穏やかな雰囲気のアパルトマンに、白い花がよく似合う。

PARIS DECO

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Marie-Caroline Selmer/マリ・キャロリーヌ・セルメール
バッグブランドClaritoneオーナー・デザイナー photo:Mariko Omura

2年前にバッグのブランドClaritone(クラリトーヌ)を創業し、デザインもしているマリ・キャロリーヌ。サキソフォンとクラリネットの製造で知られた家に生まれた彼女は、サキソフォンの金具をブランドのロゴにし、バッグにはジャズ・アーティストの名前をつけている。フランスの職人技にこだわったバッグは少々高価だが、赤や黄色といった色使いが新鮮で25〜35歳のパリジェンヌたちに好評だ。初夏にはヴィクトーワル広場の近くに、念願のブティックをオープン。生まれて間もないブランドなので、彼女自身がブティックで奮闘する日々である。

ゆっくりと過ごす時間が今ほとんどないという彼女のアパルトマンは、パリに隣接する高級住宅地のヌイイー市のアールデコ建築の建物が並ぶ一角にある。ご主人と二人暮らし。2階なので太陽に恵まれないのがちょっと難点というが、シンプルにまとめられた穏やかな雰囲気のインテリア。白い花がよく似合う空間だ。「ここに住み始めたのは6年前。インテリアって5年くらいすると、変えたくなるものでしょう。それで今年に入ってからリビング、寝室の順に内装のリフレッシュをしていったの。以前は大きな家具がスペースを占めていたのだけど、それらは地下の倉庫で保管して……。私、バッグには強めの色を使っているけど、インテリアにはソフトな色合いばかりを集め、コクーニング的空間を目指したのよ」

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日差しに恵まれないアパルトマンなので、壁は白で。ダークカラーの家具が空間を引き締めている。photos:Mariko Omura

 

玄関のドアを開けると廊下があり、右側に羨ましいほどの収納スペースが並んでいる。左側が縦長のリビングルーム。ここはゲストを迎えるだけでなく、在宅時間の少ないマリ・キャロリーヌが寛ぎを見出せる大切な場所だ。座り心地の良い赤いソファで、インテリア雑誌を手にとって、30年代スタイル、コンテンポラリー、オスマニアンといった様々なパリのアパルトマンのインテリアを眺めて、ヒントを得たり……。「AD」「Coté Paris」「Idéa」などのインテリア雑誌を愛読している。そして、ここは夫妻にとっても大切なスペースである。朝食はキッチンで済ます二人だが、ディナーはこのリビングのコーナーを占める食卓にて。キャンドルの灯りで音楽をかけて、ゆったりとした時間を過ごす。

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損傷のある古い家具より、新品を好むマリ・キャロリーヌ。赤いソファやその右脇に置いているランプ(上記ポートレート写真参照)は、http://www.made.com/fr/でネットショッピングした。photos:Mariko Omura

 

窓の近くのふたつのソファが向かい合うコーナーには、モロッコの旅で見つけたカーペットが敷かれている。色数の少ない珍しいタイプだ。壁にかけた額には、それぞれ思い出のある作品をおさめ、一種のプライヴェートギャラリーのよう。例えば、「なぜシャガールか。それは、昔学校のバカンス中にデッサン教室に入ったことがあって、さあ、これを模写してみましょう! という最初の作品がシャガールだったからよ。この画家のソフトな雰囲気が好きだわ。ロートレックは、夫が画家と同じくトゥールーズの出身で、彼が私を最初に連れて行ってくれたのがトゥールーズ=ロートレック美術館だったから。奥に掛かってるのはジャンヌ・マリー・ロビックという若いアーティストの作品で、彼女は静物画なども描いているけど、これは芸者のシリーズなの。でも、芸者って言われないとわからないくらいアブストラクト。眺めているだけで、色のミックスとか、とてもインスパイアされるわ」

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左:赤いソファの前のテーブルに置かれた1冊。このカバーがバッグの色のインスピレーション源となった。右:「夫の両親はよく旅をするの。このミニカーはダカールかどこかアフリカの旅のお土産よ」 photos:Mariko Omura

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廊下に戻ろう。ここには、なんとも素晴らしいヴィンテージのデスクが置かれている。探し回ってやっと見つけたという50年代の物で、状態はパーフェクト。壁にかけた鏡のフォルムとぴったりマッチしている。彼女がインテリアの手直しを最後に終えたのがこの廊下なのだそうだ。パリにいるときはクリニャンクールの蚤の市やヴェルサイユのアンティーク街で、夏のバカンス中はレ島や骨董市で名高い南仏のイル・シュル・ソルグで、彼女は古物探しを楽しんでいる。「目下、夫と二人できれいな版画を探しているの。美しい品を掘り出して、投資する、っていうのは他の誰かの歴史を家に持ち込むことで、このデスクもそうした品のひとつね。でも、状態の良い古い品を見つけるのってとても大変。私はブロカントで売ってるような損傷のある品は好きじゃないの。それくらいなら、家具などは新品のほうがずっといいわ」

両親が17世紀や18世紀の家具ばかりで整えていた家で育った彼女。その反動で、一時期冷たいくらいにミニマルなインテリアにしていたこともあるとか。

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廊下に置かれた50年代のライティング・ビューロー。デザインが気に入る無傷のヴィンテージ、という条件で探し回ってみつけた。photos:Mariko Omura

 

廊下の奥の左の最初の部屋が夫妻の寝室。ひたすらソフトな雰囲気を目指したそうで、ブルー系、グレー系の優しい色合いでまとめられている。壁の額もブルー。そこにアクセントとして置かれているのは、祖母から譲られたという黒いワイヤー・トルソーだ。本来の目的のように服をかけてしまったらトルソーの美しさが隠れてしまうのでと、お気に入りのバッグをかけて装飾的に使用。寝室の壁にも思い出に満ちた額が掛けられている。モロッコのマジョレル庭園を訪れた際に買った複数の絵葉書だ。「ミュージアムなどに行くと、必ず私は絵葉書を買うのよ。というのも、小さい時に両親に連れられて美術館に行くと私たち姉妹はそれぞれ3〜4枚の絵葉書を選んでいいことになっていて……。その習慣が今も続いているのね。以前住んでいたアパルトマンには、こうした絵葉書の額をたくさん壁にかけていたのよ。山ほどの絵葉書は、もちろん地下の倉庫で保管しているわ」

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寝室はソフトなグリーン、グレーでまとめて安らぎの空間を実現。

 

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壁にかけたパリの風景画も淡いブルー系。クッション・カバーは単色でまとめず、モチーフもミックスした。

 

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静かなトーンの寝室。ベッドの向かい側、鮮やかなClaritoneのバッグが目をひく。壁にかけた額には、モロッコの旅で購入した絵葉書を飾っている。photos:Mariko Omura

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廊下のさらに奥は右がバスルーム、左がマリ・キャロリーヌの仕事部屋である。家中の内装を全部やり終えたところながら、もう迷い始めていることがある。というのも、彼女は壁紙が大好き。しかし、日当たりに恵まれないアパルトマンなので壁は白いままで手をつけなかったのだが……。「南向きの家だったら、ためらうことなく壁紙を貼っていたでしょうね。インテリアに魅力をプラスしてくれるのは確かなことだから。それで、今考えているのは、部分的に壁紙を使ってみるのはどうかしらって。例えば廊下の収納。扉全体を壁紙で覆ってしまうのは鬱陶しいけれど、扉の一部を額のように見立ててそこに壁紙を部分使いするのも悪くないように思えてるの。グレー系なら重苦しくもならないし……」

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仕事場。部屋の一角にコンピューターを置き、書斎風に。きれいな本はきれいに見せたい、と白いシリーズだけは特別の書棚に並べている。暖炉の前のテーブルは、ブティックでも同じものを使用するほどのお気に入りだ。photo:Mariko Omura

 

大好き! という壁紙に彼女が積極的にならなかったことには、実はもうひとつ理由がある。ご主人があまり壁紙には乗り気じゃないということだ。しかしブティックなら、そうした配慮は不要! かくして、壁の一部にジオメトリックなモチーフの壁紙を使用しただけでなく、秋から、月替わりで2つのウインドーに季節を感じさせる壁紙を使うことにしたそうだ。

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左:モロッコのハマムのようなバスルームの壁は前の住民によるもの。マリ・キャロリーヌはそれに合わせて、ベンチタイプの木の棚を置いた。右:バスルームの窓から中庭越しに見える建物の階段。アールデコのガラスはいかにも30年代の建築物らしい。photos:Mariko Omura

 

 

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マリ・キャロリーヌがデザインしたバッグを並べた店内。近々、革小物と新しいデザインのバッグが仲間入りする。ブティックの一方の壁は白いペイントで、もう片方には幾何学模様の壁紙を貼った。photos:Marine Kapur

 

Claritone
8 Rue de la Vrillière,
75001 Paris
営)11:30~19:00
休)日、月

 

<マリ・キャロリーヌのお気に入りのブティック>

Etat d'Esprit Interiors
30 RUE PASTOURELLE
75003 PARIS

「デコレーターの友人カトリンのブティック。私がブティックにも自宅にも置いているアールデコ風のゴールドの素晴らしいテーブルは、ここで見つけました。彼女がセレクションするフランスとアメリカの現代のクリエイターの家具、そしてヴィンテージも揃ったブティック。インテリアのインスピレーションを得られる場所です」


MAISON NORDIK
159 RUE MARCADET
75018 PARIS
営)11:30~19:30(日 14:00~18:30)
休)月、火、水

「ミニマルでピュア、そして機能的な北欧の家具を集めたブティック。ここのようにデスク、ランプ、鏡、陶器などグローバルな品揃えはパリでは珍しい。ヴィンテージでも状態の良い品が見つけられるのが、私にはとてもうれしいですね」
大村真理子 Mariko Omura madame FIGARO japon パリ支局長 東京の出版社で女性誌の編集に携わった後、1990年に渡仏する。フリーエディターとして活動し、2006年より現職。主な著書は「とっておきパリ左岸ガイド」(玉村豊男氏と共著/中央公論社)、「パリ・オペラ座バレエ物語」(CCCメディアハウス)。

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