
UK女性シンガーの魅力を集めたROX
Music Sketch
イギリスの名門レーベル、ラフ・トレードからデビューしたROX。
エイミー・ワインハウスやダフィーのようなレトロな音楽の魅力を含み、アデルのような哀愁感を携え、エイミーのような芯の太い歌唱力も持ち、それでいてシャーデーのような浮遊感や伸びやかさも感じさせます。また、ジャマイカ人とイラン人のハーフとあって、古くからUK音楽に根付くレゲエやダブ・ミュージックでゆったりとくつろがせてくれます。今の時代に懐かしきラヴァーズロックを取り上げているのですが、軽やかなテンポに仕上げコーラスにも凝り、ベタベタにしないセンスの良さ。かなりの思い入れを持って、こだわって作っているのがわかります。
そんな彼女が、最も影響を受けたと明かしてくれたアーティストは女性ロックシンガーの革命児だったアラニス・モリセットと、R&B界で一世を風靡したローリン・ヒル。この2人の名前を聞いただけで、いかにROXの振り幅が大きいかわかってもらえるかと思います。
日本でもこの夏に大ヒットした「マイ・ベイビー・レフト・ミー」
「才能は持っていただけではダメなの。私はこの生まれ持った声という才能はわかっていたけれど、才能を磨き上げるのは努力の次第で、私はトレーニングを繰り返すことでようやく自分の力を発見することができたと思う。でも、どんなに練習しても人前で歌う時はアガるわ。ただそのアガる気持ちがアドレナリンとなって、いい緊張感になるから、それも大事だと思っているの」
今年6月に取材した時のROX。日本のお茶の文化に関心があるようでした。
10歳から名門のミュージカル劇団に所属。数々の公演を行いつつ、関心はポーティスヘッドやジョニ・ミッチェルへと移行し、2007年春には自らアコースティック・ジャズ・グループを結成。そこからソロ活動へと転じていきます。今年発表したデビュー・アルバム『メモワール』は友人であり、Jay-Zの片腕であるアル・シャックスをプロデューサーに迎えて制作されました。
アコースティック・ヴァージョンの「ノー・ゴーイング・バック」
初めてのアルバム制作には時間が掛かり、曲作りに1、2カ月かける予定が1年になり、レコーディングにも7カ月かかったそう。当然ながらプライヴェートにも変化があり、アルバムの中では3人の男性との別離も含む恋愛模様が歌われています。
「恋愛の歌を書きたかったわけではないけど、結果、そういう歌ばかりになったわ(笑)。でも、それでまとまったから、良かったのかもしれない。こういう曲を書きたいという計算がなく、自分の中のいろんな感情や言いたいことを原動力として作っていったけれど、失恋のことを歌いたくなくても、やっぱりそっちへ行ってしまう(笑)。あと、なかなか伝えたいことが表現できなかったり、歌を録音する時に風邪を引いたり、いらついたり落ち込んだりしたけど、悪いながらいい部分に専念できた、頑張ってできた作品だと思うわ」
こう文字だけ追っていると、シリアスな女性のように見えるかもしれませんが、実際の22歳のROXは、明るく笑い声をあげる可愛らしい女性。実際、曲調も明るいトーンを響かせていて、それが恋愛に対する重い想いを、軽やかに飛ばしてくれるかのようです。
クールビューティな女性かと思いきや、楽観的だそうで、笑顔が絶えませんでした。
評判の良かった「アイ・ドント・ビリーヴ」のヴィデオ
音楽に詳しくなくても、一緒に口ずさみながら、体を揺らしながら楽しめるROXのライヴ。ぜひアルバムをチェックして、興味が湧いたら会場に足を運んでみて下さい。
発売中のデビュー・アルバム『メモワール』
*To Be Continued