる。

自由の地フランスでなければ!

そして、この“なぜフランスなのか”という問題は、この映画を味わううえで大きな要素。ロシア革命で国を追われた流浪のユダヤ人ニーナが“自由と芸術の国フランス”にどれほど憧れたか。凍てつくポーランドから南仏のニースに移り住んだ母子の心を、地中海の輝く海がどんなに癒やしたか。実際、フランスはロマン21歳の時に国籍を与え、ポーランドを離れていなかったら収容所送りになったであろう母子をヒトラーの脅威から守った。母の先見の明は神がかっていたのだ。
本作でセザール賞の主演女優賞にノミネートされたシャルロット・ゲンズブールが、この母ニーナを演じた意味も大きい。シャルロットの亡き父セルジュ・ゲンズブールもまた、両親の時代にパリに流れ着いたロシア系ユダヤ人。夢見がちないっぽうタフで、エキセントリックすぎて、ときに滑稽に見えるニーナを、シャルロットはロシア語訛りのフランス語を話した自身の祖母からイメージして肉づけしていったという。過剰な愛の呪いに翻弄されながらも、母の望みを叶えるべく邁進する青年時代から30代のロマンを演じるのは、『イヴ・サンローラン』『婚約者の友人』のピエール・ニネ。彼らの渾身の演技で、最愛の息子に死線を乗り越えさせ、作家として大成させた母の壮絶な愛が浮かび上がる。タイトルの『250通の手紙』の秘密とは?『夜明けの約束』を書き終えた30代のロマンが抜け殻のように佇む理由は?それらが描かれる終盤からは、母子の哀切な歩みと狂おしい想いが胸にあふれ、涙が止まらない。

『母との約束、250通の手紙』
●監督・脚本/エリック・バルビエ 
●出演/ピエール・ニネ、シャルロット・ゲンズブール、ディディエ・ブルドン、ジャン=ピエール・ダルッサンほか 
●2017年、フランス・ベルギー映画 
●131分 
●配給/松竹
●1月31日より公開 
© JD PROD – LES FILMS SUR MESURE – STUDIOCANAL FRANCE 3 CINEMA -GV PROD

ピカデリー プライム レーベル作品『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』の試写にご招待します!
※応募締め切りは2020年2月5日

試写会応募はこちら

texte : REIKO KUBO

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