食べて浸かって!? エピキュリアンのためのシュシュ・ホテル。
PARIS DECO
9区、オペラ座近くにまた新たにホテルが誕生した。そう長くもないエルデ通りにできた3つめのホテルで、その名は「Chouchou(シュシュ)」……ちょっと可愛い響きでは? 髪をまとめるシュシュでもあり、“お気に入り”という意味もある。ここは現代っ子にとってパリ最強のホテルかも?と思わせる新しい試みがたっぷりと盛り込まれた4ツ星ホテルだ。パリの中心部にあって、朝から晩まで11区的な気軽さが魅力のニュースポットである。
エルデ通りにホテルは3軒。シュシュはストライプが目印だ。photo : Nicolas Anetson
地上階のバーで朝食。もちろん宿泊していなくたってOK。photo : Nicolas Anetson
その1. パリっ子のためのエントランスから入ると……
“市場とガンゲット”と掲げたエントランス。photo : Nicolas Anetson
宿泊客のためのホテルであり、またパリっ子たちのホテルということで、入口も2つ。まずは"Passage du Helder"と上に書かれた左側から。こちらはパリっ子をはじめ、宿泊目的ではないすべての人々のためのエントランスだ。マルシェと呼ばれる最初のスペースは、左右にブルターニュ発の屋台風フードマーケットがある。左が海の幸のLa Mer à Boire(ラ・メール・ア・ボワール)、右が山の幸のLa Grande Bouffe(ラ・グランド・ブッフ)。テイクアウトもできるし、2つの屋台に挟まれた中央に並ぶテーブルで食事することもできる。
フードコートは入って右手がソーセージ、サラミなどを扱うラ・グランド・ブッフ(写真右)、左手が産地直送の海の幸を扱うラ・メール・ア・ボワール(写真左)。営業は12時〜14時30分、18時〜22時30分。週末は12時〜23時まで。両店ともイートイン、テイクアウトが可能。ワイン、ビネガーなどもエピスリー的に販売している。photos : Nicolas Anetson
屋台で料理をオーダーして支払ったら席について待つ。フードコートでよくあるコールシステムが採用され、ベルが鳴ったら自分で取りに行く。写真左のラ・メール・ア・ボワールのランチセットは13ユーロ〜。手前のエビのグリルにはオリヴィエ・ローランジェのカレー風味のスパイスが使われている(15ユーロ)。しっかり食べたい時は、これにフライドポテト(6ユーロ)を添えて。写真右の牡蠣には有料だがイクラやイチジクといったトッピングをプラスできるのがおもしろい。キブロンの牡蠣6個と白ワインのセット(15ユーロ)というのも、悪くない。photos:Mariko Omura
ラ・グランド・ブッフ。左:ランチタイムはソーセージを丸ごと一本包んだそば粉のクレープ「ガレット・ソーシス」(8ユーロ〜)を。photo : Mariko Omura 右:チーズやハム類の盛り合わせなどをアペリティフのおともに。photo : Nicolas Anetson
その奥のガラス屋根の下に広がる開放的なスペースでも、マルシェで注文した品で食事を取れる。ここはお祭り気分にあふれるバー・ガンゲット。左手に長いバーカウンター、奥には木~日曜にライブが開催されるミニステージが。ポップカルチャーのための舞台であり、またいずれはバーの客の誰もが弾けるピアノやギターも配される予定だという。
ガラス屋根の下、ハッピーな時間を過ごせるバー。photo : Nicolas Anetson
アペリティフタイムを過ごすのに最適なバー(左 photo : Nicolas Anetson)。 ジンなどアルコール類もフランス産にこだわっている。コーラもここではメイド・イン・バスク!!
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その2. 宿泊者のためのエントランスから入ると……
向かって右側の小さな入口。photo : Nicolas Anetson
レセプションに向かう鏡の廊下。photo : Nicolas Anetson
左の入口に比べてぐっと小さな扉。こちらホテル宿泊者のための入口は鏡張りの段差なしの廊下をたどってレセプションまで行きつけるので、チェックイン時にはありがたい。さて、このホテルではタブレットによるチェックインなので、バーでもどこでも行えることからレセプションといっても小さなカウンターがあるだけ。その脇には、雑貨屋風のパリ土産のブティックが。ここはバーからもアクセスがあり、誰でも購入が可能。ホテルのバスルームに置かれているPrescription Labのプロダクト、ジャンヌ・ダマスの本、シュシュのスタッフジャケット……そしてパリジェンヌに人気の赤いbisouがちりばめられたビニール傘など、小さなフレンチブランドの品々をセレクションして販売している。
レセプションとお土産ブティック。バーからもアクセスできる。photo : Nicolas Anetson
ストライプがホテルの随所で目にとまるシュシュのインテリア。屋外で音楽に合わせて陽気に飲んで踊るガンゲットのイメージとフレンチの職人仕事にポイントを置いて、ミカエル・マラペールがパブリックスペース、そして60の客室と3つのスイートをデザインした。最上階にありペントハウス風の3つのスイートの内装は、フランス人がお気に入りの3名のポップアイコンにインスパイアされ、 ジュニアスイート602号室L’Anamourはセルジュ・ゲンズブール、ジュニアスイート603号室La Vie en Roseはエディット・ピアフ、そしてスイート601号室L’Arrache-coeurはボリス・ヴィアンだ。部屋には各人の作品名がつけられている。
ストライプのベッドリネンはフランス製。部屋によってはガンゲット(野外酒場)でおなじみの豆電球をイメージした天蓋がベットの上に。photo : Nicolas Anetson
カラーハーモニーがキュートなバスルーム。部屋はクラシック、ドゥリュクス、スーペリアの3タイプがあり、1室170ユーロ〜。photo : Nicolas Anetson
黒でまとめられたのはセルジュ・ゲンズブールにインスパイアされたスイートL’Anamour。スイートは1泊400ユーロ〜。photos : Nicolas Anetson
さてこちら宿泊者用の入口なのだが、上には"Hotel & Bains(ホテル&お風呂)"と掲げられている。というのは、もうじき地下フロアに時間借り(125ユーロ/時間)ができる3つのバスルームがオープンするからだ。各バスルームにジェットバスが備えられ、70年代風のインテリア。レンタルに際しては軽食やドリンクも可能となるらしい。レンタルは宿泊者だけでなく、外部客でもOKということなのでとにかく完成を待とう。
あちこちビジュアル的に楽しいホテル。タイプの異なる鏡を壁に飾っているのは地下のトイレ。びっくり大口をあけているように見えるのは、エレベーターホールの0階のサインと2つのランプの遊びだ。
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madameFIGARO.jpコントリビューティング・エディター
東京の出版社で女性誌の編集に携わった後、1990年に渡仏。フリーエディターとして活動した後、「フィガロジャポン」パリ支局長を務める。主な著書は『とっておきパリ左岸ガイド』(玉村豊男氏と共著/中央公論社刊)、『パリ・オペラ座バレエ物語』(CCCメディアハウス刊)。
Instagram : @mariko_paris_madamefigarojapon