オペラ座のコンクール昇級者、気になる若手ダンサーは?

パリとバレエとオペラ座と。

通常は11月に開催されるオペラ座バレエ団のコール・ド・バレエの昇級コンクール。2018年度昇級者を決めるコンクールは、諸般の事情から該当年にずれこみ3月2、3日に開催された。2日が女性、3日が男性ダンサーで、結果は両日ともコンクール終了後に発表され、昇級者たちは現在すでに新しいランクで活躍中である。コンクールで争われた空席は、男女共コリフェが2席、スジェが2席、そしてプルミエが1席だった。コリフェに上がればコール・ド・バレエの代役ではなく公演が保証され、スジェとなればセミ・ソリストとして舞台で踊るチャンスが待っていて、プルミエに上がれば頂点エトワールまであと一歩ということになる。世界のバレエ団の中で昇級コンクールを開催するのはオペラ座だけ。1860年からの伝統なのだ。バンジャマン・ミルピエ元芸術監督は在職中、コンクールを廃止したかったのだが、ダンサーたちが存続を希望したというエピソードがある。

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カドリーユから1位でコリフェに昇級したアクセル・マリアーノ。オペラ座バレエ学校で5年学び、2014年に入団した。ポール・マルクと同期だ。
(portrait-photo:Julien Benhamou/Opéra national de Paris, stage-photo:Sébastien Mathé/Opéra national de Paris)

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カドリーユから2位でコリフェに昇級したシモン・ル・ボルニュ。臨時団員として2014年からオペラ座バレエ団で活躍し、2016年に正式団員になった。コンテンポラリー・ダンスでより個性を発揮するダンサーである。
(portrait-photo:Julien Benhamou/Opéra national de Paris, stage-photo:Sébastien Mathé/Opéra national de Paris)

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コリフェから1位でスジェに昇級したフランチェスコ・ムラ。入団は2015年。(portrait- photo:Julien Benhamou/Opéra national de Paris, stage-photo:Sébastien Mathé/Opéra national de Paris)

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コリフェから2位でスジェに昇級したパブロ・レガサ。オペラ座バレエ学校で6年学び、2013年に入団した。コリフェ時代にすでに『ラ・バヤデール』のブロンズ・アイドル、『ドン・キホーテ』のバジル役などに配役されている。
(portrait-photo:Julien Benhamou/Opéra national de Paris, stage-photo:Sébastien Mathé/Opéra national de Paris)

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2014年の入団以来コンクールごとに昇級し、今年、プルミエ・ダンスールの1空席を獲得したポール・マルク。
(portrait-photo:Julien Benhamou/Opéra national de Paris, stage-photo:Sébastien Mathé/Opéra national de Paris)

コンクールは男女ともクラスごとに課題曲があり、それに加えて各自が選んだ自由曲を踊る。その結果、昇級者が発表されるのだが、同時に昇級する、しないに関わらず各クラス第6位までの名前が発表されるのが通例だ。今回のコンクールでは女性のスジェ9名がプルミエール・ダンスーズの1席を目指したのだが、過半数を得たダンサーがいなかったということで該当者なしという結果に。そして、6位までの順位も当然発表されずじまいとなり、オペラ座のバレエ・ファンを不完全燃焼させた。

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カドリーユから1位でコリフェに昇級したキャロリーヌ・オスモン。入団は2011年。昨年末の『プレイ』では、アレクサンダー・エクマンの抜擢により大活躍。
(portrait-photo:Julien Benhamou/Opéra national de Paris, stage-photo:Sébastien Mathé/Opéra national de Paris)

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カドリーユから2位でコリフェに昇級したビアンカ・スクダモア。オーストラリア人で、入団は2017年。
(portrait-photo:Julien Benhamou/Opéra national de Paris, stage-photo:Sébastien Mathé/Opéra national de Paris)

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コリフェから1位でスジェに昇級したロクサーヌ・ストヤノフ。オペラ座バレエ学校で3年学び、2013年に入団した。DVD『未来のエトワールたち パリ・オペラ座バレエ学校の1年間』の中で2012年の入団試験に落ちて泣いている彼女、いまや昔だ。
(portrait-photo:Julien Benhamou/Opéra national de Paris, stage-photo:Sébastien Mathé/Opéra national de Paris)

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コリフェから2位でスジェに昇級したオーバーヌ・フィルベール。2004年に入団し、2010年にコリフェに昇級した。バンジャマン・ミルピエ元監督の時代、彼が創作した『Clear, Loud, Bright ,Forward』と『la nuit s’achève』に配役されている。
(portrait-photo:Julien Benhamou/Opéra national de Paris, stage-photo:Sébastien Mathé/Opéra national de Paris)

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今年の昇級者9名の中から、名前を覚えておきたい3名を簡単に紹介しよう。

ポール・マルク(プルミエ・ダンスール)

1席を巡ってコンクールに参加した男性のスジェは7名。そのうち5名は団員歴もそこそこ長く、ソリストとして舞台数をこなしているという ベテラン・ダンサーである。 コンクールの結果、昇級はしなかったが2位にランキングされたのはジェレミー・ルー・ケール。2011年に入団した長身、美系のダンサーだ。2月に公演された『オネーギン』ではレンスキーという準主役に配役されていたので、監督やメートル・ド・バレエの期待を担っているダンサーだと察していいだろう。こうした先輩たちを差し置いてプルミエ・ダンスールに上がったのは、ポール・マルク。オペラ座のバレエ学校で6年学んだのち、2014年に入団。コンクールに参加するたびに昇級し、オペラ座のピラミッドを着々と上がってきて、そして入団4年にしてプルミエ・ダンスールというわけだ。

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『ドン・キホーテ』でエトワールのドロテ・ジルベールを相手に堂々と主役を踊ったポール。photo:Svetlana Loboff/ Opéra national de Paris

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『オネーギン』ではマチアス・エイマンがエトワールに任命された当たり役レンスキーに挑戦。photo:Julien Benhamou/ Opéra national de Paris

驚き? いや、彼のダンスを見ればそれも納得! 最初に参加したコンクールでは、彼が踊り終わるや、会場に居合わせた誰もが彼のカドリーユからコリフェへの昇級を確信したと耳にした。バレエ学校で身につけたフレンチ・エレガンス、しなやかなつま先、ブレのない体軸……。今シーズンのオペラ座での活躍は目覚ましく、年末はドロテ・ジルベールをパートナーにして『ドン・キホーテ』で主役バジルに挑戦し、演技者としても十分な力の持ち主であることを証明した。『オネーギン』ではマチアス・エイマンがエトワールに任命された準主役のレンスキー役に早くも配役され、4月末から始まるアンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケルの『浄夜』では、珍しくコンテンポラリー作品を踊る。そして、シーズン閉幕作品である『リーズの結婚』では主役コラスを踊ることが発表された。パートナーはレオノール・ボーラックだ。バレエ・ファンたちが色めきたつのは、プルミエ・ダンスールあるいはプルミエール・ダンスーズがエトワールと踊る ことだ。というのも、エトワール任命の可能性がそこに感じられるからである。さあ、どうなるか。もっとも『リーズの結婚』では、エトワールのドロテ・ジルベールとプルミエのフランソワ・アリュというカップルも踊る。2014年からプルミエ・ダンスールの彼。この4年間、彼のエトワール任命を期待する声は大きくなるばかり。さあ、何かが起きるか、いや何も起きないか、『リーズの結婚』!

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コリフェに上がりたての頃、『ゴールドベルグ変奏曲』で配役されていたダンサーたちが続々怪我で降板し、ゲネプロの前日に配役されたポールが毎晩見事に舞台を務める、という驚異的な出来事があった。photo:Benoïte Fonton/ Opéra national de Paris

フランチェスコ・ムラ(スジェ)

このポール・マルクの後をピタッと1年遅れでくっついて上がっているのが、イタリア人のフランチェスコ・ムラである。ジェレミー・ベランガールの引退以降、オペラ座には野生の匂いを舞台に残す男性ダンサーが不在だったが、ついに現れたのだ。両親ともにダンサーだったという彼。2015年に入団し、今回のコンクールでスジェに上がった。小柄ではあるが、コール・ド・バレエのダンサーの中で群を抜くそのダンスの正確さと力強さで観客の目を捉える。スピーディな動きのときでもおろそかにされることのない丁寧さ、きれいなつま先からはエレガンスが漂う。

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カドリーユからコリフェに上がった時のコンクールより。高いジャンプはお手の物だ。photo:Sébastien Mathé/ Opéra national de Paris

昨年末の『ドン・キホーテ』では、ジプシーの首領役を踊り、精悍な動きと鋭い眼力で拍手喝采を浴びた。本人がいつか踊りたいと夢見ているのは、主役のバジルだという。今回のコンクールの自由曲に選び、ぜひとも彼が全幕を踊るのを見てみたいものだと思わせる出来栄えを披露。師とあがめるミーシャことバリシニコフが踊ったローラン・プティの『若者と死』も、もう少し大人になったところで彼が踊ったら素晴らしいものだろう、と想像させる。今期はこれからアンヌ・テレザ・ドゥ・ケースマイケルの『大フーガ』と『浄夜』に配役されている。来シーズン、スジェとなった彼のさらなる活躍に期待したい。

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2015年の学校公演では『オーニス』をアンドレア・サーリ(左)、シュン・ウィン・ラム(右)とトリオで踊った。photo:David Elofer/ Opéra national de Paris

ビアンカ・スクダモア(コリフェ)

2017年9月に入団したビアンカ。もし通常通り11月にコンクールが行われていたら、研修生なのでコンクールには参加資格がなかったわけである。しかし 前述したように今回のコンクールは3月だったので、9月の入団者も正式団員としてコンクールに参加できたのだ。それだけにコリフェの2席を競ったカドリーユが17名、と大勢。その中でラッキーにもコンクールに初参加できたビアンカが、昇級を勝ち得たのである。

2015年のローザンヌコンクールでファイナリストのひとりだった彼女を覚えている人もいるだろう。この時も、今回のコンクールでも彼女の強みだと思わせるのは、音楽と一体化してダンスに込める情感だ。振付けをたどることに精一杯という他のコンクール参加者を大きく引き離していた。明るい笑顔と存在感の持ち主である。今後、クラシック作品とコンテンポラリー作品の両方で、彼女の活躍を見ることができそうで楽しみだ。

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フォーサイスの『the vertiginous thrill of exactitude』を踊るビアンカ。photo:Francette Levieux/ Opéra national de Paris

大村真理子 Mariko Omura
madameFIGARO.jpコントリビューティングエディター
東京の出版社で女性誌の編集に携わった後、1990年に渡仏。フリーエディターとして活動した後、「フィガロジャポン」パリ支局長を務める。主な著書は「とっておきパリ左岸ガイド」(玉村豊男氏と共著/中央公論社)、「パリ・オペラ座バレエ物語」(CCCメディアハウス)。

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