メルシーとマイ・リトル・パリが作ったノエルの家。
PARIS DECO
毎月パリのサプライズがいっぱい詰まって配達されるマイ・リトル・ボックス。フランスだけでなく、日本でも定期購買者の数は年々増えているようだ。この素敵なアイデアの生みの親のマイ・リトル・パリは、昨年モンマルトルの丘に一軒家を構えて、いろいろなイベントを開催している。あいにく限られた人が対象のことが多いのだが、ブティックのMerci (メルシー)とのコラボレーションを開催している今はマイ・リトル・ボックスの購買者でなくても訪問できる機会なのだ。


マイ・リトル・パリが18区に持つ一軒家とメルシーのコラボレーション。
モンマルトルに暮らした国民的アイドル歌手ダリダ。彼女の胸像が設置されたダリダ広場の裏手に、庭付きの一軒家が並ぶブルイヤール小道がある。マイ・リトル・パリの家もそのひとつの、庶民の家族のための19世紀末から20世紀初頭の建築物だ。そこをメルシーのアートディレクターであるダニエル・ロゼンシュトラッシュが、ポエティックなオブジェ、家具、彼のプライベートコレクションなどで、家の持つアイデンティティをリスペクトした内装を担当したのだ。11月の初旬からクリスマスに向けてさまざまなアトリエがここで催され、それに参加することによって家の訪問ができるという仕組み。内容はヨガのレッスンだったり、香りのセラピストの講話だったり、クリスマス料理の教室だったり……。申し込みはMy Little Paris×Merciのサイトにて。


メルシーのADダニエルが内装を手がけた家で、クリスマス料理のレッスンやヨガの教室に参加できる。プログラムなど詳細は、https://maisonmerci.mylittleparis.com にて。
どんな家なのだろう。ブティックのメルシーはショピングの場だけれど、食事をし、眠り、愛を語り……と、ここではメルシーが提案する暮らし方を知ることができる場となっている。
1階は入り口の左にリビングルーム、右にダイニングルームとキッチン。見所はダイニングルームの棚に並べられたテリーヌ保存容器のコレクションだろう。これはダニエルのプライベートコレクションから選ばれたもので、ニシンのテリーヌ用なので魚が描かれていたり、立体で飾られていたりする。彼はこういった日常生活の中のアートに興味を持っているそうだ。スペースを埋めるのは、10名以上が食事をできる大きなテーブルだ。彼はこれぞホスピタリティのシンボルだと語る。
テリーヌの容器はダニエルの個人コレクション。マリクレール・メゾンで働いていた時代にルポで訪れたクラコヴィでみたのが最初。1つ、2つと買い……現在は100個近くを所有している。


他のどこにも見られないダニエル・スタイルのインテリア。
エントランスの左手にひろがるリビングルーム。
階段を上がると、小さな額縁をかけた無地の壁と、小さな額縁をモチーフにした壁紙を貼った壁が向かい合うチャーミングな廊下がまず目に入る。右はオフィススペース、左は山小屋風のベッドルームだ。40年代風とか60年代風といったトータルルックでもなく……自由に好きな品々をミックスし、個人的嗜好をインテリアで表現することをダニエルは提案している。


向かい合わせの壁がハーモニーを奏でる2階の廊下。


自然の素材が安眠を約束してくれそうな静かな寝室。


オフィスのインテリアはもちろん、トイレの中まで!
さらに上のフロアへ。2つの寝室、ドレッシングルーム、子ども部屋がつくられている。ある家族が生活している家にお邪魔する。そんな感じにまとめられたインテリアの中に、メルシーの店内でみかけたあれこれの品を見出すことができる。ああ、こう使うといい! といったアイデアが盗めそう。


ダニエルのパリのお気に入りのアートギャラリーは3区のSchool Gallery。この家の壁を飾るのは、この画廊が扱う写真やアート作品だ。寝具はもちろんメルシーのオリジナル。
中央に洗面台を配置したバスルーム。日常のオブジェを愛するダニエルの2000本の歯ブラシのコレクションからのセレクションが、向かい側の壁に飾られている。アイボリーやべっ甲などブラシの柄の素材はさまざま。


子ども部屋には珍しいアルネ・ヤコブソンによる子どもの勉強机を置いた。


ヴィンテージを集めたドレッシングルーム。この上階の屋根裏部屋がヨガ教室のフロアになっている。
https://maisonmerci.mylittleparis.com
madameFIGARO.jpコントリビューティングエディター
東京の出版社で女性誌の編集に携わった後、1990年に渡仏。フリーエディターとして活動した後、「フィガロジャポン」パリ支局長を務める。主な著書は「とっておきパリ左岸ガイド」(玉村豊男氏と共著/中央公論社)、「パリ・オペラ座バレエ物語」(CCCメディアハウス)。