泊まらなくても楽しめる、スタルクの新世代5つ星ホテル。
PARIS DECO
16区のBrack Paris(ブラック・パリ)のデザインで、ホテル界の話題となったばかりのフィリップ・スタルク。お次はマレ地区の5つ星ブティックホテルの9 Confidentiel(ヌフ・コンフィダンシエル)である。ホテルの前に立ってみよう。マレ地区にアールデコ・スタイルの建物があることに驚き、パリに珍しくボウ・ウインドーまであることにビックリ。マレといったら17世紀、18世紀といった古い建築物の地区というイメージだけど、1969年にアンドレ・マルロー文化相が文化財保護のためにストップをかけるまで、建て替えられた建物がけっこうあるという。ヌフ・コンフィダンシエルもそんな建築物のひとつだ。
「架空の素晴らしい宝石箱。その中で、ロマンティックで古めかしいノスタルジーがダイヤモンドのようにきらきらと輝いている」とスタルクが語るヌフ・コンフィダンシエル。通りに面したガラスには山名文夫がその昔、資生堂のクリームや化粧水のパッケージに描いたような曲線が見られ、目を引く建物。黒塗りの車は宿泊客用ではなく、オーナーの持ち物だそうだ。
ホテルのインテリアは1920〜30年代のアールデコ調をミックスした折衷スタイルでまとめられている。淡い黄色に淡いパープルのランプシェード……女性の私室といった印象のフェミニンな内装だ。室内に漂うパステル・ドリームは、淡いピンク系の鏡張りのバスルームへと続く。各部屋にルームナンバーだけでなく、リュシエンヌ、オデット、ジャクリーヌなどといった古めかしい女性の名前もつけられている。
5つ星ホテルといっても8区ジョルジュV通り周辺のホテルとはタイプが異なり、豪華絢爛に輝くのではなく、このホテルでは控えめさが小洒落ている。そしてサービスにしてもしっかりと気は効いているけれど、若くて気さくなスタッフばかり。21世紀、5つ星ホテルも進化しているのである。
パステル調のフェミニンな室内。ホテルにはスパはないが、マッサージやスキンケアのルームサービスがある。使用するのはCodage(コダージュ)の品だ。
鏡張りのバスルーム。ボウ・ウインドーがある部屋は、エントランススペースがバスルームに変身するおもしろい作りだ。巨大なバスタブを備えた部屋もある。
各部屋にフランス女性の古めかしい名前が付けられている。
ちょっとシュールな廊下。
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こぢんまりとしたホテルなので閉鎖的かと思いきや、1階のティールームとカクテル・バーLe Confidence(ル・コンフィダンス)は宿泊客以外も利用できる。5つ星ホテルの魅力のかけらを誰もが味わえるのだ。昼下がり、寛ぎの空間でヤン・クーヴルールのパティスリーと共にティータイム(セットで20ユーロ)はどうだろうか。夕方からはセクシーな雰囲気のバーで、有名なニコ・デ・ソトがクリエイトしたカクテルを。こちらもアニーやココなど女性名がつけられている。このバーのシャンパンはペリエ・ジュエ(グラスで18〜24ユーロ)!
ティールームではアラカルトで飲み物だけでもオーダーできる(エスプレッソ5ユーロ〜)。ヤン・クーヴルールのパティスリーは4種(エクレア、レモンタルト、サバラン&リ・オ・レ、グルテンフリーのプラリネ・メレンゲ/12~22ユーロ)が揃えられている。
ティータイムは14時〜18時。
バーのル・コンフィデンス。18時〜25時の営業。
ペリエ・ジュエのシャンパーニュ。ベル・エポックはあいにくとグラスサービスはなく、ボトル(240ユーロ)のみ。
地下1階が朝食室。小さな中庭に面している。
扉を開けて中に入ると、ほんのりとした、とても良い香りに包まれる。ホテルのためにクリエイトされた香りのRoi de Sicile(ロワ・ドゥ・シシル)だという。ウッディ・スパイシー系でラストノートがアンバー、サンタル……。この香りのパフュームキャンドルの販売も始まるので、パリの思い出にいいだろう。
58, rue du Roi de Sicile
75004 Paris
tel:01 86 90 23 33
www.hotel-9confidentiel-paris.fr/fr
madameFIGARO.jpコントリビューティングエディター
東京の出版社で女性誌の編集に携わった後、1990年に渡仏。フリーエディターとして活動した後、「フィガロジャポン」パリ支局長を務める。主な著書は「とっておきパリ左岸ガイド」(玉村豊男氏と共著/中央公論社)、「パリ・オペラ座バレエ物語」(CCCメディアハウス)。