Music Sketch

フジロックで大盛況! 女性5人組ファンクバンドBimBamBoom(前編)

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今、気になっているバンドのひとつがBimBamBoom。"嵐を呼ぶオルタナティヴファンク5人娘"というキャッチフレーズのついた女子5人組バンドだ。ライヴを見るたびに演奏がカッコよく進化し、個々のキャラクターが色濃く表現されていく。それがリスナーの気持ちをワクワクさせ、心身を踊らせるだけでなく、何かインスピレーションを湧き上がらせてくれるような、衝動を突き動かすようなエナジーにも満ち溢れている。

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右上から時計回りに山口美代子(Dr)、前田サラ(Sax)、田中歩(Key)、Maryne(Ba)、岡愛子(G)

このバンドを知ったのは、このコラムで何度も紹介しているtricotのサポートドラマーだった山口美代子が率いるグループということから。最初YouTubeでチェックしていた時は未だピンとくるものがなかったが、今年に入ってから一気にバンドとしてのまとまりが出てきて、ライヴがとても楽しい。

結成は2013年。各自がそれぞれ別のバンドで活動をやっていたため、当初は半年に1回ライヴをするくらいだったという。それがデビューアルバム『TIGER ROLL』が完成した今、フジロックで大盛況になるほど注目を浴びはじめている。メンバーの年齢もバックグラウンドもバラバラだが、そのユニークさが年月を経てようやく混ざり合い、化学反応を起こしだした。5人のメンバーのうち、リーダーの山口美代子(Dr)、Maryne(Ba)、岡愛子(G)に話を聞いた。

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6月9日、六本木VARITでのライヴ。踊りながら楽しむ観客が多く、盛り上がった。

■ ドラムの山口美代子を主役に、メンバーを集める

― 結成のきっかけを教えてください。

山口(以下、Y):「プロデューサーのs-kenさんと私が再会したのがきっかけです。s-kenさんが私のドラム演奏を見た時に、当時盛り上がっていたギャラクティックのドラマー、スタントン・ムーアのイメージが湧いたらしく、"ドラムが主役のバンドがあってもいいんじゃないか"って閃いて、"美代ちゃん、やってみない?"って言われたんです。s-kenさん自身も30代後半の頃に10歳くらい年下のミュージシャンを集めてs-ken & Hot Bombomsというバンドをやっていて。そこから水面下で私よりも10歳下以上のミュージシャンをかき集めてくれて、最初に集まったのが Maryneとキーボードの(田中)歩なんです」

Maryneは当時ハードなロックサウンドのガールズバンドをやっていたそう。お世話になっていたライヴハウスの店長の紹介で、そのバンドの解散ライヴをs-kenさんが見に来て、"セッションしよう"と声が掛かった。次にニューヨークに音楽の勉強に行っていたことのある田中歩が参加。ギタリストはなかなか見つからず、山口自らDETROIT7で活躍していた頃から交流のあった岡愛子(BAND A)に声を掛けた。

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インタビューに答える3人。左からMaryne、岡愛子、山口美代子。

■ ファンク未経験だからこそ生まれる面白さ

― Maryneさんも愛子さんもロック系の音楽をやっていて、ファンクやジャズ系のグルーヴとはちょっと縁がなかったようですが、そこへ向かう興味や努力はどうだったんでしょう?

Maryne(以下、M):「自分はロックの中でもガレージとかニューウェイヴ、パンクといったアンダーグラウンドなものが好きだったんです。ブラック系の音楽には興味あったし、それ以前に音楽に対してはすごく貪欲で、いっぱい知りたい、聴きたいっていうのがあって。ただ、フレーズが弾けてもグルーヴが無いし、いろんな壁にぶち当たって、このバンドに入ってから自分の振り幅が180度ぐらい変わったと思うんですよ。でも自分はロックしか知らなかったけど、今やっていることはそこに繋がってると感じる点がいっぱいあって」

― 例えば?

M:「レッド・ツェッペリンもミーターズが好きだったり、いろんなことが繋がっていくのが面白いんですね」

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京都出身のMaryne。Made in Asiaというバンドでも活動中だ。

― 愛子さんはどうですか?

岡(以下、O):「私は音楽を"ガチャガチャしている"という表面上の面白さで楽しんでいた部分がずっとあって、人と違う音を出して、それで私なりのギターだと思ってたんです。でも、このままじゃいけない感覚がずっと頭の中にあって、好きなミュージシャンのインタビューを読むと、必ず私の好きなミュージシャンは黒人音楽を通ってきていたんです。でも高校生の頃、実家で父がジャズとかレコードかけて聴いてたことがあったんですけど、私は正直つまらないと思っていた(笑)。だから、そういうところを知らないとダメだなと思ってた矢先に、美代子さんに誘っていただいたんですね」

― すぐに興味を持てました?

O:「それでいざ聴いてみると、たとえばロックバンドって言われるものは、レッド・ツェッペリンだったら"ギターソロがすごく長くて目立ってなんぼ"みたいな世界じゃないですか。でもそのブラック・ミュージックと一括りにするのは申し訳ないですけど、こっちのジャンルってドラムもベースもギターもサックスも同じぐらいの位置にいるというか、ギターも影の立役者じゃないですけど、カッティングとか名脇役みたいなところを持ってると思うんですよ。その面白さをすごく感じていますね。でも実際やってみると全然うまくいかなくて(笑)。ずっと邦楽のポップソングでやってきた自分なので」

M:「私もまだできてないんです。でも面白さはわかりました。s-kenさんからいろんな音楽を教えてもらったり、みんなの演奏を聴いたりして。前は勉強で聴いてたものが、いつの間にか好きなものに今シフトチェンジしてますね。本当に好きな音楽になって、CD出してから言うのもあれですけど、これからだって思ってます、自分も(笑)」

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アグレッシヴなギターを演奏する、福岡出身の岡愛子。BAND Aで活動中に、山口美代子と知り合った。

■ 持っている個性を遠慮なく発揮しながら曲に収束

BimBamBoomはドラム中心のバンドとあり、ライヴでの山口美代子のドラムはとにかく見どころ満点。何しろ海外ツアーも多く経験したDETROIT7をはじめ、PUFFY、ハナレグミ、奥田民生、トータス松本からtricot、Muddy Apesまで、多彩なアーティストをサポートしてきた彼女が、一番好きなタイプの音楽を叩きまくっているのだ。そして最初にBimBamBoomのライヴを見た時に、すごく面白いと思ったのは岡愛子のギター。見た目にも演奏的にも異分子の存在感で、ライヴ直後に本人から「ギタリストではジョン・スペンサーが好き」と聞いて、なるほど! と思ったほど。しかしながらファンクやジャズを全く通ったことのない彼女は、自分の個性をどう出すべきかずっと悩んでいたという。その呪縛から解かれたのが今年1月に行われたレコーディングの時だったそうだ。

BimBamBoom 『TIGER ROLL』【1st Album Trailer】

― いつ頃から、このバンドの音楽に馴染めていきました?

O:「アレンジをどうする? ってなった時でも、私はそのアイデアを全然出せなくて、自分の演奏にも、このバンドに対してもずっと自信がなかったんです。やるべきことができてないし、何をやっていいかわからないし、そのジャンルもちゃんとわかってないし、私はどうすればいいんだろうって勝手にひとりでふさぎ込んでたんです。美代子さんとかs-kenさんは"やりたいようにやればいい"ってずっと言ってくれていたんですけど。基礎もできてないから、自分がやりたいようにもできないって言ってたんですよ。私は邦楽の演奏しかできないので。でも『NURSERY RHYMES』の最後の方ですごいノイジーなギターが入るんですけど、そのレコーディングの時に"なんか思いっきりやっちゃえ!"みたいになって、試しに勇気を出してバーン! ってエフェクターをかけたら、いい感じになったんです。その時に気づいたんですよね。"基礎はつけなきゃいけないけど、持ってるものは発揮すればいいじゃん"って。それが、自分のこのバンドにおける在り方がわかった瞬間でした」

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今年アルバム『フロム・マイ・ソウル』でソロ・デビューした前田サラ。ミネアポリスでプリンスと親交のあるミュージシャン達とレコーディングしている。

■ バランスを意識しながらも壊していくスリリングさ

私がライヴを見たのは2月で、ちょうど彼女のギターが開花した直後だったわけだ。私は、たとえば音楽も料理もそこに存在する違和感が互いの素材を面白く美味しく引き立てて、全体で魅せていくと思っていて、なので言葉を選ばずに書くならば、2月のライヴでは違和感を放つほど狂ってる人がひとりいたと感じ、6月に見た時はさらに狂ってる人がひとり増え、狂いかけてる人も出てきて、BimBamBoomがすごく面白くなっていた。岡愛子と張り合うほど、フロントで異彩を放ち始めたのが、一番最後に加入したサックス奏者の前田サラ。今年ソロデビュー・アルバムを出したばかりの、話題のミュージシャンだ。元々s-kenの構想で管楽器をひとり入れたいというのがあり、2年ほど前に前田サラのバンドと対バンをしたのをきっかけに交流が深まり、加入が決まった。

― サラさんも面白くなってきましたよね?

Y:「4月のライヴは、サラちゃんのソロ初ツアーが終わった直後のライヴだったこともあって、毎日極まってる状態でバーン! と出していたエモーションをそのままBimBamBoomに持ってきてくれて。あの4月のライヴは凄かったね。最初にサラちゃんが入ってきた時はちょっと大人っぽ過ぎちゃうというか、綺麗に纏まっちゃいそうだったけど、すごくいい感じになっていったんですよ」

つまり、この5人はバランスを意識しているところがありつつ、そこを壊しながらやっていくスリリングさが面白いんだと思う。

160728_music_07.jpgBimBamBoom デビューアルバム『TIGER ROLL』発売中。

BimBamBoomのHPはコチラ→http://www.bimbamboom.tokyo/

*To be continued

伊藤なつみ

音楽&映画ジャーナリスト/編集者
これまで『フィガロジャポン』やモード誌などで取材、対談、原稿執筆、書籍の編集を担当。CD解説原稿や、選曲・番組構成、イベントや音楽プロデュースなども。また、デヴィッド・ボウイ、マドンナ、ビョーク、レディオヘッドはじめ、国内外のアーティストに多数取材。日本ポピュラー音楽学会会員。
ブログ:MUSIC DIARY 24/7
連載:Music Sketch
Twitter:@natsumiitoh

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