パリに行くの ? 新しいホテルThe Hoxtonがおすすめです。
PARIS DECO
すでにロンドンに2軒、そしてアムステルダムにもあり、もうじきブルックリンにもオープンするというホテルのザ・ホクストン。とてもスタイリッシュなホテルなので、名前を知っている人もいるだろう。8月25日、パリにもオープンした。Hを発音しないフランスではオクストンと呼ばれてしまうけれど、そのコンセプトは他国のザ・ホクストン同様に、入ってくるすべての人を受け入れ、自宅にいるように寛いだ気分を与えてくれる場となっている。
通りから見えるロビーの奥に広がる中庭、その中庭に面したヴァーティカル・ガーデンが見事なスペース……宿泊客以外もホテルの魅力を十分に満喫できる。
4年半の長い工事を終えて、ホテルがオープンしたのは2区のサンティエ地区。80年代のDCブランド時代を生きた人たちには、 サンティエといったら服飾産業の地であり、コピーブランドのメッカというちょっぴりネガティヴなイメージがある。でも21世紀の新世代にとっては、それはまったくの昔話。サンティエといったら、テクノロジー系スタートアップが集まっていることから“シリコン・サンティエ”と別称される、インな界隈なのだ。
18世紀の3つの建物からなるホテル。通りに面した建物と2つ目の建物は国の記念建造物に指定され、建築当時からの18世紀の階段もそのままインテリアに組み込まれている。Wi-Fiは室内だけでなくロビーやレストランなどでも無料で、接続も簡単。コンセントが至るところに装備されているので、ホテルの好きな場所に陣取ってお茶を飲みながらコンピューターや携帯で外部とコネクションできる。
ザ・ホクストンができたのは、その中心にあるサンティエ通り。流行りのタイ料理のレストランLe Bambou、パリジェンヌ御用達オンラインブランドSézaneのショールーム・ブティックのすぐ近く。ホテルは通りに面した18世紀の建物、その奥にレストランのテラス席を設けた中庭、それに面してルイ15世の顧問エティエンヌ・リヴィエの個人邸宅だった18世紀の建物があり、さらにその奥にも広い中庭をコの字に囲む18世紀の建物……というように、パリの中心のホテルというのが信じられないほど広い。
3つの建物に分かれた客室は合計で172室。4つのカテゴリーは小さい順に、シューボックス、コージィ、ルミー、ビギーと呼ばれ、ルームレートは99ユーロから599ユーロ。パブリック・スペースのデザインは他国のザ・オクストンと同様にSoho Houseがデザインしているが、客室については「贅沢は目で見るものではなく感じるもの」というホテルのオーナーと意見を同じくするデザイナーHumbert & Poyetにインテリアが任された。真鍮のネットやフォルミカといった素材を用いて、50年代のインダストリアルな雰囲気をパリ的クラシックにミックス。白地に格子のベッドリネン、パリの地下鉄駅に使われる白いタイルのバスルームには清潔感が溢れている。3つめの建物の1階客室は中庭に面していて、専用のテラス席付きだ。
4メートル以上の高い天井の部屋もある。バスルームと客室を仕切るのはガラスと真鍮のグリル。視線は遮るが、採光を遮らないという良いアイデアだ。
部屋のタイプに関わらず、Wi-Fi、ブレック・ファースト(時間指定でき、内容はヨーグルト・グラノーラ、ジュース、バナナ)、1時間の国際電話が室料に含まれている。
通りに面した建物1階のブラッスリーはかつての住民の名前をもらい、Rivié(リヴィエ)と名付けられている。メニューはハンバーガー、クロック・ムッシュー、チキンのグリルといったように、極めてシンプル。ここはロビーでの食事にも対応しているそうだ。 ブラッスリーもバーも、週末は夜遅くまで営業。「しっかり働き、しっかり遊ぼう」という現代人のライフスタイルにぴったりのザ・ホクストンである。
リヴィエの店内。中央のガラス張りの屋根からは外光が差し込む。
営業は7時~23時(木金土は~翌1時30分)。朝食からディナーまで、空腹知らずでいられるホテル。人気のオックス・ハンバーガー(15ユーロ)はサイズもほどよく、味もよし。
ロビー、ジャックス・バーへの階段……パブリック・スペースを見て回るだけでも楽しめるホテル。
寛ぎの空間、ジャックス・バー。
madameFIGARO.jpコントリビューティングエディター
東京の出版社で女性誌の編集に携わった後、1990年に渡仏。フリーエディターとして活動した後、「フィガロジャポン」パリ支局長を務める。主な著書は「とっておきパリ左岸ガイド」(玉村豊男氏と共著/中央公論社)、「パリ・オペラ座バレエ物語」(CCCメディアハウス)。