「齊藤工 活動寫眞館」について

齊藤工 活動寫眞館・拾陸 MOROHA。

「齊藤工 活動寫眞館」について

俳優、斎藤工。そして、映画監督、齊藤工。表舞台であらゆる「人物」を演じ、裏方にまわり物語をクリエイトしていく。齊藤工がいま見つめるものとは、何か。彼自身がシャッターを切り、選び出す。モノクロームの世界に広がる、「生きた時間」を公開していきます。今回は、「音楽」というジャンルにおさまりきらない快進撃を続けるMOROHAのふたりが登場。

「メロディや歌詞に惹かれて音楽を聴くのは普通ですが、MOROHAの表現、音楽はそれと少し違って、心を掴まれる映画を観た時の感覚に似ているんです。2時間の映画を観た人は、2時間すべてをインプットするというよりは、描写が映画の残り香のように記憶に残っていく。MOROHAの音楽はその1曲1曲に、映画を観て心に残っていくようなものが、楽曲としてちゃんと切り取られているというすごさがある」

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齊藤がこう感じるにいたるのに決定的だったのは、松居大悟監督の『アイスと雨音』だという。74分ワンカットで描かれた青春譚の劇中で、MOROHAが生演奏をしたことも大きな話題となった。

「リラックスするため、自分を鼓舞するために音楽を聴くということをしてきましたが、MOROHAの音楽はそれまで以上に、ものを作るときに聴くようになりました。アフロさんの緻密でありながらむき出しの感情と言葉を、UKさんが旋律でアートにしていく、その関係性は映画そのもの。僕は映画の重要な部分の半分は音楽だと昔から思っていて、むき出しの人間の成分に対してMAで音を入れることで映画にするという、MOROHAのふたりのバランスにはまさにそういう黄金比のようなところがある。ある意味、音楽という枠の中に収まっていない人たち」

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齊藤が実際にMOROHAと出会ったのは今年4月、くまもと復興映画祭だった。いかにMOROHAの音楽に励まされていたかを彼らに伝え、さまざまな話をして以来、世代を超えて“同級生のような”友情が生まれたという。その齊藤に撮影してもらう場所としてMOROHAのふたりが選んだのは、彼らのお気に入りの店である浅草のザ・ブーツ・ショップ。

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10月初旬の某日の夕方、最初に店に現れたのはギタリストのUK。彼はアコースティックギターを弾きながら肘でギターを叩いてリズムも奏でるという奏法で、まさに映画のように豊かな音楽を生み出している。店から近い街に住んでいるUKは、好きな秋葉原に近いからその場所を選んだという。秋葉原が好きなのは、秋葉原を訪れる人には絶対に秋葉原でなくてはならない理由があるから。何となく渋谷、というのとは違う、と語るその言葉が、MOROHAの音楽に通じるようにも感じられて印象的だ。

その後齊藤が到着してロケハンを行い、MOROHAのMCアフロも仕事が終わった後に駆けつけた。UKは黒いTシャツに辛子色のコーデュロイパンツ、アフロは白いTシャツにカーキベージュのパンツ、上にデニムのジャケットを着てカーキのニット帽で、ふたりともリラックスしたムード。ライブでの彼らはエネルギーに満ちあふれ、強烈な体験を観客全員にもたらすけれど、本当に同じ人たちだろうかと思うほどに穏やかだ。

「普段の彼らの佇まいはすごくナチュラルに見えますが、それはたぶんリラックスしながらアンテナを張っている状態。これがあってMOROHAの楽曲が生まれるんだなと感じます。ギアをニュートラルにしていて、ライブでは一気に上げていく。合気道の達人のオンとオフのような(笑)」

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最初に、窓際のドライフラワーと一緒にUKを撮影。UKさんとドライフラワーは合う、と齊藤が言った。

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アフロは、フィガロジャポン本誌を見ただけでは分からないかもしれないが、実は床に横たわって撮影。その後、店の外に出て、さらに撮影を続けた。

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以前、MOROHAはザ・ブーツ・ショップでライブをしたことがあるという。店長が彼らのファンで、直接連絡をしたことから実現した。最後に齊藤が撮影したのは、ふたりの靴。そのライブの日に店からプレゼントされたもので、アフロとUKは実際にここの靴を愛用しているそうだ。

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「彼らは“生物”として美しいと思います。自分の宿命というか、やるべきことを見つけた人たちなんですよね。MCとギタリストという、職業的なこともありますが、ここで戦うんだというフィールドを見つけた人たちという感じがします。

ヒップホップおよびラップはアメリカで生まれた黒人の文化ですが、MOROHAはそこに対して俳句や短歌という次元の、和製の言葉を凝縮して置いていく。本当の意味での詩ですよね。MOROHAの歌詞には好きなワードがいっぱいありますが、『そこそこの英語よりも飛び切りの母国語』という詞は、日本でものを作っている人たち、特に僕ら映画人はみんな胸に刻むべき言葉だと思います。

自分も含めて、母国語の『とびきり』のところを見ていない人が意外と多く、自分を拡大させるための何かを外へ求めに行ってしまいますが、実はいまある環境や自分のルーツの中に、掘り起こすべき宝はある。世界で評価されている映画はたぶん、すべてそうなんです。MOROHAのたった一行の言葉に核心を突かれたという(笑)。本当にそういう言葉が多いです。心のどこかに引っかかって、確かめるために聴き直すうちに、自分の心の輪郭が見えてくる」

“そこそこの英語よりも飛び切りの母国語 海の向こうだって絶対に届くよ”
−−「二文銭」(齊藤工 選)

MOROHAのライブで大いに心を揺さぶられる経験をしたフィガロ編集者ふたりも、心に残る多くのフレーズの中からひとつずつ挙げてみたい。

“音楽より大切な人 音楽で幸せにしたい”
−−「恩学」(編集KIM 選)

“だって「諦める」なんて憧れの言葉で いつかは辿り着きたい位です”
−−「遠郷タワー」(編集YUKI 選)

ぜひMOROHAの音楽を聴いて、齊藤が「濃密な短編集のよう」だと語る、その世界に浸ってほしい。彼らの言葉と旋律を洪水のように浴びながら、ときに追いつめられ、ときに鼓舞されて、心の奥底に渦巻くまだ名前のない感情や思考に、ぱっと鋭い光に照らし出されるような感覚を味わえるはずだ。

MOROHA
2008年にMCアフロとギターUKによって結成されたデュオ。アフロの鋭く強い言葉と声、UKの端麗なギターという構成のライブは、観る者の心を鷲掴みにする迫力。最新アルバムは今年6月に発売された『MOROHABEST ~十年再録~』(ユニバーサル)。今春公開の松居大悟監督の映画『アイスと雨音』にも楽曲提供した。現在、精力的に日本全国でライブ活動中。
moroha.jp
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『MOROHA BEST~十年再録~
ユニバーサル
初回限定盤 DVD付¥3,445、通常盤¥3,024

Special Thanks:
ザ・ブーツ・ショップ The Boots Shop
台東区花川戸2-3-3
Tel. 03-6802-8083
営)15:00~20:00(月、金) 13:00~20:00(土、日)
休)火〜木
http://www.craftbank.net
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TAKUMI SAITOH
移動映画館プロジェクト「cinéma bird」主宰。監督作『blank13』(18年)が国内外の映画祭で7冠獲得。アジア各国の監督6名を迎えて製作されたHBOアジアのドラマ「Folklore」に日本代表の監督として参加、「TATAMI」を手がける。企画・プロデュース・主演を務める『万力』が20年に公開予定。www.b-b-h.jp/actor/saitohtakumi

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