メゾンの魅力を語るうえで欠かせないのが、
その象徴ともいえるアイコンたち。
第3回は「着るメガネ」をコンセプトに掲げている
アイヴァンの定番「E-0505」のお話。
まだメガネが視力矯正道具と考えられていた1970年代初めに、アイヴァンは誕生した。医療器具から、ファッションアイテムとしてのメガネへ。その新境地を開拓したのが72年に設立されたアイウエアブランド、アイヴァンだった。“着るメガネ”という斬新なコンセプトを掲げ、メガネ=真面目な人というイメージを一新。海外ではすでに、ファッションの鍵を握る重要なアイテムと捉えられていたメガネの新たな可能性に着目した創業者が、“シーンによって、使い分けることができる、おしゃれなメガネ”を世の中に提案する。その時代、日本の若者たちの間で旋風を巻き起こし、アイビーブームを牽引していた大人気ブランド、ヴァンとタッグを組むことで、よりファッション性を追求することに注力。その明確なビジョンのもと、VANとEYEが手を結び、アイヴァンの革命は、幕を開ける。彼らがまず手がけたのは、広告ビジュアルを通して、メガネの新しいイメージを発信すること。服に合わせて、メガネを着替えることを強くアピールするビジュアルを展開した。さらに、ショップのディスプレイにモード性を取り入れるのはもちろん、メガネを取り扱う販売員たちの意識改革も同時に行うという徹底ぶり。そして、トレンドを意識した新作をシーズンごとに発表し、ファッションアイテムとしてのメガネというアイデアを見事に定着させたのである。
1985年、LAのアイウエアショップが初期のアイヴァンのメガネを買い付けたことが契機となり、人気は海外へと広がる。その店こそ、いまでは世界中に顧客を持つ、アイウエアブランドの草分け的存在、オリバーピープルズだった。現在もアイヴァンがハリウッドセレブに支持されるのは、この時の出合いがあったからこそといえる。
豊かな発想力、デザイン力は当然ながら、アイヴァンのメガネを支えているのは、その確かなクオリティ。アイヴァンはデビュー当時から、一貫して福井県鯖江市の工場でメガネを作り続けている。この街のメガネフレームの生産量は、国内シェアの95%以上。その質の高さは、世界でも評価を得ている。もちろん、アイヴァンのクリエーションも、鯖江の職人たちの驚くほど高い技術に大きく支えられている。
80年代中盤にリリースしたアイコニックな6品番を、2018年、最新技術で新たに復刻させた特別シリーズ「カプセルコレクション」。ここでもアイヴァンが誇る、職人技が光る。なかでもブランドを代表するモデルであり、世界のクリエーターたちも惚れ込んだモデル「E-0505」は、繊細な彫金が施された金属パーツが特徴的。圧倒的な技術力と確かな美意識を集結させて作る、華美すぎないが美しい、オーセンティックなアイヴァンのメガネは、現在でも世界中の人々を魅了している。