春は「ひとりアート」で没入体験。思考を解きほぐす展覧会4選。

Culture

1. 身体感覚を揺さぶる彫刻の圧倒的な存在感。
『ロン・ミュエク』

東京・六本木、森美術館で開催中の展覧会『ロン・ミュエク』の作品
『エンジェル』1997年 個人蔵 画像提供:アンソニー・ドフェイ(ロンドン)

極度の写実性とスケールの操作による人体表現で知られ、独自の評価を確立してきた彫刻家ロン・ミュエク。実物より遥かに巨大、あるいは小さく造形され、精緻な肌や髪、表情まで作り込まれた人物像は、鑑賞者の身体感覚を揺さぶり、不安や哀愁を伴うリアリズムを生み出してきた。本展では100点の頭蓋骨積み重なるインスタレーション『マス』を中心に、寡作で知られるミュエクの代表作を展示。圧倒的なリアリズムの背後に潜む人間の脆さや孤独を浮かび上がらせる。

問い合わせ先

『ロン・ミュエク』
会期:4/29~9/23
森美術館
050-5541-8600(ハローダイヤル)
開)10:00~21:30最終入場(月、水~日)、10:00~16:30最終入場(火)
※5/5、8/11、9/22は21:30最終入場
無休
料)一般¥2,300(月~金)、¥2,500(土、日、祝) https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/ronmueck/index.html


2. 孤高の画家が描き出す、私的な世界との繋がり。
『東京都美術館開館100周年記念 アンドリュー・ワイエス展』

東京・上野の東京都美術館で開催中の展覧会『東京都美術館開館100周年記念 アンドリュー・ワイエス展』の作品
『クリスティーナ・オルソン』1947年 マイロン・クニン・コレクション、ミネアポリス
Myron Kunin Collection of American Art,
Minneapolis, MN photo: Curtis Galleries, Inc.
©2026 Wyeth Foundation for American Art / ARS, New York / JASPAR, Tokyo

20世紀アメリカ具象絵画を代表する画家アンドリュー・ワイエスの、日本では没後初となる本格的な回顧展。抽象表現主義、ネオダダ、ポップアートなど時代の潮流から距離を置き、身近な人物や風景を描き続けた作品には、窓や扉といった境界を示すモチーフが繰り返し登場する。本展ではそれらをより私的な世界との繋がり、あるいは生と死、内面と外界を結ぶ象徴として捉え、「境界」というテーマから作品を読み解くことで作家の精神世界に迫ろうとする。

問い合わせ先

『東京都美術館開館100周年記念 アンドリュー・ワイエス展』
会期:4/28~7/5
東京都美術館
050-5541-8600(ハローダイヤル)
開)9:30~17:00最終入場(火~木、土、日)、9:30~19:30最終入場(金)
休)月、5/7 ※5/4、6/29は開館
料)一般¥2,300
https://wyeth2026.jp/


3. 「架空の場」で考えたい、アートが果たす役割。
『PUBLICAD-公共性と広告性を再編集する/
Re-editing the Narratives of the Public-』

東京・渋谷にオープンしたMINAで開催中の展覧会『PUBLICAD-公共性と広告性を再編集する/Re-editing the Narratives of the Public』の作品
photography: Koichi Tanoue

架空の物語をテーマに渋谷にオープンしたMuseum of Imaginary Narrative Arts(MINA)。その最初の展示では、ミュージアムを象徴するポスターの広告性と公共性を批評的に問い直す。企画を務めるL PACK.はふたりの作家を迎え、菅原玄奨による彫刻とBIENによるグラフィックの関係から立ち上げた「架空の場」で、都市とメディアの意味を考えさせる。展示空間でコーヒーや食事を楽しみながら、アートが“メディア”として果たす役割を探りたい。

問い合わせ先

『PUBLICAD-公共性と広告性を再編集する/Re-editing the Narratives of the Public-』
会期:開催中~6/21
ミュージアム・オブ・イマジナリー・ナラティブ・アーツ[ミーナ]
開)11:00~21:30最終入場 無休
入場無料 ※要飲食オーダー
https://mina-shibuya.org/


4. 新しい現実が「日常」と「世界」の見方を変えた。
『拡大するシュルレアリスム
視覚芸術から広告、ファッション、インテリアへ』

東京・新宿にある東京オペラシティ アートギャラリーで開催中の展覧会『拡大するシュルレアリスム 視覚芸術から広告、ファッション、インテリアへ』
ルネ・マグリット『レディ・メイドの花束』1957年 大阪中之島美術館

夢や無意識に着目したフロイトの精神分析学に影響を受け、理性により分断された世界を超える新しい現実を求めた20世紀の芸術運動シュルレアリスム。「日常を変える」ことと「世界を変える」ことをひと続きに捉え、芸術のみならず雑誌や広告、ファッション、室内デザインなどに広がりを見せた。本展ではダリ、エルンスト、マグリットらに加え、スキャパレリの作品も紹介。芸術と社会の関係を揺さぶった社会現象としてこの運動を再検証する。

問い合わせ先

『拡大するシュルレアリスム 視覚芸術から広告、ファッション、インテリアへ』
前期:開催中~5/17 後期:5/19~6/24
東京オペラシティ アートギャラリー ギャラリー1、2
050-5541-8600(ハローダイヤル)
開)11:00~18:30最終入場
休)月、5/7 ※5/4は開館
料)一般¥1,800
https://www.operacity.jp/ag/exh297/https://wyeth2026.jp/

  • text: Chie Sumiyoshi

*「フィガロジャポン」2026年6月号より抜粋