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Bo Concept
ボーコンセプトが提案する、人と人がつながる豊かなデンマークの暮らし。
デンマーク・コペンハーゲンで毎年開催され、世界のデザイン界から熱い視線を集めるフェスティバル「3days of design」。冬の長い北欧でもっとも楽しい季節である6月に、インテリアブランドのショールームのみならず街なかの各地で展示やイベントが行われる。デンマークを代表するグローバル家具ブランドボーコンセプトは、この6月に移転したアマリエンボー宮殿近くのオフィスで新作を交えた発表会を行った。今回はコペンハーゲンを拠点とする気鋭のデザイン・建築スタジオ「アトリエ・アクソ(atelier axo)」がデザインした新作にフォーカスしよう。
建築的視点が融合する、アトリエ・アクソの美学。

アトリエ・アクソは、デザイナーのローズ・ハーマンセンと建築家のキャロライン・ヴォーゲルによって2019年に設立された。彼女たちがデザインでもっとも大切にしているのは、「素材へのこだわりと、長く使える自由度や耐久性」だという。流行を追うのではなく、空間の一部として、そして人生の相棒として、時を重ねるごとに味わいを増していくプロダクトの在り方を模索し続けている。今回発表されたコレクションは、長方形と円形のテーブルトップのダイニングテーブル、ディスプレイキャビネット、サイドボードの4点だ。

彼女たちはボーコンセプトというブランドについて次のように語っている。
「私たちは『デザインとは共に暮らすものである』という信念をもっています。デザインは、美しさを損なうことなく、日々の生活を支え、変化するニーズに適応するものであるべきだと考えています。そういった意味でも、高いデザイン性と日常的な機能性を組み合わせたプロダクトを多数発表しているボーコンセプトとは、深い部分で自然と共鳴できたと思います」
このコレクションの特徴のひとつが、絶妙なサイズ感だ 。従来のボーコンセプトのプロダクトと比較して、例えば長方形のダイニングテーブルはあえて少し幅を狭くしている。
デンマークの住宅では、キッチン用の小ぶりなテーブルとフォーマルな大テーブルを使い分けることが一般的だが、彼らは現代の都市生活を見つめ直しどちらにも使えるテーブルを提案した。
「大きな家に住んでいなくても、若い人たちがさまざまな空間で使える、現代的なライフスタイルに合う家具にしたかった」と語る。このコンパクトな設計は、日本の住宅のような限られた住空間にフィットするだけでなく、座った時にお互いの距離が近くなり、より親密な会話が生まれやすくなるという効果ももたらす。
「ゲストが急に増えても、みんなで囲んで座ることができるサイズ感にしました。子どもも大人も一緒に食事を楽しむことは生活のなかでとても重要だと考えています」

ボーコンセプトでは、ユーザーに合わせた提案と空間づくりのサポートも行っている。現代の多様なライフスタイルが求めるリアルなニーズを拾い上げており、それらの知見は今回のプロダクトにも生かされているのだろう。
共同食文化「Fællesspisning」がもたらす、真のつながり。
彼女たちにとってダイニングとは、「家の中で最も重要な場所のひとつであり、日常生活の中心」だという。近年デンマークでは「フェッレスピースニン(Fællesspisning)」に注目が集まっている。見知らぬ人たち同士で、大勢でひとつのテーブルを囲み食事と会話を楽しむカルチャーだ。

フェッレスピースニは、19世紀の労働運動や地方の集会場での助け合いから生まれた食事に由来するという。コペンハーゲンの教会を改装して作られたコミュニティハウス「アプサロン(Absalon)」が、若者や家族連れ向けのフェッレスピースニを開催したことが火付け役となり再注目された。SNSの台頭などにより、リアルな人との交流が希薄になりがちな現代で、共に食事を楽しむことの重要性が再認識されている。

「昔からスカンジナビアの文化では、食事を囲んで集まることを大切にしています 。どの家族も毎朝、毎晩のように全員で集まり会話を楽しみます。これは単にデンマークの文化というだけでなく、人間の生活でとても大切なことなんです」
彼女たちは自らが育ったデンマークのカルチャーを振り返りながら、ダイニングテーブルが持つ本来の力を語る。
「人を家に招いて、子どもから祖父母まで、様々な世代がダイニングテーブルに集まります 。思春期の子どもたちは最初は気まずく感じたりもしますが、一度会話が始まれば自然と深いコミュニケーションが生まれます。ダイニングテーブルは、境界を取り払い、人と人が真につながるための神聖な空間なのです」

実はボーコンセプトの歴史はダイニング製品の製造からスタートしている。ブランドの原点であり、人々の集いの中心となるダイニングテーブルの力を、これまでも様々なコレクションを通して表現し続けてきた。彼女たちにとって、ダイニングテーブルをデザインすることは単に美しいオブジェクトを創造することではなく、そこから生まれる人間関係の機微や、交わされる言葉の温度、生活の質そのものを高めるためのプラットフォームづくりなのだ。
「私たちが描くライフスタイルは、贅沢な暮らしをすることではなく、シンプルな日常生活の中に美しさを見出すことにあります。日本の皆さんがこの家具を手にしたとき、デンマークの『食事の時間を分かち合う文化』に触れ、大切な人と一緒に過ごす時間についてのインスピレーションを受け取っていただけたら、これ以上の喜びはありません 」

ひとつのテーブルが、集う人々の心の距離を近づける。アトリエ・アクソとボーコンセプトが創り出した新しいコレクションは、私たちが日々の暮らしの中で本当に大切にすべきものを問いかけている。
- text:Michiko Inoue