レトロで愛らしいパッケージに、老舗ならではの確かな味わいが詰まった手土産。【クッキー缶手帖】
見て楽しい、食べておいしいクッキー缶。小さな箱にぎっしり詰まったクッキー缶は、おすすめの手土産です。もちろん、自分で味わうたのしみも。文筆家・甲斐みのりさんが教えてくれたクッキー缶をご紹介します。
♦店名:江戸屋本店
♦製品名:江戸屋クッキー缶M ¥2,160 江戸屋クッキー缶L ¥3,240

きっと誰にでも、幼い頃の記憶の中に輝く味があるはず。富士山の麓のまち、静岡県富士宮市生まれの私にとってそれは、まち一番の老舗パン店「江戸屋本店」の、パンやお菓子。日曜日のお昼ごはんによく、パンやおやつを買ってもらった。
買ったものを入れてもらえる紙袋には、愛らしい絵が描かれているのだけれど、それが詩人・随筆家の串田孫一によるものと認識したのは、地元を離れて本の世界に没頭し始めたとき。著名な作家がなじみの店と関係があると知ったことで、それまで当たり前に感じていた地元への興味がぐっと深まった。
江戸屋の創業は1869(明治2)年。当初は和洋菓子を作る製菓店として始まった。時は流れ、昭和30年代半ばになると、交通網の発達で大手製パン会社が卸販売を広げる中、江戸屋は自家製造・自家販売にこだわり続けた。パンは、フルーツやライ麦から育てた自家製の天然酵母を使い、香り豊かで深い味わい。パンやお菓子作りにかかせない牛乳は、地元・朝霧高原産。人気のクリームパンを支えるカスタードクリームにも、地元産の新鮮な卵が欠かせない。


2024年には、富士山本宮浅間大社の門前の店舗をリニューアルオープン。カフェやギャラリーを併設した、のびやかで心地よい空間に。その記念に誕生したのが、2種類のクッキー缶。Mサイズの缶には鈴木信太郎、Lサイズの缶には串田孫一の絵がデザインされている。
あるとき店の看板文字を手がけた富士宮在住の洋画家・曾宮一念が、親友の串田孫一を連れて店を訪れた。串田はカフェやギャラリーを併設した文化的な雰囲気を気に入って、店のために絵や文を創作したという。
クッキー缶の中身は、素朴ながらも丁寧に焼き上げられたクッキー。個人的にはピスタチオチョココロネがお気に入り。つまむ手がとまらない。富士宮は牛乳がおいしい土地なので、ミルクたっぷりのコーヒーや紅茶、もちろん牛乳そのままとも、合わせてぜひ。

M
ブールドネージュ
マカロン
アーモンド
ミロワール
ピスタチオチョココロネ
フロランタン
L
ブールドネージュ
マカロン
アーモンド
ミロワール
ピスタチオチョココロネ
サブレノルマン
江戸屋本店
静岡県富士宮市宮町3-2
営)9:00~17:00
休)水(月末の火曜日、年末年始など)
取り寄せ 可
http://edoya-land.com/
♦店名:かおる堂
♦製品名:東郷青児クッキー缶 ¥3,240

秋田を旅したときのこと。明治時代に秋田銀行本店として建てられた、ルネサンス様式の外観の美しい建築「赤れんが郷土館」を目指した。そのあと立ち寄ったのが、同じ赤れんが館通りにある「秋田菓子宗家 かおる堂大町店」。「開運堂」や上野の和菓子店で修行を積んだ藤井馨が、1922(大正11)年に、「秋田諸越」の専門店として創業。秋田で江戸時代から親しまれてきた、小豆粉と砂糖が原料の打物菓子・秋田諸越を、食べやすいように改良。和三盆糖を使って、柔らかく一口サイズに仕上げた「一口諸越 炉ばた」は、口の中でなめらかに溶ける食感が人気を博した。
和菓子だけでなく、地域でいち早く洋菓子の製造を始めたことでも、地元で愛される存在に。お菓子の材料に、りんごやいちじくなど、秋田の農産物も積極的に取り入れている。ユニークな商品として、秋田大学医学部と共同開発した、ビタミンD・カルシウム入りの「サプリ饅頭」なるものも。店頭にずらりと並ぶお菓子は、パッケージのデザインも秀逸で、さまざまな種類を眺めるだけでも楽しかった。
そのとき、秋田みやげに選んだのが、創業者の名前を冠した「カオルサブレ」。さくさくっと歯切れよく、バターの風味がたっぷり。箱入りを購入すると、敬愛する洋画家・東郷青児の包み紙に包まれているのが嬉しい。自分用と、東郷青児ファンの友人の分、複数の箱を抱えて帰った。


その後、カオルサブレを愛好するお客様からの要望もあって、創業者所有の東郷青児の絵を缶にデザイン。缶は大小2サイズあり、大缶には店頭の好みの菓子を詰めてもらえる。小缶のクッキー缶は、チーズ、ココア、黒胡麻、レモン、ココナッツなど、6種類のクッキー入り。中には紅葉の葉のデザインをあしらったものも。このクッキー缶もまた、東郷青児ファンの友人に贈りたい。
かおる堂大町店
秋田県秋田市大町4-3-11赤れんが館通り
営)9:00~18:00
休)日
取り寄せ 可
http://www.kaorudo.jp
- photography: Yuko Sayama