ダンサーの動きから生まれるポエジーを一冊の写真集に!

パリとバレエとオペラ座と。

ジュリアン・ベナムーって誰?

ジュリアン・ベナムーという写真家の名前を聞いたことがあるだろうか。バンジャマン・ミルピエ元芸術監督の時代、パリ・オペラ座のダンサーたちの新たなオフィシャルポートレートの撮影が2名のカメラマンに託された。エトワールの撮影はジェームス・ボルト、プルミエールおよびコール・ド・バレエ全員の撮影をしたのがジュリアン・ベナムーである。ジュリアンはオペラ座のダンサーに最も近いカメラマン、といっていいだろう。

10年くらい前にオペラ座のバレエ公演のリハーサルや舞台撮影を始めたジュリアン。それ以前はポートレートを主に撮影していたが、リハーサルやゲネプロを撮影するためにオペラ座に通い始め、それ以来ダンスが情熱を傾ける対象となっているそうだ。

「オペラ座で仕事を始め、かなり早い時期に、ダンスというものは心に訴えてくる芸術だと感じました。言葉ではなく、視線や身体のポジションで表現しますね。アーティストたちがビジュアル的に何かを表現する。撮影する僕にとって、これはまさにフォトジェニックなのです」

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エトワールのレオノール・ボーラック。現在Poiretのアーティスティック・ディレクターである、中国女性クチュリエのイーチン・インによるドレスをまとって。photo:Julien Benhamou

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エトワールのジェルマン・ルーヴェによる、見事なポーズ。photo:Julien Benhamou

こうしてダンスに魅了された彼は、ダンサーたちのプライベートな時間を利用して動きや身体をテーマにした写真を撮影し始めた。特に何かのためというのではなく、写真家としての創造欲からである。そうした写真の存在を知ったある編集者が、彼に写真集の出版を提案した。1年半前のことだ。

「でも僕は本を作るなら、明快なテーマで撮り下ろした写真ばかりを集めたものにしたいと思ったんです。それで、アーティストとして僕の心の琴線に触れ、かつ舞台の外でも人間的に惹かれるダンサーたちに声をかけ、彼らの忙しい仕事の合間を縫って撮影をしました」

ダンスという芸術は何かを求め、美しく官能的な動きの一瞬を彼はとらえ続け……その結果出版されたのが、『La Poésie en mouvement(動きのポエジー)』。300ページからなる見事な一冊である。アスリート、アクロバット、曲芸師たちも被写体となっているが、メインはオペラ座のダンサーたちだ。

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エトワールのヴァテンティーヌ・コラサンテ。photo:Julien Benhamou

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マリ=アニエス・ジロ。photo:Julien Benhamou

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ダンサーたちとレンズを介して対話。

「撮影場所はいろいろです。オペラ座の中でも撮影しますけど、僕はダンサーをハリウッドのダンサーのように見ていて……だから、そのままのパーソナリティで撮影するのではなく、彼らと一緒に洗練されたイメージを作り上げたのです。コスチューム、背景にこだわり、映画的な写真になっています。ダンサーが僕と一緒に何かをしよう、という希望が撮影の出発点。それからアイデアを探し、アイデアが決まると自ずと撮影場所が見えてきます。現場ではダンサーに自由にポーズをさせてから、撮影する動きを一緒に決める、というような方法で撮影を進めました。写真集のための撮影をスタートする前、何も見せるものがない時点では衣裳や場所を借りるのに苦労しましたね。ダンサーからの信頼を得ることも、そうです。でも撮影を始めて、どのような意図の写真集なのかを見せられるようになったら、状況が変わってすべてがスムースに進行できるようになりました。写真において僕のスタイルは光にあります。だから、外での撮影でも自然光ではなく毎回照明はクリエイトしました。時を止めて一瞬を凝結した写真の中に、撮影しているときには見えないものが見えることがあって……これは興味深いことでしたね」

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11月に開催された昇級コンクールの結果、来年1月1日からプルミエール・ダンスーズのマリオン・バルボー。photo:Julien Benhamou

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バルマンのオリヴィエ・ルスタンがバレエ『ルネッサンス』のためにデザインした衣装をつけたアマンディーヌ・アルビッソンとオードリック・ブザール。photo:Julien Benhamou

被写体は女性のメインがレオノール・ボーラック、ヴァランティーヌ・コラサント、マリオン・バルボー、マリ=アニエス・ジロ。男性はフランソワ・アリュ、ジェルマン・ルーヴェ、ユーゴ・マルシャン、ミカエル・ラフォン……。

「フランソワ・アリュとは写真集のプロジェクト以前から、互いの旺盛なリサーチ精神をもとにプライベートに撮影を行っています。海岸をはじめ撮影場所はさまざま。ミカエル・ラフォンはこの写真集のタイトルを体現するダンサーといえますね。姿形の美しさもさることながら、表現力も素晴らしいです」

舞台写真を集めたダンスの本とは一線を画す写真集。ダンサーの動きから生まれたポエジーがページの間から溢れ出るような美しい一冊である。

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プルミエ・ダンスールのフランソワ・アリュ。写真集に納められた彼の写真は彼の身体能力の高さが伺える、驚くべきものばかり。photo:Julien Benhamou

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ミカエル・ラフォン。彼はジュリアンが撮影したメルセデス・ベンツの香水The Moveの広告のモデルも務めている。photo:Julien Benhamou

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ミカエル・ラフォンとクロエ・ベルナール。photo:Julien Benhamou

10月10日には2区のエレファント・パナマで、出版記念のイベントが開催された。これは本の購入予約者を対象にしたもので、写真の展示に加え、マリオン・バルボーなどオペラ座のダンサーたちによる5作品の公演という内容だった。ジュリアンとダンサーたちの信頼と友情を物語るようなイベントである。

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オペラ座のダンサー数名が踊った出版記念パーティーにて。左から3番目の男性がジュリアン・ベナムー。

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ダンサーの身体、情熱、動きを介した表現の美しさが満載された写真集。サイズは24×30cmで、300ページに280点近い写真を収めている。Editions Incarnatio刊行。50ユーロ。購入はwww.normal-magazine.com/product-page/julien-benhamou-la-poesie-du-mouvementにて。また、オペラ座内のブティックでも販売される予定だ。ジュリアンのサイトでは写真集の中の写真も含め、彼が撮影したダンス及びダンサーの写真のプリントの販売を行っている(www.julienbenhamou.com)。

大村真理子 Mariko Omura
madameFIGARO.jpコントリビューティングエディター
東京の出版社で女性誌の編集に携わった後、1990年に渡仏。フリーエディターとして活動した後、「フィガロジャポン」パリ支局長を務める。主な著書は「とっておきパリ左岸ガイド」(玉村豊男氏と共著/中央公論社)、「パリ・オペラ座バレエ物語」(CCCメディアハウス)。

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