シャネルのキーワード08 時代を超えるハンドバッグ。
シャネルを紐解く24のキーワード
さまざまな方法で、女性たちの身体を自由に解き放すことに注力してきたガブリエル・シャネル。その彼女の偉大な功績は、女性たちに愛されてきたシャネルのバッグともリンクしてくる。
左上から時計回りに、2018/19年秋冬コレクションよりシェブロンの「2.55」、新たに登場した新作バッグ「CHANEL 31」、2018年春夏コレクションよりグリーン&イエローのスパンコールをあしらった「11.12」とイエローのレザーの「11.12」、2018/19年秋冬コレクションよりブラウンのツイード素材の「11.12」。 ©CHANEL
男性用の持ち物を着想源にすることも多かった彼女のアンテナに引っかかったのが軍人や猟師たちが愛用していた斜めがけの実用的なバッグ。1929年、それが出発点になって誕生したシャネルのハンドバッグが、メゾンのアイコン「2.55」のルーツになっている。長いチェーンのショルダーストラップがついたバッグは、当時の女性たちの手を解放し、エレガントで動きやすいという新しい価値観を提供したのだ。
いつの時代も多くのセレブリティから絶大な支持を得ているシャネルのバッグ。シャネルのアンバサダーを務めるアナ・ムグラリスとキャロリーヌ・ドゥ・メグレ。 ©CHANEL
菊地凛子とイザベル・ユペールもシャネルを愛用。 ©CHANEL
ルーマニアで生まれ、のちにプリンセス・ビベスコとしてヨーロッパの社交界で脚光を浴びた才女の公妃、さらには作家としても活躍したマルト・ビベスコは、28年に出版した自身の著書『Noblesse de Robe』の中でガブリエル・シャネルについて、こう触れている。
彼女はいつもきちんとした控えめな装いをしており、彼女の「朝の装い」は、豊かさと高価であることの違いが分からない人には、みすぼらしく見えたのかもしれない。(中略)彼女はハンドバッグ、それも大きなハンドバッグを脇に抱えていた。その柔らかなレザーやゴールドのクラスプは取り扱いが難しく、かつ独自路線を行くそのすべてが、まるでペローの童話『ろばの皮』を携えて飛行機に乗るように、隠されたラグジュアリー、目には見えないジュエリーと言った雰囲気を醸し出している。
時代によって変貌する女性たちのライフスタイルをいち早くキャッチし、リアリティとモード性が交錯するバッグを作り続けてきたシャネル。その実用性を重んじ、エレガンスを纏った多くのバッグたちは、時を超えて、世界中の女性たちに愛されている。
Mot-clé 08 / シャネルのキーワード 08
2.55
55年2月に発表されたことが由来で、「2.55」と名付けられたシャネルのアイコンバッグ。バッグにボリュームを持たせるためにシャネルが採用したのが、競馬場で見かけた競走馬の調教師が身に着けていた、ブルゾンに施されていたキルティング加工だった。このバッグの特徴は、手を解放してくれたチェーンのストラップに加え、折り返し部分が二重になったフラップ。外側のフラップに配した隠しポケットは、ラブレターやお札を忍ばすために作ったのだとか。現在でもレザーの選定からスタートし、180以上の工程を経て、職人たちの手によって作られている「2.55」は、不朽の名作だ。
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シーズン毎に進化する、「2.55」と「11.12」。
シャネルを代表する定番バッグ「2.55」と「11.12」。それらをデザインするうえで、カール・ラガーフェルドが重んじているのが、ガブリエル・シャネルが決めた原則だ。
2018/19年秋冬コレクションより。 ©CHANEL
たとえば「2.55」の場合は、昔からポケットの数は7つ。そしてガーネットレッドのレザーの裏地は実用的で、背景の色に対してアイテムが識別しやすいように考えられている。また「マドモアゼル クラスプ」と呼ばれる回転して開閉させる長方形のクラスプが象徴的で、のちにダブルCの形をしたクラスプも加わり、よりアイコニックなディテールへと進化して、もうひとつの定番バッグ「11.12」のクリエイションに繋がった。毎シーズン、カール・ラガーフェルドの手によって、さまざまな表情を見せる「2.55」と「11.12」。実用性とモード感が完璧なバランスを保っているからこそ、どんな時代を生きる女性たちにとっても永遠の憧れであり続けるのだ。
2017/18年 パリ-ハンブルク メティエダールコレクションより。 ©CHANEL
2018年春夏コレクションより。 ©CHANEL
2018年春夏プレコレクションより。 ©CHANEL
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新作バッグ、「CHANEL 31」が登場。
2018/19年秋冬コレクションのランウェイを飾った新作バッグ「CHANEL 31」は、ショルダーバッグ、ハンドバッグ、そして半分に折るとクラッチにもなる3ウェイのデザインが特徴。
photos : KARL LAGERFELD ©CHANEL
「CHANEL 31」にはプリントやバイカラー、素材はラムスキンやカーフスキン、ツイードやファブリックと豊富な素材が取り入れられている。ホットピンクやロイヤルブルーなど、ビビットなカラーのバッグが秋冬の装いを引き立ててくれる。
texte : TOMOKO KAWAKAMI, graphisme du titre : SANKAKUSHA