インテリア好きも楽しめる『ナビ派と装飾』展と......。

PARIS DECO

リュクサンブール美術館で『ナビ派と装飾』展が開催されている。ピエール・ボナール、モーリス・ドニ、エドゥアール・ヴュイヤール、ポール・セリュジエなどゴーギャンの作品に感銘を受け、写実主義を否定する画家たちが集まって結成されたナビ派。彼らは新しい芸術を求め、ヘブライ語で預言者を意味する言葉“ナビ”を名前につけたのだ。1890年パリのボ・ザール校で開催された日本の版画展にも、彼らは影響を受けている。1888年から1890年が活動の最盛期だったナビ派の作品を紹介する展覧会は過去にもあったけれど、この展覧会では芸術と応用美術の境を取り払おうと、フランスにおいてアーツ&クラフト運動を推進したナビ派の創作にフォーカスしているのが珍しい。

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リュクサンブール公園内の美術館。展覧会のポスターのビジュアルがマッチしている。

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モーリス・ドニの『Arabesque poétiqueまたはL’Échelle dans le feuillage』。室内装飾のための作品は大型の作品が少なくなく、これも235×172cmの大作である。©Rmn-Grand Palais/Gérard Blot/ Christian Jean

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ピエール・ボナールは装飾用作品として、自身の幼少期の思い出をこめて緑の庭を描いた。

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単純化したフォルム、波うつように柔らかなライン、鮮やかな色使い、遠近法がなくフラット……ナビ派が手がけた装飾芸術にはこんな特徴が見られ、明るく、生き生きとした様子を再現していた。彼らに室内装飾を依頼したのは友人や、メセナたち。たとえばヴュイヤールにはアレクサンドル・ナタンソンという友だちがいて、彼の自宅のために9枚の連作パネル『公園』(1894年)をヴュイヤールは創作した。ナビ派の装飾芸術は個人宅の室内用に創作されたものがほとんどなので、時代の流れで失われたもの、散逸したものも少なくなく、たとえば『公園』も9枚のうちオルセー美術館が所蔵するのは5枚だけである。

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ヴュイヤールはナタンソン家の装飾を白紙依頼され、食堂には現代的テーマとして庭を選んだ。装飾パネルには、タペストリーでよくあるように子ども、女性、老女と時間の流れが込められている。庭と女性というのは、彼に限らずナビ派が好んだテーマだそうだ。

アレクサンドルにはナビ派を援護する雑誌「ラ・ルヴュ・ブランシュ」を創刊したタデという弟がいた。シャネルの友人として有名なミシア・セールの最初の結婚相手である。タデとミシアは8区のサン・フロランタン通りに暮らしていて、彼らの家のためにもヴュイヤールは創作。

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ヴァケーズ家のためのエドゥアール・ヴュイヤールによる『Personnages dans un intérieur』(1896年)。©Petit Palais/ Roger-Viollet

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エドゥアール・ヴュイヤール『Le Corsage rayé』(1895年)。タデ・ナタンソンの自宅のための5枚シリーズ『アルバム』より。タデの妻ミシアにヴュイヤールは恋心を抱いていたそうで、作品の中に彼女らしき女性を描いている。引越しのたびに、ミシアはこの5枚のパネルも一緒に持っていくほど気に入っていたのだが、ふたりの離婚後、売却され、散逸してしまった。©Washington , National Gallery of Art

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ナビ派の実験的な装飾芸術を支援した人物のひとりとして、展覧会ではサミュエル・ビングの功績にもスポットを当てている。パリで浮世絵をはじめとする日本美術を扱う貿易商を営み、1890年のボ・ザール校の版画展を開催したのも彼である。彼の店でゴッホが浮世絵を買っていたということでも、ミングの名前は有名だ。彼は“アール・ヌーヴォーの家”と称した画廊に家具を置いて、壁に版画を飾り、そしてモーリス・ドニやランソンたちに壁面装飾を依頼。ドニはその時の仕事がすっかり気に入って、自宅の妻の寝室にそれを再現したほどだ。なおビングはアメリカに旅をした後に、ボナールやロートレックにステンドグラス用の絵を描かせ、それらは当時アメリカにおけるアール・ヌーヴォーの第一人者であるルイス・カムフォート・ティファニーによってステンドグラスに仕上げられたという。この時代の芸術活動の裏で、どれほどビングの活躍が貴重な役割を果たしていたか。いつか、彼の功績についての展覧会が開催されたら面白いだろう。

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モーリス・ドニが愛妻マルトの寝室のために制作した装飾パネル(1896〜1900)。

ステンドグラス、ランプシェード、壁紙、食器などにも、ナビ派はチャレンジ。展覧会は「庭の女性」「インテリア」「アール・ヌーヴォー」「聖なる儀式」の4テーマで構成されている。さほど大規模ではないので、気軽に立ち寄ってみよう。そして展覧会の後はリュクサンブール公園の散歩もいいけれど、まずは展覧会のスペシャル・パティスリーを味わえる美術館脇のアンジェリーナへ。6月30日までの限定“Nabi”は、ナビ派のアーティストたちが日本の芸術を愛したことにインスパイアされ、柚子とバジルという東洋と西洋の大胆な味の組み合わせだ。展覧会の締めくくりに最高では?

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エドゥアール・ヴュイヤールやピエール・ボナールによる陶器も3点展示。

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ポール・ランソンによる壁紙のための『Les Canards』(1894〜1895年頃)。当時画家たちによる壁紙というのは実験的なものだった。©musée des beaux-arts à Quimper

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モーリス・ドニによる壁紙のための『Les Colombes』(1893年頃)。なおこの2種のモチーフの壁紙はブティックで販売されている。鴨にするか、鳩にするか……。©catalogue raisonné Maurice Denis photo Olivier Goulet

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パティスリー「Nabi」は9.20ユーロ(テイクアウト7.50ユーロ)。アンジェリーナ・リュクサンブールは毎日10時30分〜19時(月 〜22時)の営業で、独立した入り口があるので展覧会を見なくても利用できる。

『Nabis et le décor』展
会期:開催中〜2019年6月30日
会場:Musée du Luxembourg
19, rue de Vaugirard
75006 Paris
開)10時30分〜19時(月 〜22時)
閉)5月1日
料金:13ユーロ
https://museeduluxembourg.fr
大村真理子 Mariko Omura
madameFIGARO.jpコントリビューティングエディター
東京の出版社で女性誌の編集に携わった後、1990年に渡仏。フリーエディターとして活動した後、「フィガロジャポン」パリ支局長を務める。主な著書は「とっておきパリ左岸ガイド」(玉村豊男氏と共著/中央公論社)、「パリ・オペラ座バレエ物語」(CCCメディアハウス)。

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