ブランド名品物語。file.06

メゾンの魅力を語るうえで欠かせないのが、
その象徴ともいえるアイコンたち。
第6回はモンクレール ジーニアスから
「2 モンクレール 1952」のお話。

アウトドアの要素を、
より女性らしくアップデート。

モンクレール ジーニアスの中でも、最もモンクレールらしさを兼ね備えている「2 モンクレール 1952」のコレクション。モンクレールらしさはそのままに、ダウンジャケットをもっと自由に着こなす。取り外しができるショルダー部分とドローストリングが、大人の女性たちの遊び心をくすぐる。

ダウンジャケット¥236,500/2 モンクレール 1952、ワンピース¥148,500/モンクレール(ともにモンクレール ジャパン) ピアス/ともにモデル私物

都市にも溶け込む、
新しいドレスアップスタイル。

スポーティな印象のオールインワンにフェミニンな要素を加えたら……街中の風景にもよく溶け込むモダンで新しい、ドレスアップスタイルの誕生。

オールインワン¥365,200(予定価格)、ニット¥155,100、ストール(参考色、商品はブルーで展開)¥103,400/以上2 モンクレール 1952 ブーツ¥88,000/モンクレール(以上モンクレール ジャパン) ピアス/モデル私物
  • シューズ(ヒール2cm)¥101,200

  • シューズ(ヒール2cm)¥101,200

  • シューズ(ヒール3.5cm)¥132,000

INTERVIEW

錚々たるクリエイターたちが複数のコレクションを展開するモンクレール ジーニアス プロジェクト。その一翼を担っている「2 モンクレール 1952」のウィメンズのデザインを担当するヴェロニカ・レオーニに、最新コレクションについて、さらには彼女のこれからのビジョン、そして現在注力しているGirl Upとのパートナーシップについて語ってもらった。

ヴェロニカ・レオー二

Veronica Leoni

「2 モンクレール 1952」ウィメンズデザイナー

PROFILE

イタリア、ローマ生まれ。文学の学位を取得した後、ファッション業界に足を踏み入れる。ジルサンダーでニットウエアのヘッドデザイナーを、またフィービー・ファイロ時代のセリーヌで4年間、プレコレクションのヘッドデザイナーを務める。2018年から現在にいたるまで、モンクレールのウィメンズ部門のヘッドデザイナーとして活躍している。

「2 モンクレール 1952」のコンセプトとテーマを教えてください。

私は現代的な女性らしさを感じる機能的なアウターウエアを融合させ、組み合わせることができるワードローブを常に考えています。特定のバランスは求めていません。それ以上に、既存のものが混ざり合うことで生まれる、予想外の結果に興味があります。デザインを始める前の段階で、まず生地やテクニックについてのリサーチをしている時、今シーズンは突然、失われた楽園を目指す女性たちの姿が頭に浮かびました。シルエットや物語など、すべての要素が自然発生的に混ざり合い、明確なビジョンが見えたのです。

デザインの着想源は、どんなことがヒントになりますか?

着想源とは閃きではなく、よりマインドや精神といったアティチュードに左右されるものだと感じているのです。ある一定の時間の中でクリエイティブかつ、私の好奇心を満たすものにランダムに共感し、刺激を受けています。常に予測不可能なことに魅力を感じていて、自分が驚くことを見つけることが大好きなのです。

コレクションを作るうえでいちばん好きな作業は何ですか?

コレクション作りは創造性を服の下にも上にも重ねていく多感覚な体験。毎回、自分の想像力を駆使して物語を紡ぎ出すいっぽう、素材やニットの手触り、質感、色など、実際に触れたり、見たりすることが好きです。私にとっての最初の工程は視覚的で触覚的なもので、そこに多くの時間を費やします。スケッチが服になるにつれ、シルエットやこれから表現する女性像について、ある種の姿勢と存在感を重ねながら、スタイリングするのも楽しい。私はクリエイティビティに没頭するのが好きで、ディテールにとてもこだわるタイプですね。

2 モンクレール 1952はジーニアスの中でどんな位置付けとお考えですか?

ウィメンズウエアに限ると、2 モンクレール 1952は折衷主義的なものだと思います。特定のターゲットに向けたものではなく、既存のお客さまのみならず幅広いタイプの女性たちに向けて、ある種の開放性と可能性を示したい。幅広い層に向けた、エイジレスで制約がない服であることを念頭に置いて取り組んでいます。

通常ダウンジャケットはスポーティな印象になりがちです。それをフェミニンかつ、エレガントに落とし込むに当たり、苦労する点は?

何も難しくはありません! 私にとってモンクレールは“主材料”のような存在。いつもコンテンポラリーな姿勢を持っているブランドだからこそ、そこに変化を与え、クリエイションの幅を広げることで、ブランドの本質的な要素が減ってしまうということもないのです。ブランドの原型が、瞬く間にその価値観や機能性に結びつけてくれます。そうすることで、モンクレールはダウンジャケットだけにとらわれず、すべてのものになれる可能性を持っているのです。

2 モンクレール 1952で今後挑戦してみたいことはありますか?

いまは多くの人々にとって非常に重要な時。半年前なら私の答えは大きく変わっていたでしょう。私たちがいまどこにいて、何と向き合わなくてはならないか考えると「包括性」「サステナビリティ」「共感性」といった基本的価値観は、私たちが責任を持って考慮すべきことであり、強みでもあります。そして、Girl Upとのパートナーシップは、モンクレールと私が一緒にできる、クリエイティブな活動のほんの一部です。

そのGirl Upとのパートナーシップについて教えてください。

国連財団によって設立されたGirl Upは、ジェンダー平等を達成するためにリーダーシップトレーニングを実践し、女の子が男女平等の提唱者や活動家になるためのツールを提供しています。彼らとのパートナーシップは、偶発的なものではなく、私が強く望んだものなのです。Girl Upの約10年に及ぶ素晴らしい活動について知り、モンクレール ジーニアス プロジェクトとして、そこに参加したいと思うに至りました。私はモンクレール ジーニアス プロジェクトを単なるクリエイティブハブではなく、現状に挑戦し、相違点やマイノリティ、男女平等を推進する活動的なプラットフォームにするというアイデアを抱いています。教育とは、若い女の子たちの力になるだけでなく、偏見や暴力、憎しみと闘い、そのようなものが存在しないような、よりよい社会を構築するための最初の道具です。今回は「IT'S HER RIGHT」というスローガンを用いたフーディーを2 モンクレール 1952から発売予定で、売り上げの一部をGirl Upに寄付します。

歴史あるモンクレールの最大の魅力、強みは何だとお考えですか?

モンクレールは一種の無意識な次元で、ダウンジャケットの原型を明確に想起させます。実際、非常にアイコニックなピースによってすぐに識別可能で、可視化することができるという点は、非常にユニークな存在です。その魅力は、特定のアイテムがいかに普遍的でありながら多面的なものであるかに関連しており、そのシンプルな要素で幅広い客層を魅了しています。

モンクレール ジーニアスの新作発表は年に1回。今年の2月にミラノで開かれたプレゼンテーションで、ヴェロニカは赤を基調とした会場に砂山を再現。ミリタリー要素が光るエレガントなコレクションを披露した。

HISTORY 本格スポーツブランドと
ファッション界を繋ぐ、
パイオニア的存在として君臨。

1952〜53年の秋冬シーズンに使われたプロモーションポスター。
1964年にアラスカを訪れた登山家のリオネル・テレイ。この時、彼が指揮をとったアラスカ探検隊の公式サプライヤーはモンクレール。

モンクレールの前身となる会社が設立されたとき、創業者のレネ・ラミヨンは山の記事を書くライターとしてすでに広く知られる人物で、登山グッズのメーカーを立ち上げて成功を収めていた。そんなラミヨンが、グルノーブルでスポーツ用品会社を経営し、アウトドア製品を手がけていた友人のアンドレ・ヴァンサンと手を組み、52年に始めたのがモンクレールだ。ブランド名は、創業の地、フランス・グルノーブル郊外の小さな村、モネスティエ・ドゥ・クレルモンから拝借した。

モンクレールにとっての最初のダウンジャケットが誕生したのは、その52年と言われている。それは寝袋を工場の従業員の防寒具として改良したものだった。創業者のひとり、ラミヨンと親交があった世界的なアルピニスト、リオネル・テレイがそのジャケットを気に入り、高山用の装備として、モンクレールにさらなる開発を依頼したのがすべての始まり。そして誕生したモンクレールのダウンジャケットを通じて、64年にはアラスカ探検隊の公式サプライヤーに認定される。さらに68年には冬季オリンピックのフランス代表チームのウエアも手がけるなど、ナショナルブランドとして成長を続けていく。

1962年にヒマラヤを目指した登山隊。彼らもモンクレールのダウンジャケットを装備して登った。
デビューを飾った2 モンクレール 1952の2018-19年秋冬コレクション。ブランド名にある1952は、モンクレールの創業年に因んでいる。スポーツの要素を取り入れながら、洗練された仕上がりで注目を集めた。

80年代に入ると山を目指すプロたちの愛用品だったモンクレールがぐっと身近なブランドへと変貌。その大きな理由が、ファッション界との結び付きだ。1980年から9年間も継続した、デザイナーのシャンタル・トーマスとのコラボレーションで、モンクレールはスポーツとモードを繋ぐ、パイオニアとして、その存在感を増していく。

2006年にはクリエイティブかつ最高級ラインとなるガム・ルージュを、08年にはメンズのガム・ブルー、そして10年にはスノーギアラインのモンクレール グルノーブルの展開。モード界に積極的に進出する。そして10年以上ものさまざまなデザイナーやクリエイターたちとのコラボレーションを経て、モンクレールが辿り着いた革新的なプロジェクトが18年にデビューしたモンクレール ジーニアスだ。モンクレールの会長兼CEOを務めるレモ・ルッフィーニ氏の肝いりであるこのプロジェクトでは、複数のデザイナーが多種多様なコレクションを展開。今回インタビューした「2 モンクレール 1952」のデザイナー、ヴェロニカ・レオーニもそのひとりである。ほかにも、シモーン・ロシャやJW.アンダーソンなど豪華な顔ぶれが並ぶ。モンクレールが誇るダウン素材や技術、機能性。そのブランドの核となるDNAと才能あふれるクリエイターたちが出会い、魅力的なケミストリーが生まれる。歩みを止めないモンクレールに今後も注目したい。