2019年、安藤忠雄が手がける美術館がパリにオープン。

PARIS DECO

2000年、パリの隣接都市ブローニュ=ビヤンクールを流れるセーヌ河の中州に浮かぶスガン島のルノー工場の跡地に、安藤忠雄が建築するピノー財団の現代アート美術館というプロジェクトが発表された。しかし、一向に進まぬお役所仕事に業を煮やしたフランソワ・ピノーは2005年に計画を断念。彼は即座に美術館計画をヴェニスに移動し、その結果、既存の建物2つを安藤忠雄が改装し、2009年にパラッツォ・グラッシとプンタ・デッラ・ドガナという2つの現代美術館がオープンしたのだ。そしてスガン島に安藤忠雄が“水上の宇宙船”というイメージの美術館を建築する予定だった場所には、今春、板茂の建築による音楽の殿堂「シテ・ミュージカル」が完成した。

170718-deco-tadao-ando-01.jpg

パリ1区、ブルス・ド・コメルスの天井。photo:Mariko OMURA

170718-deco-tadao-ando-02.jpg170718-deco-tadao-ando-03.jpg

丸い屋根が特徴のブルス・コメルス。その中にご覧のようにコンクリートの円筒が作られ現代アートの展示スペースとなる。photo© Artefactory Lab ; Tadao Ando Architect & Associates ; NeM / Niney & Marca Architectes ; Agence Pierre-Antoine Gatier. Courtesy Collection Pinault – Paris.

時は流れ……ヴェニスを羨むパリっ子を喜ばせるニュースが。パリの中心部にあるBourse de Commerce(ブルス・ド・コメルス/商工会議所)の建物を安藤忠雄が改装し、2019年の初めにフランソワ・ピノーの現代アート美術館がオープンすることになったのだ。16世紀にカトリーヌ・ドゥ・メディチが邸宅を建てた場所で、その後は麦の卸市場となった。現在残っているのは円形屋根をのせた19世紀の建物。この美術館のために、その内部にコンクリートの円筒を建て、アート作品の展示会場にしよう、というのが改装計画である。内部の上の壁を覆う五大陸の交易を描いた見事なフレスコ画も、この際に修復されるそうだ。2018年12月には改装工事が終了する予定で、この日程は必ずや守られるものであるとプレス発表会でピノーは断言。建物はパリ市から50年間の貸与ではあるが、これは彼と息子アンリ=フランソワ・ピノーを含むファミリー・プロジェクトゆえ、時間も金銭の無駄も許されないはずだ。工事の遅延が当たり前のフランスだが、今回は期日通りに進むことだろう。

170718-deco-tadao-ando-04.jpg170718-deco-tadao-ando-05.jpg

プレス発表会のプロジェクションで見せた模型作りの工程や美術館内部のCG。

170718-deco-tadao-ando-06.jpg170718-deco-tadao-ando-07.jpg

円筒のスケッチを前にプロジェクトを説明する安藤忠雄とフランソワ・ピノー。2005年、彼が築いた帝国ケリング(旧PPR)の経営を息子アンリ=フランソワに譲ったものの、相変わらず精力的で80歳という年齢を感じさせない。

170718-deco-tadao-ando-08.jpg

Bourse de Commerce , Collection Pinaultと名称される美術館。住所は2 , rue de Viarmes 75001。しかしこの誰も知らない小さな通りがルーヴル通りの40番地と42番地の間にあることから、40bis, rue du Louvre 75001と表現されることが考えられている。© Artefactory Lab ; Tadao Ando Architect & Associates ; NeM / Niney & Marca Architectes ; Agence Pierre-Antoine Gatier. Courtesy Collection Pinault – Paris.

ダミアン・ハースト、マーク・ロスコ、サイ・トゥオンブリー、村上隆、トーマス・シュッテ……所蔵作品数は3,500点を超えるというピノー・コレクション。2019年早々、いよいよパリで見ることができる。もっともディレクターのマルタン・ベトゥノーによると、プログラムの発表はまだ先のことのようだ。

170718-deco-tadao-ando-09.jpg

昨年のヨーロッパ文化遺産の日、かつての病院の敷地内にできた新本社を一般公開したケリング・グループ。その際に礼拝堂でピノー・コレクションの一部を展示した。床に並ぶのはMaurizio Cattelanの『ALL』(2007)。素材は大理石。後方は、Andres Seranoの『BLACK SUPPER」(1997)。

170718-deco-tadao-ando-10.jpg

同展示より、Y.Z. KAMIの『IN JERUSALEM』(2006)。
photos:Mariko OMURA

大村真理子 Mariko Omura
madameFIGARO.jpコントリビューティングエディター
東京の出版社で女性誌の編集に携わった後、1990年に渡仏。フリーエディターとして活動した後、「フィガロジャポン」パリ支局長を務める。主な著書は「とっておきパリ左岸ガイド」(玉村豊男氏と共著/中央公論社)、「パリ・オペラ座バレエ物語」(CCCメディアハウス)。

RELATED CONTENTS

BRAND SPECIAL

    BRAND NEWS

      • NEW
      • WEEKLY RANKING
      SEE MORE

      RECOMMENDED

      WHAT'S NEW

      LATEST BLOG

      FIGARO Japon

      FIGARO Japon

      madameFIGARO.jpではサイトの最新情報をはじめ、雑誌「フィガロジャポン」最新号のご案内などの情報を毎月5日と20日にメールマガジンでお届けいたします。

      フィガロジャポン madame FIGARO.jp Error Page - 404

      Page Not FoundWe Couldn't Find That Page

      このページはご利用いただけません。
      リンクに問題があるか、ページが削除された可能性があります。