メゾンの魅力を語るうえで欠かせないのが、
その象徴ともいえるアイコンたち。
第7回はルイ・ヴィトンの新作ファインジュエリー
「LV ヴォルト」のお話。
ルイ・ヴィトンが誇るクラフトマンシップによって、時に「L」と「V」は寄り添い、
またある時は一定の距離感の中で高まり合う。
光と空間をも味方につけて、
新しいファインジュエリーの歴史が花開く。
創業当時からいままで、ルイ・ヴィトンが一貫して重んじるインスピレーションソースが“旅”。それは彼らのルーツと深い関わりがある。メゾンの創業者ルイ・ヴィトンはフランス、ジュラ山脈の出身で、14歳の時に徒歩での旅を始め、2年後に目的地であったパリに辿り着く。そして1837年、16歳になった彼は旅の必需品、トランクの職人になる道を選ぶ。当時の主要な交通機関は、馬車や船、汽車であり、その快適とは言い難い旅では荷物は手荒く扱われることも。そのためトランクを作るだけでなく、修繕の技術を持った職人たちは重宝されていたのだ。着実に技術を会得していったルイ・ヴィトンは、17年間の修業の後の1854年、ヴァンドーム広場からほど近い場所に自らのアトリエを開設。現在、世界中に顧客を持つ老舗メゾン、ルイ・ヴィトンの歴史が幕を開ける。
女性たちは皆、量感たっぷりのドレスを纏っていた1850年代。そのボリュームあるドレスたちを収納できるトランクを作るには創意工夫と熟練した職人技が必要だった。そのどちらにも精通したルイ・ヴィトンは、トランクの軽量化にも成功。やがて、当時の典型的な丸い蓋のトランクに代わり、より実用性が高く、効率的に積み上げることができる平らな蓋のトランクを考案し、軽量かつ、頑丈、そして防水性のある素材で全体を覆うという革新的なアイデアを披露。それらすべてを可能にしたのは、彼の先見性と培ってきたクラフトマンシップだった。ルイ・ヴィトンが考案した高機能でエレガントなトランクは、瞬く間に人気を集め、模倣品も多く見られるように。それによって生まれたのが素材にオリジナルの柄を載せる手法だ。グレーから縞模様の「レイエ・キャンバス」や、いまは「ダミエ・キャンバス」として知られている市松模様も、この頃に誕生した。
100年以上をかけて、守り、育んできたクラフトマンシップに、最先端の技術も柔軟かつ積極的に取り入れる。伝統的な手仕事と新しいテクノロジーが織り成す完璧なバランスが、より多彩なもの作りを可能にするのだ。
その姿勢は、2001年に誕生したファインジュエリーコレクションにも見られる。今年8月に発表されたウォッチ&ファインジュエリー部門のアーティスティックディレクター、フランチェスカ・アムフィテアトロフによる新作ファインジュエリーコレクション「LV ヴォルト」でも、そのDNAは、継承されている。メゾンの頭文字を主役にしたグラフィカルなデザインの「LV ヴォルト」。この力強く、緻密でクリーンなデザインをジュエリーに落とし込む職人技こそ、ルイ・ヴィトンが長年にわたり磨き上げてきたクラフトマンシップの結晶なのだ。