「王室に寄生している」失うもののないアンドルー元王子、警察提訴でチャールズ3世を困らせた理由。
逮捕後、警察を相手取って訴訟を起こしたイギリスのアンドルー元王子。それによって元王子とジェフリー・エプスタインの関係に再び注目が集まることを英国王室は恐れている。英国王室の専門家、リチャード・フィッツウィリアムズが解説する。

アンドルー元王子がサンドリンガム領地内の新居マーシュ・ファームで逮捕され、今後は誰の目にも止まらないようにひっそりと暮らしていくだろうと思われていた。逮捕のニュースが流れた時にはイギリスに激震が走ったものだ。そもそも性犯罪者のジェフリー・エプスタインとの関係が明るみに出てから、チャールズ3世の弟は王族としての地位を剥奪され、その評判は地に落ちていた。だが逮捕から半年以上沈黙していた元王子は反撃することにしたらしい。マスコミに叩かれ、一族から拒絶され、兄チャールズ3世から称号をすべて剥奪されたアンドルー元王子は、残されたわずかな名誉を守ろうとしている。
10月5日、王弟はテムズバレー警察を相手取り、エプスタイン事件の捜査の一環として2月に自宅で実施された家宅捜索の合法性を争う訴訟を起こした。これには英国中が驚いた。「これには本当にびっくりしました。英国王室の一員が自国の司法を相手取って訴えを起こすのは、1649年のチャールズ1世の裁判以来のことです」と、ロンドンの英国王室専門家、リチャード・フィッツウィリアムズは言う。
国王の権威に対する侮辱
訴訟を起こしたアンドルー元王子は歴史的に重大な前例を作るだけでなく、「ザ・ファーム」と呼ばれる英国王室と司法たる裁判所の間に存在する、重要な暗黙の了解を破っている。それは王室も法に従うという原則だ。ウィンザー家は絶大な特権を享受しているが、司法に干渉してはならない。
2026年2月19日にアンドルー元王子が逮捕された際、チャールズ3世はこの点をことさら強調し、英国当局に対する王の「支持」と「全面的な協力」を改めて表明した。「今、重要なのは、この件について完全かつ公正な捜査が行われることです。司法手続きは、しかるべき形で進められなければなりません」とこの時、国王は語っている。このメッセージが意味することは極めて明快だ。たとえ弟であろうと、チャールズ3世は切り捨てることを決めた以上、庇護しないということだ。国王の方針はぶれていない。弟の恥ずべき振る舞いによって王室の名誉が傷つけられることを拒み、家族よりも王室を優先する姿勢を貫いている。
手当の流用禁止
それなのにアンドルー元王子が司法の場で反撃に出たこと、そして新たなニュースネタになりそうな状況にチャールズ3世は当然、困惑している。
なぜなら英国王室にとって最大級のスキャンダル、すなわちヨーク公爵の称号を剥奪されたアンドルー元王子とエプスタインとの不都合な関係が、再び世間の注目を集めることになるからだ。しかもこの訴訟は国王の権威に対する侮辱でもある。国王たるチャールズ3世は憲法上、警察と司法の長とみなされる。そのため、国王はすぐに動いた。「デイリー・メール」紙によるとチャールズ3世は側近に対し、アンドルー元王子に対して王の私有財産から毎月支給している手当は、警備費などに充てられるものであって、警察と争うための弁護士費用に使わせるつもりはないと伝えたという。
「王室は元王子の行動から公然と距離を置いています。つまり、国王がこの訴訟を認めていないことは明白です」と、リチャード・フィッツウィリアムズは解説した。同氏によれば、アンドルー元王子の訴訟はチャールズ3世にとって確かに厄介な問題ではあるが、制度を揺るがすような類のものではない。「アンドルー元王子は権利を剥奪されており、未来はありません。もらえて当然と王室に寄生している存在だとみなされているのです」
失うものはもう何もない
ユージェニー王女とベアトリス王女の父親であるアンドルー元王子は国王に見放され、王族の称号も剥奪されてサンドリンガムの質素な住まいで孤立している。失うものはもう何もない。だからこそ訴えるという賭けに出たのだ。その狙いは、かつての住居、ウィンザーのロイヤル・ロッジで警察が押収した証拠を無効にし、エプスタイン事件に関連して「公務の遂行における重大な不正行為があった」という容疑を完全に葬り去ることだ。警察は、元王子が機密文書を性犯罪者に渡した疑いをかけている。アンドルー元王子の申し立てを審理するため、10月8日、ロンドンのイングランド・ウェールズ高等法院で審理が行われる予定だ。テムズバレー警察は譲歩を拒んでおり、この事件の捜査を継続できるよう、司法文書がマスコミに公開されないよう裁判所に求めている。
この騒動のせいで、チャールズ3世が10月27日から11月4日に予定しているカリブ海地域の公式訪問準備は相当妨げられている。しかも、国王はすでに頭の痛い問題を抱えている。それはハリー王子とメーガン夫人が急に帰国したことや、かつての義弟チャールズ・スペンサーが、姉の故ダイアナ妃の結婚生活について最近、衝撃的な内容を明かしたことだ。
From madameFIGARO.fr
※この記事は、フランスの新聞社「Le Figaro」グループが発行する「madame.lefigaro.fr」で掲載されたものの翻訳版です。データや研究結果はすべてオリジナル記事によるものです。
- text: Solene Delinger (madame.lefigaro.fr)
- edit: フィガロジャポン編集部