

メゾンの魅力を語るうえで欠かせないのが、
その象徴ともいえるアイコンたち。
第5回はイタリアのクラフツマンシップが光る
サントーニの代表作のひとつ
「ダブルモンクストラップ」のお話。
一流メゾンが鎬を削るイタリアで、創業からわずか45年で世界屈指の靴ブランドへと成長したのがサントーニだ。革靴の製造会社で靴づくりの基礎を学んだアンドレア・サントーニがマルケ州コリドニアで自らの靴工房を設立したのは、1975年のこと。今でも、創業当時と変わらず、社内一貫生産にこだわり、伝統やクオリティを重視しつつ、革新的なデザインや最新の技術を柔軟に取り入れ、進化を続けている。
1990年には、弱冠21歳でジュゼッペ・サントーニが父親のアンドレアから社長の座を引き継ぐ。その後、若き社長は海外にも目を向け、まずはニューヨーク、2017年には東京・銀座、19年には大阪・心斎橋にブティックをオープンし、現在は世界20箇所以上に店舗を展開するほどに。さらにメンズシューズ作りのノウハウを生かして、レディスシューズにレザーグッズと幅広いラインナップも手がけ、そのレザーの扱いに精通した独自の芸術性で注目を集めている。
伝統と革新が交錯するもの作り。
創業時からのコンセプトは“伝統と革新”を重んじること。サントーニは、その屋台骨である職人たちのクラフトマンシップを大切にしながらも、それだけに甘んじることなく、常に研究開発に取り組み、究極のデザインやディテールを探求し続けることで、その独自性を生み出している。今回紹介したダブルモンクストラップからも、そのマインドは見て取れる。伝統に彩られたエレガンスと合わせるスタイルを選ばない軽快なモダニティが交錯するこのモデルは男女問わず人気が高い。
貴重な文化遺産たる職人たちの技術力こそ、サントーニの強み。それを象徴するのが靴の底付けだ。多くのシューズブランドがひとつ、ないしはふたつの製法で靴の底付けを行う中、サントーニは靴のモデルによって10種類ほどの製法を使い分ける。それは、どの靴もそのデザインに最適な製法でソールを縫い合わせるべきである、との強いこだわりがあるから。カーフ、ゴート、アリゲーターにパイソン……と厳選した素材を使ったレザーシューズにマッチする底付けの製法は、さまざま。寸分の妥協も許さない、彼らのもの作りには卓越した職人技が必要不可欠。さらに、サントーニの靴を唯一無二な存在へと導くのが高いハンドカラーペインティングの技術だ。独自のカラーレシピを継承する職人は、ときには異なる色を使ってレザーに10回以上にも及ぶ重ね塗りを施し、オリジナルカラーを完成させる。最終工程は、ツヤだし作業。まずはブラシで、次にカシミアとシルクの布でハンドポリッシュを施す。長い時間を費やし丁寧な作業を経て、独特のカラーを纏ったオンリーワンのシューズに辿り着く。自分だけの、長く愛せる靴こそがサントーニが追い求める理想の一足なのだ。