attitude クリエイターの言葉

「母」という存在の葛藤を描いた監督にインタビュー。

インタビュー

母の苦い記憶を原動力に変えて、現代女性にエールを送る。

マリー=カスティーユ・マンシオン=シャール|映画監督

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職務と育児の板挟みに苦しむ女性フランス大統領や、思春期の娘と険悪なムードが漂うシングルマザーなど、働く女性たちの母性と母子の関係を物語った映画『パリの家族たち』。監督は、カンヌ国際映画祭にも正式出品された『奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ』(2014年)で注目を浴びたフランスの女性監督、マリー=カスティーユ・マンシオン=シャールだ。

「これまで5本の映画を撮ってきたけれど、いつも最後には母性、母や子どもとの関わりにテーマが戻ってしまうの。だって、私たちは死ぬまで誰かの子どもだから。たとえ親になっても、誰かの子どもであることは変わりなく、母親からの破壊的とも言えるパワーは生涯付きまとうものだと思います」

多くの登場人物それぞれに、監督自身のエピソードがちりばめられている。クロチルド・クロ演じる、2児を家政婦に任せて仕事に飛び回るジャーナリストは、思春期の娘から「ママの女の部分は見たくない!」と痛烈な言葉を浴びせられる。

「私自身もシングルマザーで、娘はもう25歳だから嵐は遠のいたけれど(笑)。息子はまだ16歳。だからこうやって仕事で旅していると、罪悪感が頭をもたげてくる。でも最後の親子3人の水溜まりのシーンも、私たちが経験したエピソードなの。こんな小さな瞬間の記憶から、複雑な関係のロングヒストリーまで、この母性や母娘というテーマについて、多くの女性に聞き取りをしたけれど、まさにくめども尽きぬ泉でした」

映画界で働く女性たちを、サポートする場を発案。

彼女はCercle Feminin du Cinema Français(フランス映画女性の会)の設立者でもある。

「映画業界で働くプロデューサー、エージェント、映画のファイナンスや契約の担当者など、組織に入らず、ひとりで仕事をしている女性は、同じ悩みや孤独を感じている人が多い。少しでもコミュニケーションがとれる場を作りたくて、このコミュニティを始めたの」

最後に、『パリの家族たち』の仏題である『La Fête des Mères(母の日)』について、「監督の思い出に残る母の日は?」と尋ねると、すかさず「日本ではどんな風に母の日を祝うの?」と切り返された。映画の終盤の〝母の日に母を捨てる〟という切ないエピソードは、監督自身の物語だったことを確信した。複雑な母の記憶と格闘しながら、働く女性にエールを送る。パワフルな表現者の姿がそこにあった。

Marie-Castille Mention-Schaar
マリー=カスティーユ・マンシオン=シャール


コロンビア・ピクチャーズの開発担当、映画専門紙「ハリウッド・リポーター」の国際版編集長を歴任。映画会社を設立し、『奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ』など自身の監督作以外にも、ほかの監督の作品のプロデュースも手がける。

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認知症を患う母の介護に悩む三姉妹は、それぞれが母や自分の子どもとの複雑な問題を抱えている。職務と母親業の狭間で揺れる大統領、病気を機に息子の親離れを望む女優、妊娠を恋人に告げることができない花屋の店員……さまざまな女性像を通して、日常に潜む“母”という存在の葛藤を描く。『パリの家族たち』は、5月25日よりシネスイッチ銀座ほかにて公開。

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interview et texte : REIKO KUBO

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