
気鋭のプロデューサー、kwes.(クウェズ) インタビュー①
Music Sketch
以前、紹介したイギリスの女性ラッパー、スピーチ・デベル。一時期はホームレス生活をしていたほど堕落したものの、その後、音楽活動に復帰し、イギリス最大の音楽賞のひとつ、2009年度のマーキュリー・プライズをカサビアン、フレンドリー・ファイアーズ、フローレンス・アンド・ザ・マシーンなどの実力者を抑えて受賞しました。その後は国連女性機関の親善大使を務め、若者犯罪者との関わりを通してイギリスの若者の犯罪率を下げる運動にも取り組むなどしながら曲作りに励み、今年1月には待望のセカンド・アルバム『フリーダム・オブ・スピーチ』を発表。また、2012年ロンドンオリンピックの公式ソング第1弾となった『Spinnin'for 2012』に楽曲を提供するなど、着実にステップアップしてきています。
さて、その『フリーダム・オブ・スピーチ』でのスピーチ・デベルの社会に対する鋭い視点や、そこに使われるリリック、スピード感溢れるフロウなど、磨き抜かれていて実に素晴らしいのですが、アルバムをプロデュースした新進気鋭のkwes.(クウェズ)による音遣いや演奏も何とも魅力的なので、今回はkwes.へのインタビューを通して、彼のステキぶりを紹介していきたいと思います。
私はkwes.の名前を最初に聞いたのは大好きなバンドTHE XXにインタビューした時で、早い段階で彼らの「Insects」をプロデュースしていた話を聞き、その時から気になっていたのでした。
------スピーチ・デベルとは、どのようにして知り合ったのですか? 彼女の魅力はどこにあると感じましたか?
「彼女とのコラボレーションが実現したのは、Big Dada/Ninja Tuneレーベルのウィル・アションが、彼女の2ndアルバムの制作に参加しないかと声をかけてくれたからなんだ。スピーチの持つ、強烈なほどの熱心さ、ポジティヴな姿勢、そして感情表現の仕方が好きなんだ。そして彼女のストーリーを語るときの繊細さも強さも本当に素晴らしい」
------スピーチとのコラボはどの曲も本当に魅力的です。「ザ・プロブレム」のような感情を加速させるようなアグレッシヴなトラックは、先にほとんど完成させているのですか? それとも彼女のラップに合わせて、後から音を足していくのでしょうか?
「ありがとう。何曲かは、僕がすべてゼロから作ったものだよ。そして彼女がそこに歌詞を乗せている。一回聴いただけですぐ歌詞をつけるなんてこともあった。それ以外には、僕が参加する前から彼女がバンドとのセッションの中である程度書き上げていた曲もあって、その場合は僕がもう一度弾き直して、レコーディングして完成させている。歌詞は、すべてできあがっている場合が多かったね。『ザ・プロブレム』は最後の方に完成したものなんだけど、これはもともとセッションから生まれた曲があって、僕が演奏とレコーディングをやり直し、さらにパーツを加えていって完成させたんだ」
------生演奏にしろ、サンプリングにしろ、音の選び方が素晴らしいです。あなたの音楽センスは、どのようにして磨かれてきたのですか?
「ありがとう。スピーチの作品のスタイルについて言ってくれているのであれば、僕が関わったのは、スピーチのサウンドに"ドラマと壮大さ"を加える部分だと感じているんだ。ライヴ感はそのままに、エレクトロニック・ミュージックの要素を加えること。『スタジオ・バックパック・ラップ』がそれを象徴してる。当時バロック・ポップ的な音楽をよく聴いていて、それが創作プロセスに影響を与えているのは間違いないと思う」
------楽器はドラムスやキーボードなど、マルチに演奏できるのですか?
「あぁ、僕はマルチ・インストゥルメントだよ。キーボードを最初に覚えて、ベース、ギター、ドラムと学んでいった。今はその3つがメインに演奏する楽器だけど、大抵の場合、使えそうな物を見つけて、いろんなサウンドやメロディを試すんだ。そういう意味ではレコーディング・スタジオ自体がメインの楽器ってことになるかもね(笑)」
「スタジオ自体がメインの楽器」とは、見事な表現ですね。次では、kwes.のソロ作品について紹介していきます。
*To be continued
さて、その『フリーダム・オブ・スピーチ』でのスピーチ・デベルの社会に対する鋭い視点や、そこに使われるリリック、スピード感溢れるフロウなど、磨き抜かれていて実に素晴らしいのですが、アルバムをプロデュースした新進気鋭のkwes.(クウェズ)による音遣いや演奏も何とも魅力的なので、今回はkwes.へのインタビューを通して、彼のステキぶりを紹介していきたいと思います。
私はkwes.の名前を最初に聞いたのは大好きなバンドTHE XXにインタビューした時で、早い段階で彼らの「Insects」をプロデュースしていた話を聞き、その時から気になっていたのでした。
4歳で祖父母のオルガンを弾き始め、音楽にすぐに夢中になったというクウェズ.南ロンドン生まれの24歳。
------スピーチ・デベルとは、どのようにして知り合ったのですか? 彼女の魅力はどこにあると感じましたか?
「彼女とのコラボレーションが実現したのは、Big Dada/Ninja Tuneレーベルのウィル・アションが、彼女の2ndアルバムの制作に参加しないかと声をかけてくれたからなんだ。スピーチの持つ、強烈なほどの熱心さ、ポジティヴな姿勢、そして感情表現の仕方が好きなんだ。そして彼女のストーリーを語るときの繊細さも強さも本当に素晴らしい」
------スピーチとのコラボはどの曲も本当に魅力的です。「ザ・プロブレム」のような感情を加速させるようなアグレッシヴなトラックは、先にほとんど完成させているのですか? それとも彼女のラップに合わせて、後から音を足していくのでしょうか?
「ありがとう。何曲かは、僕がすべてゼロから作ったものだよ。そして彼女がそこに歌詞を乗せている。一回聴いただけですぐ歌詞をつけるなんてこともあった。それ以外には、僕が参加する前から彼女がバンドとのセッションの中である程度書き上げていた曲もあって、その場合は僕がもう一度弾き直して、レコーディングして完成させている。歌詞は、すべてできあがっている場合が多かったね。『ザ・プロブレム』は最後の方に完成したものなんだけど、これはもともとセッションから生まれた曲があって、僕が演奏とレコーディングをやり直し、さらにパーツを加えていって完成させたんだ」
今を生きるための切実さが等身大で歌われている「ザ・プロブレム」(音のみ)。スピーチの激情に、クウェズ.が演奏するパーカッションやギターのビートが混在していく。
------生演奏にしろ、サンプリングにしろ、音の選び方が素晴らしいです。あなたの音楽センスは、どのようにして磨かれてきたのですか?
「ありがとう。スピーチの作品のスタイルについて言ってくれているのであれば、僕が関わったのは、スピーチのサウンドに"ドラマと壮大さ"を加える部分だと感じているんだ。ライヴ感はそのままに、エレクトロニック・ミュージックの要素を加えること。『スタジオ・バックパック・ラップ』がそれを象徴してる。当時バロック・ポップ的な音楽をよく聴いていて、それが創作プロセスに影響を与えているのは間違いないと思う」
『フリーダム・オブ・スピーチ』のオープニングを飾る「スタジオ・バック・パック」。バックトラックは、もちろんクウェズ.によるもの。途中でベースを弾いているのが彼。
------楽器はドラムスやキーボードなど、マルチに演奏できるのですか?
「あぁ、僕はマルチ・インストゥルメントだよ。キーボードを最初に覚えて、ベース、ギター、ドラムと学んでいった。今はその3つがメインに演奏する楽器だけど、大抵の場合、使えそうな物を見つけて、いろんなサウンドやメロディを試すんだ。そういう意味ではレコーディング・スタジオ自体がメインの楽器ってことになるかもね(笑)」
「スタジオ自体がメインの楽器」とは、見事な表現ですね。次では、kwes.のソロ作品について紹介していきます。
クウェズ.が24歳の時にプロデュースしたスピーチ・デベルの2枚目のアルバム『フリーダム・オブ・スピーチ』。傑作です。
*To be continued