クリエイターの言葉
家族愛を描き切った、全世界期待のホラー映画続編!
インタビュー
本当に描きたかったのは、家族のドラマと未来。
ジョン・クラシンスキー|映画監督・俳優
社会派映画『プロミスト・ランド』(2012年)や大ヒットTVドラマシリーズ「ジ・オフィス」で知られる実力派俳優ジョン・クラシンスキーのキャリアは飛躍した。脚本・監督を手がけた『クワイエット・プレイス』(18年)が予想を上回る大ヒットを記録し、一躍ハリウッドが注目する監督に仲間入りしたのだ。そして、ついに待望の続編『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』が公開となる。

音に反応して人間に襲いかかる、得体の知れない何かの襲撃を受け、文明社会が廃墟化してから400日余り。最愛の夫リーを亡くした妻エヴリンは、長女リーガンと長男マーカス、生まれたばかりの赤ちゃんとともに、新たな避難所を求めて旅に出る。そして家族は、ほどなく謎の男に出会うが……。『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』は、TOHOシネマズ渋谷ほか全国にて公開中。
「前作が成功したことは、私のキャリアにおいて素晴らしい瞬間だった。でも続編の話が持ち上がった時、前向きには考えられなかったんだ。1作目のような個人的な繋がりを感じられるものをまた作れるとは思わなかったからね。でも、ミリセント・シモンズ演じる長女リーガンがヒロインになるアイデアが浮かんだ時に道が開けた」
音に反応して人間を襲う何かによって荒廃した世界で、夫(ジョン・クラシンスキー)の犠牲により生き延びた妻(エミリー・ブラント)と子どもたち。前作では家族を守る親の無償の愛に焦点が当てられたが、本作では父の意思を受け継いだ長女が物語の鍵を握る。演じたミリセント・シモンズは、役柄と同様に聴覚障害を持つが、その卓越した演技力は高く評価され、トッド・ヘインズ監督の『ワンダーストラック』(17年)でも存在感を見せた。
「親なら誰でも経験することだけど、“いつでも側にいるよ”という約束はもはや守れない。でもそれは子どもが大人になるということで、思春期の必然だ。本作では、一家は別の住む場所を探さなければならず、当然ながら緊張と恐怖は増幅する。ミリセントは前作でとてつもなくパワフルな演技を見せてくれたが、彼女が演じるリーガンは自分の役割を担い、成し遂げるだけの強さがある」
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誰もが共感する、家族の物語
ホラーというジャンル映画だが、誰もが共感できるエモーショナルな家族の物語であることが本シリーズの魅力だ。ジョン・クラシンスキーは妻のエミリー・ブラントと夫婦役を演じているが、実際に彼にとって最も私的な作品になったという。
「私はいつも家族の物語に惹かれるんだ。幸運にも愛に満ちた家族の元で生まれ育ち、いまは同じようにエミリーと素晴らしい家族を作っている。ホラー映画に分類されると思うが、私が描きたかったのは、家族のドラマであり悲劇だ。未来のある子どもたちへのラブレターのようなものでもある。ヒロイズムと希望、勇気、本当になりたいと思っている人物になることとはどういうことなのか。私がもし再び続編を作るとすれば、この2作と同じように心から共感できる物語であることが絶対条件だね」
1979年、アメリカ・マサチューセッツ州生まれ。ブラウン大学で演劇と創作を学び、卒業後、英国ロイヤルシェイクスピアカンパニーなどで演技を学ぶ。俳優として、TV、映画で活躍する一方、監督としても活動する。
*「フィガロジャポン」2021年8月号より抜粋
text: Atsuko Tatsuta